「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉」“悪夢から醒めたような空虚感がもたらす渇望”

2026☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

見滝原の女の子たちのあいだで、最近、とあるうわさ話が囁かれていた。“トカゲさん電話”が、願いを叶えてくれる――この世の呪いと戦うことを引き換えに。その頃、“ソウルジェムを持たない少女”が魔獣狩りを行うという、異常事態が連続して起きていた。ほむらは、そんな風景を悠然と眺め、この世界に君臨する悪魔として、
すべてをほしいままにしていた。――はずだった。そんな歪んだ日常を終わらせる存在が、突如として現れる。すべての魔女の始まりの場所――名塚底根(なづかそこつね)、かつてほむらを苦しめた複数の魔女の集合体――ワルプルギスの夜、そして、円環の理を求める魔法少女がふたり。少女たちは言う。「暁美ほむらを許さない」と。
円環の理を失った世界で、魔法少女たちの運命が、再び廻り始める。 公式サイトより

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』本予告
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉2026年8月28日公開━━━━━━━━━◆スタッフ原作:Magica Quartet総監督:新房昭之脚本:虚淵玄(ニトロプラス)キャラクター原案:蒼樹うめ監督:宮本幸裕キャラクターデザイ…more

 

Review

個人的に忙殺気味だった晩夏。それでもこれは観ておかなければと、過去のテレビシリーズ、そして前作「叛逆の物語」を復習した上で、劇場公開早々に本作の鑑賞に至った。
ただ、なかなかこの“重い”レビューに向き合うには至らず、気がつけば一ヶ月が経過していた。季節は初秋を迎えている。

12年ぶりに再鑑賞した「叛逆の物語」のレビューでもそう表現したけれど、この最新作においても、「悪夢」は継続していた。
物凄く衝撃的で、エキセントリックな光景を目の当たりにした“体感”は、明確に脳裏に刻みつけられているのだけれど、その全容と物語の詳細が、時の経過とともに着実に消失していくような感覚を、この一ヶ月の間も感じ続けた。
このレビュー作成に当たって、改めて本作のストーリーテリングを思い起こしてみるが、蘇った記憶がその瞬間からまた薄いベールに包みこまれていくようだ。

2013年に公開された前作から13年。満を持して創造されたこの最新作は、輪廻のような堂々巡りの果てに、少女たちの絶望と希望を等しく深め、映画世界のキャラクターたちも、それを観ている私たちもひっくるめて、途方もない境地へ連れて行く。
創作物としてのアイデアとイマジネーションは、私自身の理解の臨界点をとうに超え、良くも悪くも困惑と諦観を生み出していることを否定できない。

正直なところ、ほぼ呆然としっぱなしで本作を観終えて、文字通り悪夢から醒めたように劇場から出た直後は、この映画が面白かったのかどうかさえ定かではなかった。それはまさに逆説的な“夢心地”のような心境だった。

ただ一つの存在を守り、自分の“思い”の中で庇護し続けるために、魔法少女として闘い続け、そして自らの意思で悪魔にまでなった暁美ほむら。
彼女が生み出したその世界そのものが、時間の流れも、人間の認識も、さらには宇宙の真理すらも超越した“悪夢世界”だったと言えるのだろう。

「理想」と信じていた、決して終わることのない安寧。それは実のところ、絶望もなければ希望もない「虚無」であったということ。
その果てしなき虚しさを、暁美ほむらは、人格が抜き取られ、“円環の理”というただのシステムと化した“あのこ”の姿に見たのではないだろうか。

さらなる混沌と戦いを経て、暁美ほむらはようやく自らの悪夢から醒める。
でも、その脳裏からは、常に彼女の思念の中心にあり続けた“あのこ”の記憶そのものが消失してしまっているように見えた。

人は、誰かに覚えてもらうこと、そして誰かの記憶に残り続けることで、「存在」し得るものなのかもしれない、と思う。
もはや「残酷」という言葉では物足りない彼女たちの苦悩と苦闘は、生命や時間すらも超越した世界の中で、非道な堂々巡りを辿っていた。
その非道を断ち切るために、“あのこ”の慈愛が、存在の記憶そのものを断ち切ったように思えた。

いまなお、私の思考ではこの物語の全容を正しく理解し、説明することはできない。
ただただ言葉にならない切なさと深い物悲しさが、心にぽっかりとした空間を生み出しているような感覚のみが残っている。
この空虚感は、悪夢から目覚めた暁美ほむらの心象風景と共鳴しているのかもしれない。

エンドクレジットは、劇中本編とは一転してシンプルなアニメーションで、“彼女たち”の足跡が描き出される。
彼女たちの足跡は、形態を変え、歩調を変え、ときに並び、ときに交錯し、そして離れ離れになっていく。
彼女たちが再び交差し、並び歩くことはあるのだろうか。

またどれだけの“時間”を要するか分からないけれど、叶うことならば、彼女たちが辿り着いた本当の境地を見てみたい。
“魔法少女”のインサイドを深く深く抉りつづけてきたような本シリーズだけれど、最後の最後には、迷いなき正義と慈愛に満ちあふれた魔法少女たちの勝利を見たい。
悪夢から醒めた空虚感の先に、そんな純粋な渇望を覚えた。

 

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Information

タイトル 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉
製作年 2026年
製作国 日本
総監督 新房昭之
監督 宮本幸裕
脚本
作画監督 谷口淳一郎
声の出演 悠木碧
斎藤千和
喜多村英梨
野中藍
水橋かおり
阿澄佳奈
若山詩音
黒沢ともよ
加藤英美里
鑑賞環境 映画館
評価 8点

 

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