評価:
5点Story
新宿副都心にある高校。クラスでいちばんの優等生・三田村由香は自分に予知能力や物を動かしたりする能力があることに気づく。友人の剣道部主将・耕児が剣道大会で勝ったのも彼女の超能力のおかげだった。ある日、北海道から美少女・高見沢みちるが転校してきて、その魔性の魅力で次第に生徒たちを思うままに操ってゆく。彼女はいったい何者なのか?学園だけでなく、この世界をも支配しようとする悪魔なのか・・・? Amazonより
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Review
2020年4月10日、大林宣彦監督が亡くなった。
遺作となるのであろう最新作の公開予定日(感染症拡大の影響で延期)に合わせるようにこの世を去った巨匠を偲びつつ、本作を初鑑賞。
数多くの彼の監督作品をつぶさに観ているわけではないけれど、この監督の映画ほど作品に対する表面的なパブリックイメージと、実際の映画世界の中に孕む“異常性”とのギャップに戸惑うものはない。
大林宣彦監督自身の風貌や人間性から、ノスタルジックでファンタジックなファミリームービーを多く手掛けている印象を持っている人も多いと思う。
無論、そういう側面を持った作品も多いのだけれど、それはあくまでも個々の作品における一側面であり、彼が生み出す映画世界の本質は、もっとアバンギャルドであった。
もっと端的な言い方をすれば、ずばり“イカれている”と言ってもいいくらいに、その映画世界は変質的だった。
本作「ねらわれた学園」も、言い切ってしまえば、完全にトンデモ映画であり、イカれている。
決して大袈裟ではなく、最初から最後までクラクラしっぱなしの映画世界に唖然とし、呆然とする。
1981年当時の映像技術やエフェクト技術が実際どの程度で、この映画の頭が痛くなるほどのチープさが、どれほど許容されるレベルのものだったのかは、同じく1981年生まれの自分には判別つかない。
しかし、狙い通りかどうかはともかくとして、この確信犯的な“歪さ”は、この映画世界に相応しい。
多感で未熟な高校生たちの心模様と、1981年という時代性、そして超能力という題材。
それらが持つアンバランスさと稚拙さが、チープを通り越して“困惑”せざるを得ない映像表現と相まって、グワングワンと押し寄せてくるようだった。
そして、その中で唯一無二の存在として可憐に輝く「薬師丸ひろ子」というアイドル性が、イカれた映画世界を問答無用に成立させている。
角川春樹(製作)の「薬師丸ひろ子の“アイドル映画”を撮ってくれ」というオーダーに対して、破天荒な映画世界を支配するまさに“偶像”として主演のアイドル女優を存在させ、見紛うことなき「アイドル映画」として成立させた大林監督の感性は凄まじい。
更には、未成熟な高校生たちの“畏怖”の象徴として登場する峰岸徹演じるヴィラン“星の魔王子”の存在感も物凄い。
変質者的に主人公に目線を送る初登場シーンから、クライマックスの直接対決(+「私は宇宙!」のキメ台詞)、そして最後の“宵の明星ウィンク”……いやあ、まさにトラウマレベルの存在感だった。(クライマックスシーンの撮影現場を想像すればするほどそのカオスさにクラクラする)
と、どう言い繕っても“トンデモ”で“ヘンテコ”なカオスな作品であることは間違いなく、この映画を観た大多数の人は「何だこりゃ…」と一笑に付したことだろうとは思う。
だがしかし、公開から40年近くの年月が経ち、時代が移り、創造主である映画監督も亡くなってしまった今、一周まわって「何だこりゃ!」と目が離せなくなる作品になっていることも間違いないと思える。
ともあれ、日本が誇るイカれた巨匠のご冥福を祈りたい。彼が残したフィルムは決して色褪せない。


Information
タイトル | ねらわれた学園 |
製作年 | 1981年 |
製作国 | 日本 |
監督 | 大林宣彦 |
脚本 | 葉村彰子 |
撮影 | 阪本善尚 |
出演 |
薬師丸ひろ子
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高柳良一
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三浦浩一
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峰岸徹
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長谷川真砂美
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手塚真
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ハナ肇
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山本耕一
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赤座美代子
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千石規子
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鑑賞環境 | インターネット(Amazon Prime Video) |
評価 | 5点 |
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