
評価: 4点
Story
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』から5年。かつて世界中に放たれた恐竜たちは、気候や環境に耐えられず数を減らし、今は赤道直下の限られた地域にだけ生息していた。秘密工作の専門家ゾーラ・ベネット(スカーレット・ヨハンソン)は、製薬会社の代表マーティン・クレブス(ルパート・フレンド)から、ある危険な任務を引き受ける。それは、人類を救う新薬を開発するため、陸・海・空の3大恐竜のDNAを採取するというものだった。チームとして集められたのは、ゾーラが最も信頼する傭兵ダンカン・キンケイド(マハーシャラ・アリ)と古生物学者ヘンリー・ルーミス博士(ジョナサン・ベイリー)。チーム一行は、かつてジュラシック・パークの極秘研究が行われていた“禁断の島”へとたどり着く。そこは陸・海・空のどこから恐竜が襲ってくるかわからない、地球上で最も危険な場所だった。そして彼らは、世界から長年のあいだ隠されてきた、衝撃的な秘密とも直面することになる── Filmarksより
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Review
今年2026年7月、名優サム・ニールが亡くなった。御年78歳。
文芸作品から、サスペンス、ホラー、コメディ、SFなど幅広い作品に、近年に至るまで出演し続けた懐の深い俳優だった。
世界中の多くの映画ファンにとってもそうだと思うが、私にとっては、“サム・ニールといえば「ジュラシック・パーク」”という印象が揺らぐことは、この先もないだろう。
そしてそれは、その逆もしかりで、“「ジュラシック・パーク」といえば、サム・ニール”なのである。
無論、この創造世界を生み出したスティーヴン・スピルバーグや、原作者のマイケル・クライトンの偉大さは疑わないけれど、映画史に残るこのフランチャイズを支え、「顔」となったのは、間違いなくサム・ニールだった。
それは、シリーズ作において、必ずしも彼が出演していないことからも明らかだろう。サム・ニールが出演していない各作品においても、彼が演じた“グラント博士”の呼称は必ずと言っていいほど登場する。
前置きが長くなってしまったが、グラント博士を演じたサム・ニールを失った今、本作を鑑賞したシリーズファンの一人として、この映画世界にはこの上ない喪失感と、物足りなさを感じてしまったということ。
2022年の「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」において、グラント博士をはじめとするオリジナルキャラクターも勢揃いしたシリーズの「大団円」を描いたにも関わらず、ほぼ間を空けずにこの新作を製作した“意味”自体を疑わずにはいられない出来栄えだったことを否定できない。
まず何と言っても、本作に登場するキャラクターたちの位置づけが、揃いも揃って中途半端であり、シリーズの世界観から逸脱していたように感じた。それは、本シリーズが紡いできた“空想科学”の本質からも逸れる価値観であり、絶対的な違和感だった。
スカーレット・ヨハンソン演じるゾーラ、そしてマハーシャラ・アリ演じるダンカンは、両者とも製薬会社の資本主義者に雇われた傭兵なのである。主人公たちのこの設定がまず何よりもこのシリーズ作においては“掟破り”だった。
なぜなら、本シリーズにおける「傭兵」というキャラクターの位置づけは、常にストーリーテリング上の“悪役”だったからだ。
「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」においても、「ジュラシック・ワールド/炎の王国」においても、大金持ちに雇われた傭兵たちは、恐竜たちの怒りによって文字通り食い散らかされるモブだった。
傭兵を生業とする者を主人公とする設定そのものを否定したいわけではない。掟破りなその設定を新たな視座として、これまでのシリーズ作とは一線を画したストーリーテリングが描かれるのであれば、そこには明確な“意味”が生まれたことだろう。
ただ実際はそうではなく、ストーリーテリングそのものは、これまでのシリーズ作の二番煎じ、三番煎じに終始してしまっている。ゾーラやダンカンには、それぞれに悲しい過去や背景を背負っているように描かれているが、それらも決して特別なものではなく、取ってつけたような印象を拭えなかった。
そんな主人公たちが、多少の葛藤や苦悩を見せつつも、結局は資本主義者の指示通りに任務を遂行していくさまには、当然ながらカタルシスは生まれず、キャラクターたちへの共感も生まれなかった。
一方で、その傭兵チームに帯同することになった“デルガド一家”の描写には、まだシリーズ作に相応しい娯楽性が備わっていたと思える。
傭兵たちと恐竜島に入りつつも、その後はほぼ別行動となり、この家族単独での冒険活劇が描かれるわけでが、そのストーリーテリングには、スピルバーグ映画の系譜を感じるジュブナイル性や、家族同士の葛藤も描かれており、一定の見応えがあった。
むしろ、最初からこの家族のみを主人公にして、シリーズとしての原点回帰を目指していたのであれば、もう少し好意的に受け止められていたかもしれない。
また、本シリーズの肝である恐竜たちの描かれ方においても、安直さと陳腐さを禁じ得なかった。
特にラスボス的に登場するミュータント恐竜は、チープで、ありきたりで、あらゆる意味で「知性」に欠けていたと、言わざるを得ない。
「ジュラシック・ワールド」の過去作にも、遺伝子操作された化物恐竜は登場するけれど、それらはまだ本シリーズの根幹である“科学的空想”の範疇だった。(「ジュラシック・パーク」にも登場していたウー博士が、彼なりの信念を持って研究した結果だった)
そもそも、第一作で創始者のジョン・ハモンドが触れた“禁忌”こそが失われた生命に対する遺伝子操作だったわけだから、その題材自体は、シリーズが避けては通れない宿命だろう。
ただし、そこには常に科学的な見地が介在していた。本作には、その科学的見地が終始一貫して欠けていたと思う。
ラストシーンでは、冒険の道中で懐いたアクイロプスの幼体を連れて帰る始末。
そもそも恐竜が人間に懐くという設定が馬鹿馬鹿しいし、本作の冒頭では人間と恐竜は環境的に共存できないという前提が示されていたにも関わらず、それを完全に無視したおざなりな顛末に鼻白まざるを得なかった。
作品自らが定義したルールさえも、使い古された感動を表現するために逸脱する姿勢そのものにも、シリーズ全体に対する冒涜を感じずにはいられない。
長々と綴ってしまったけれど、結局のところ冒頭で触れた名優の喪失に辿り着く。
本シリーズを牽引し続けたグラント博士(サム・ニール)は、「ジュラシック・パーク」という空想科学の「知性」を象徴する存在であったということだろう。
シリーズのファンとして、新たな続編やリブートが展開されること自体を否定したくはないけれど、名優が体現した「知性」を継承する存在やテーマが生み出せないのであれば、それはあまりにも無意味なことだと思う。


Information
| タイトル | ジュラシック・ワールド/復活の大地 JURASSIC WORLD: REBIRTH |
| 製作年 | 2025年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ギャレス・エドワーズ |
| 脚本 | デヴィッド・コープ |
| 撮影 | ジョン・マシソン |
| 出演 | スカーレット・ヨハンソン |
| マハーシャラ・アリ | |
| ジョナサン・ベイリー | |
| ルパート・フレンド | |
| マヌエル・ガルシア=ルルフォ | |
| ルナ・ブレイズ | |
| デヴィッド・ヤーコノ | |
| オドリーナ・ミランダ | |
| フィリッピーヌ・ヴェルジュ | |
| ベシル・シルヴァン | |
| エド・スクライン | |
| 鑑賞環境 | Web配信(U-NEXT・字幕) |
| 評価 | 4点 |



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