「愛がなんだ」映画レビュー “象に餌をやりながら昔の馬鹿を懐かしむ”

愛がなんだ2021☆Brand new Movies

愛がなんだ

評価: 10点

Story

28 歳のテルコはマモル(マモちゃん)に一目惚れした5ヶ月前から、生活はすべてマモちゃんを中心に動いている。仕事中でも、真夜中でも、マモちゃんからの電話が常に最優先。仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモちゃんがいてくれるならテルコはこの上なく幸せなのだ。けれど、マモちゃんにとっては、テルコはただ都合のいい女でしかなかった。マモちゃんは、さっきまで機嫌良く笑っていたのに、ちょっと踏み込もうとすると、突然拒絶する。今の関係を保つことに必死なテルコは自分からは一切連絡をしないし、決して「好き」とは伝えられない。 ある日、朝方まで飲んでマモちゃん家にお泊まりしたことから、2人は急接近。恋人に昇格できる!と有頂天になったテルコは、頼まれてもいないのに家事やお世話に勤しみ、その結果、マモちゃんからの連絡が突然途絶えてしまう…。 それから3ヶ月が経ったころ、マモちゃんからひょっこり電話がかかってくる。会いにいくと、マモちゃんの隣には年上の女性、すみれさんがいた…。 Filmarksより

切なすぎる…岸井ゆきの×成田凌『愛がなんだ』予告編
『八日目の蝉』『紙の月』などの原作で知られる直木賞作家・角田光代の恋愛小説を映画化。好きになってくれない相手をいちずに追う女性の恋模様を描く。ヒロインに『おじいちゃん、死んじゃったって。』などの岸井ゆきの、彼女を翻弄(ほんろう)する男性を『ニワトリ★スター』などの成田凌が演じる。『パンとバスと2度目のハツコイ』な...

 

Review

たぶん、この映画を観たほとんどの人たちは、登場人物たち(特に主人公)に対して、痛々しさと、ある種の嫌悪感を覚えるのだろうと思う。
恋の沼に溺れ(どっぷりと沈み込んでいる)、自分を好いている人に都合よく甘え、相手を悪者にしたくないと物分りいい風に恋を諦める“彼ら”の様は、正直目も当てられない。
でもね、僕たちのほどんどは、その彼らの無様な姿から目を離すことができない。そして、嫌悪感を示しつつも、否定もしきれない。
それは、誰しもその無様さと自分自身の経験とを重ね合わさざるを得ないからだ。

誰だって、「正論」とは程遠い恋に溺れたことがあるだろうし、「不誠実」なセックスで誰かを傷つけてしまったこともあるかもしれない。
なぜそうしてしまうのか?
それは、劇中でも吐露される通り、本当は誰も自分自身に対して「自信」なんて持てず、弱さや情けなさを隠しつつ、寂しさに覆い尽くされてしまわないように必死に生きているからだ。

主人公のテルコは、恋に溺れ沈み込む自分の愚かさも、相手の男の情けなさも、友人たちの弱さもズルさも、みんな分かっている。
それがもはや「恋」でもなければ、「愛」でもないことも。
それでも、彼女は、“沈没”を止めない。止められない。
友人に現実を突きつけられても、無垢な少女時代の自分自身に疑問を呈されても、「は?何それ」とすべてをシャットアウトする。

彼女は無意識下で知っているのだ。
それがどんなに愚かで精神的に不衛生な選択であろうとも、沈んで沈んで沈み込んで、“底”に足をつけなければ、浮き上がることができないことを。

 

この映画が描き出していることは、必ずしも色恋を主体にした恋愛模様ではなく、もっと泥臭くて滑稽な人間模様だった。
脳天をガツンと叩かれた感じ。この感覚は、2年前に鑑賞した「勝手にふるえてろ」を彷彿とさせる。
打ちひしがれた主人公が唐突に歌いだして心情を吐露するシーンなど類似点も多かったと思う。

そして、「勝手にふるえてろ」鑑賞時に松岡茉優を発見したことと同様に、また一人大好きになるべき女優を発見した。
主人公テルコを演じた岸井ゆきの。この女優がまた素晴らしかった。
不安定なキャラクターを演じきったその表現力もさることながら、個人的にツボだったのは彼女の風貌だ。
とても美人にも見えるがよく見るとそうでもなかったり、とびきり可愛らしくも見える時もあればまったくそうじゃない時もある。一つの映画の中でビジュアルがくるくると入れ替わるようだった。
例えるならば、“のん”のようなキュートでコミカルな繊細さ、“田畑智子”のような儚げな芯の強さ、そしてBiSHの“セントチヒロ・チッチ”のような秘めた熱さをかけて混ぜ合わせたようなマーブル柄。それが様々な表情を見せているようなそんな感覚を覚えた。
要するに女優としてどストライクだったということ。

 

「会社辞めたら象の飼育員になるわ」
と、動物園の象を見ながら、馬鹿な昔の男が馬鹿なことを言っていた。
それを聞いて泣いた私は、もっと馬鹿な女だったな。
と、彼女は、彼(象)に餌をやりながら懐かしむ。

 

「勝手にふるえてろ」<10点>
「絶滅すべきでしょうか?」と歌い上げた後、主人公はアパートの小さな玄関で、独りうずくまり、嗚咽する。 胸が締め付けられてたまらなかった。性別は違うけれど、彼女は20代の頃の私だと思った。 「絶滅」という言葉は使わなかったけれど、…more

 

Information

タイトル愛がなんだ
製作年2019年
製作国日本
監督
今泉力哉
脚本
澤井香織
今泉力哉
撮影
岩永洋
出演
岸井ゆきの
成田凌
深川麻衣
若葉竜也
江口のりこ
穂志もえか
中島歩
片岡礼子
筒井真理子
久ヶ沢徹
鑑賞環境インターネット(Netflix)
評価10点

 

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