「爆弾」“令和の怪人スズキタゴサクの狂気と憂鬱”

2025☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

酔った勢いで自販機と店員に暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。やがてその言葉通りに都内で爆発が起こり、スズキはこの後も1時間おきに3回爆発すると言う。スズキは尋問をのらりくらりとかわしながら、爆弾に関する謎めいたクイズを出し、刑事たちを翻弄していくが……。 映画.comより

令和最大の衝撃解禁! 映画『爆弾』予告 2025年10月31日(金)公開
令 和 最 大 の 衝 撃 作 街を切り裂く轟音と悲鳴、東京をまるごと恐怖に陥れる連続爆破事件すべての始まりは、酔って逮捕されたごく平凡な中年男・スズキタゴサクの一言だった「霊感で事件を予知できます。これから3回、次は1時間後に爆発します」…more

 

Review

健康診断に少し引っかかったので、有休を取って消化器内科を受診。一抹の不安を抱えながらも、予定よりも早く診療が終わったので、そのまま隣町の映画館へ足を伸ばした。

キャスティングにはそれほど惹かれていなかったので、劇場鑑賞はスルーするつもりだったのだけれど、上映開始時刻に合わせて、本作の鑑賞に至った。
結果的に、公開初日の最初の上映回で鑑賞する形になったのだが、鑑賞後は、本作を初回上映で観られたことへの満足感が溢れていた。作品の性質的にも、SNS上で様々な情報が行き交う前に鑑賞できたことが吉だったと思う。

もはや“怪人”のような謎の男と、密室で対峙して繰り広げられる文字通りの“爆弾サスペンス”。
日本映画としては少し珍しいくらいに、問答無用に無差別な爆弾事件が連発し、容赦なく死傷者数が積み重なっていく展開には、映画内での絶望感を越えて、現実社会そのものが薄っすらと感じ始めている一種の「終末感」を覚えた。

個人的なキャスティング面での難色ポイントの一つが、「佐藤二朗」だった。
俳優としての佐藤二朗が決して嫌いなわけではなく、彼個人に対して悪い印象は何もなかったのだけれど、ここ数年における低俗なエンタメ作品の多くに彼が起用されていることが、敬遠する要因であったことは否めない。
だが、佐藤二朗の演技はまさに怪演そのもので凄まじかった。
彼が本作で体現した“スズキタゴサク”から溢れ出る無邪気な悪意こそが、まさに現代社会の病理を表していたように感じずにはいられなかった。
個人的に振り返ってみれば、今年の初めに観た「あんのこと」における、この俳優の多層的かつ生々しい人間表現の記憶も新しく、結果的には二作連続で彼の演者としての凄さを目の当たりにした格好だった。

キャスティングにおいては、もう一つ、主演の山田裕貴に対しても期待値が高くなかったのだけれど、こちらも想像以上のキャラクター造形を見せてくれていた。
ただし、佐藤二朗の圧倒的な存在感や、渡部篤郎、染谷将太、伊藤沙莉ら新旧の演技巧者に囲まれた中では、主人公としてやや食われていた感は否めない。
主人公の刑事・類家の人間描写自体には、本作では描ききれなかった人物背景がありそうだし、原作は続編も刊行されているようなので、類家刑事及び山田裕貴の挽回に期待したい。

謎と不穏さに塗れた“怪人”に、警察組織と社会が翻弄され、明確な痛みと悲劇を巻き起こしながら、スリリングに展開されるストーリーテリングにおいても、どこか日本映画離れした簡潔でスピード感溢れる映画世界を「体感」する感覚がエキサイティングだった。自分の中では下げきっていた期待値が、序盤の段階から高まり、気がつくと精神的に身を乗り出してスクリーンに没頭していた。

映画を観終わって、ああそういえば今朝は病院に行ったんだったと思い出した。無論、自身の健康への不安が消え去ってしまったわけではないけれど、鑑賞中そのことを一時的であれ忘却させたことからも、想像以上の良作だったなと思えた。

 

「あんのこと」“或る「事実」に対する怒りと悔しさを、歪めずに直視する”
週末深夜、先刻までエンドロールが流れていたテレビの光が消えて、暗い部屋の中で思わず天井を仰いだ。「つらい…つらいな」と、一人何度もつぶやきながら、静かに寝床に就いた。

 

Information

タイトル 爆弾
製作年 2025年
製作国 日本
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館
評価 8点

 

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