「ワン・バトル・アフター・アナザー」“波打つ見通しの悪いハイウェイをビクビクしながら進み行く”

2025☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

最愛の娘と平凡ながらも冴えない日々を過ごす元革命家のボブ(ディカプリオ)。 突然、娘がさらわれ、生活が一変する。異常な執着心でボブを追い詰める変態軍人“ロックジョー”(ペン)。 次から次へと襲いかかる刺客たちとの死闘の中、テンパりながらもボブに革命家時代の闘争心がよみがえっていく。 ボブのピンチに現れる謎の空手道場の“センセイ”(デル・トロ)の手を借りて、 元革命家として逃げ続けた生活を捨て、戦いに身を投じたボブと娘の運命の先にあるのは、絶望か、希望か、それともー Filmarksより

映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』本予告|大ヒット上映中
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Review

闘争、そしてまた闘争。
革命主義者と排外主義者、争い続ける双方は、両者とも愚かで脆い。その様はあまりにも無様で、ときにおぞましくもあり、それらをひっくるめてとても滑稽に映し出される。
平和ボケした日本人の小市民から見れば、この逃走劇もとい闘争劇は、とても遠い世界の絵空事のようにも感じてしまうけれど、登場する人間たちのその滑稽さを見るにつけ、つまるところこれが人間の「本性」なのだろうなと思えた。良い意味でも悪い意味でも───。

元革命家の主人公をレオナルド・ディカプリオが演じ、とある理由から彼とその娘を追跡する“変態”軍人をショーン・ペンが演じている。
まず、出演者の情報を詳細に把握せずに鑑賞したため、強烈な変態軍人を演じる俳優がショーン・ペンだとなかなか確信できなかった。あの目つきはショーン・ペンだよなあ、と最初から感じつつも、その厳つい軍人像の風貌とあまりにも異質なキャラクターが、私の脳内でショーン・ペンという俳優像と結びつかなかった。
兎にも角にも、本作において最も強烈で、狂気の権化とも言えるキャラクターを圧倒的な存在感で演じきっていた。彼が演じた変態軍人の立ち居振る舞いと、その最期こそが、人間というものの虚しさの象徴にも思え、なかなか忘れ難い印象を残している。

一方で主演のレオナルド・ディカプリオは、無論安定感に溢れ、この一筋縄ではいかないけれど面白き映画を牽引している。
レオナルド・ディカプリオは、この数年の出演作を経て、すっかり狼狽え続ける“駄目男”の役が板についている。堕落し、自暴自棄になりつつも、主人公として物語を推進するキャラクターの人間力を醸し出させるのは、やはりこの人が大スター俳優である所以であろう。

映画全体が難解というわけではないけれど、ポール・トーマス・アンダーソン監督が作り上げたこの映画世界には、多層的な視座や現実、バックグラウンドが内包されていて、当然だけれど、単に元革命家の男が娘を救い出すためにドタバタの闘争を繰り広げる映画ではない。
現実のアメリカ社会の思想的な軋轢や、移民問題をはじめとして、様々な要素が入り混じるこの世界の混沌こそが、本作の核心なのだろうと思える。
鑑賞者である自分自身の知見として、それらの要素を深く理解していたならば、本作が醸し出す痛烈な批評性をもっとダイレクトに感じることができたのだろうと、残念には思う。

映画のクライマックスは、国境線近くの、長く長く続くハイウェイで繰り広げられる。
その道は激しく波打ち、走行中は先が見通せない。
それはまさに、人間の歴史と、今この瞬間の世界の見通しの悪さを象徴しているように思えた。
次の瞬間、突如現れる障害物にクラッシュを起こしてしまわないように、私たちは、慎重にビクビクしながら進んでいくしかない。

 

Information

タイトル ワン・バトル・アフター・アナザー ONE BATTLE AFTER ANOTHER
製作年 2025年
製作国 アメリカ
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館(字幕)
評価 8点

 

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