「THE BATMAN-ザ・バットマンー」映画レビュー “現実路線の足枷となるゴッサム・シティというファンタジー”

2022☆Brand new Movies

評価:  6点

Story

世界の《嘘》を暴け。本性を見抜け。優しくもミステリアスな青年ブルース。両親殺害の復讐を誓い、悪と敵対する存在“バットマン”になって2年が過ぎた。ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラー。彼は犯行の際、必ず“なぞなぞ”を残し、警察や世界一優秀な探偵のブルースを挑発する。最後のメッセージは「次の犠牲者はバットマン」。彼はいったい何のために犯行を繰り返すのか?そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪…。すべてを奪おうとするリドラーを前に、ついに彼の良心が狂気に変貌していく―。 Filmarksより

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』日本版予告 2022年3月11日(金)公開
世界の《嘘》を暴け。本性を見抜け。『ジョーカー』の衝撃は、序章にすぎなかった―。クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』トリロジー以来、全世界が待ちわびたバットマンの≪単独≫映画がついに幕を開ける!優しくもミステリアスな青年ブルースは、両親殺害の復讐を誓い、夜は黒いマスクで素顔を隠し犯罪者を見つけては力...

 

Review

「バットマン」の映画化において最も重要で、取り扱いが難しい要素は、“リアリティライン”の引き方だと思う。
架空の超犯罪都市の大富豪が、夜な夜な真っ黒なコウモリのコスチュームに身を包み、街の悪党たちを殲滅する。元来アメコミであることを鑑みても、圧倒的にマンガ的であり、どう言い繕っても“馬鹿っぽい”設定である。
それでも、ほとんど絶え間なく映画化されてきたのは、この“馬鹿っぽい”世界観が、多様な創造性を孕んでいるからだろうと思える。
マンガ的な物語世界を実写映像化するにあたって、リアリティラインをどのように引くか。
あくまでも寓話的なダークアクションに振り切るのか、現実社会の鬱積や病理性を盛り込んだ哲学的なストーリー展開を深堀りするのか、はたまた筋肉隆々の“冷凍男”が主人公を押しのけて登場するようなエンタメに突っ切るのか、その「線引き」によって映画作品の印象は大いに変わるし、その分幅広い層に熱狂し得る。

そういった観点からは、新たなリブート作品として製作された本作も、明確な意図によって他のシリーズとは異なるリアリティラインが引かれているとは思う。
ただ、個人的には本作のその線引きは、ややアンバランスだったと感じた。

現実路線で、どこか映画「セブン」を彷彿とさせる猟奇サスペンス要素との融合は面白い試みだった。過去シリーズにおいては異世界の象徴として存在感を出すヴィランたちの風貌やキャラクター性も、極めて現実的な造形に振り切って、リアリティラインをより現実に近い位置に寄せていると思う。
主人公バットマンに“探偵”の役割を与え、他のアメコミヒーロー映画とは一線を画した作風に仕上がっていることは間違いない。

が、しかし、その現実路線のテイストがバランス良く成立しているとはどうしても思えなかった。
その最たる理由は明らかで、舞台である犯罪都市“ゴッサム・シティ”のあり方自体がファンタジーすぎるからだと思う。
あれだけ常軌を逸したレベルで治安が悪く、景観や公共サービスが崩壊しているとしか思えない劣悪な環境下において、今更政治家や警官の汚職がどうとか、薬物が濫用されていたり、マフィアが裏で糸を引いているとか言われても、「そりゃそうだろうよ」と正直鼻白んでしまう。
故に、そんな中で、バットマンや、真っ当な警察や政治家たちが、「正義」や「人生」をかけて苦闘するしている事自体が“非現実的”に感じてしまい、どうにも乗り切れなかった。

主演のロバート・パティンソンのバットマンぶりは悪くはなかったと思うが、徐々に解明されていく事実に対して総じて思慮が浅く、バットマンである以前に人間的に未熟な主人公の姿はやはり魅力的ではなく、必然的に映画的な魅力の欠如に繋がっている。
用意されていたストーリーテリングについても、稚拙で、ただ鈍重であったことを否めない。
リブート作品として、特別なバッググラウンド描写や、新機軸の展開があるわけでもなく、この内容でほぼ3時間の上映時間はさすがに冗長すぎた。

一方で、ビジュアル的なクオリティは過去最高レベルで素晴らしかったと思う。
“重さ”までを表現するバットマンのコスチュームや、臨場感の高い迫力あるカーチェイスシーンなど、印象強いカットやシーンは全編通して散りばめられている。
もっと作り込まれたストーリーさえ備えていれば、もっと素晴らしい「バットマン」に仕上がるであろうことは明白なので、次作に期待したい。

 

 

Information

タイトルTHE BATMAN-ザ・バットマンー THE BATMAN
製作年2022年
製作国アメリカ
監督
マット・リーヴス
脚本
マット・リーヴス
ピーター・クレイグ
撮影
グレイグ・フレイザー
出演
ロバート・パティンソン
ゾーイ・クラヴィッツ
ポール・ダノ
ジェフリー・ライト
ジョン・タートゥーロ
ピーター・サースガード
アンディ・サーキス
コリン・ファレル
ジェイミー・ローソン
ギル・ペレス=アブラハム
鑑賞環境インターネット(U-NEXT・字幕)
評価6点

 

Recommended

THE BATMAN-ザ・バットマン- (4K ULTRA HD&ブルーレイセット)(3枚組)[4K ULTRA HD + Blu-ray]
THE BATMAN-ザ・バットマン- (4K ULTRA HD&ブルーレイセット)(3枚組)

画像引用:https://amzn.to/3hk3cbm

コメント

タイトルとURLをコピーしました