「ナイトメア・アリー」“下劣な見世物小屋に奥に待ち受ける鏡、そこに映った「怪物」の正体”

2025☆Brand new Movies

評価:  9点

Story

1939年のアメリカ。故郷を後にしたスタンは、やがて怪しげで華やかなカーニバルの一座で働き始める。彼はそこで読心術のテクニックを学ぶと、電流ショーをしていた美女モリーを連れて一座を抜け出す。その後、2人は一流ホテルでお金持ちを相手に読心術のショーを披露し成功を収める。ある日、そんなスタンの前に、美しくエレガントな心理学者リリス・リッター博士が現れるのだったが…。 allcinemaより

『ナイトメア・アリー』日本オリジナルナレーション予告(3月25日公開)
ギレルモ・デル・トロ最新作『ナイトメア・アリー』2022年3月25日(金)公開!大沢たかおが主人公スタン、そして檀れいがリリスの視点で、映画のもつ世界観と劇中で展開されていく独特の世界観と男女のスリリングな騙し合いを妖艶な声色で見事に体現し…more

 

Review

若い世代の人たちや、子どもたちには“イメージ”しづらいのかもしれないけれど、昭和56年生まれの私には、「見世物小屋」の記憶が、薄ぼんやりではあるけれど脳裏に残っている。
縁日の人だかりの奥に、その即席の小屋は建てられていて、おどろおどろしく、どこか淫靡な雰囲気で描かれた看板を、子どもながらに“遠慮”して遠目で見ていた記憶。親からも「見てはダメ」というようなニュアンスで興味を持つことを制されていた覚えもある。
あの小屋の中に存在していたものは、きっと下賤で愚にもつかないものだったのだろうけれど、それを「生業」として、日々を生きていた人たちも確かに存在していたわけで。四十路を越えた今、そういう人たちに人生模様にも、決して綺麗事ではないドラマを感じる。

少々個人的な前置きが長くなってしまったけれど、ギレルモ・デル・トロ監督が描き出した本作の映画世界は、1930年代のアメリカの「見世物小屋」を舞台として、そこに流れ着いた主人公と、その一行の生々しい人間模様を、おぞましく、不気味に、それでいて圧倒的に美しい映像世界で映し出した強烈な作品だった。

あまり作品情報を把握せぬまま鑑賞したので、鑑賞前は、てっきり“悪魔”や“呪い”的なものが描かれる類いの、ギレルモ監督得意の“ダークファンタジー”だとばかり思っていた。
だが蓋を開けてみると、そこに映し出されたものは、ある“業”を背負った男の、あまりにも愚かで、あまりにも哀しい生き様を描いたまさにフィルム・ノワールだった。

ブラッドリー・クーパー演じる主人公は、決して“悪人”ではなかったはずだけれど、おそらくは幼少期から抱え続け、支配され続けてきた“或る苦悩”から抜け出せず、結果的には自ら「悪意」を育み、待ち受けていた苛烈な運命を受け入れざるを得なかった。
その様はやはり愚かだと思うし、共感しがたいけれど、これが人間の根幹的に孕む脆さであり本質であると言われれば確かにそうで、本作のラスト、彼が辿った顛末に対しては同情を越えて諦観めいたものが感じられた。
この主人公の男が、あの粗末で寒々しく、劣悪さが滲み出る生家で、憎み抜いた父親と共に、どのように成長し、どのように生活をしてきたのか──。本作においてその過去描写は全く無いけれど、見世物小屋に流れ着いた以降の彼の言動や選択を見るだけでも、その「不幸」が伝わってくる映画表現が見事だった。

主人公にとってのファム・ファタールとして登場する3人の女性のキャラクター像と、それらを演じた3人の女優たちの演技と存在感も素晴らしい。
トニ・コレット、ルーニー・マーラ、そしてケイト・ブランシェット、名優たちが演じる三者三様の女性たちが、主人公の人生に深く関わり、慰め、助言し、引導を渡す。
普通、物語に登場するファム・ファタールの存在は一人であることが多いけれど、この物語ではそれが三人も登場し、それぞれが強い存在感を放っていることも、この特異な映画世界の中で印象的な要素だった。

彼女たちの存在は、主人公の人生に大いに影響を与え、見え方によっては「破滅」へ導いたとも言えるかもしれない。
ただ、よくよく振り返ってみたならば、彼女たちは常に主人公に対して明確な“救い”も差し伸べていた。
結局、めくるめく破滅への螺旋階段を突き進んでいったのは、他の誰でもなく主人公自身の、惑いと決断によるものだったのだと思う。
ダークファンタジーではない本作には、悪魔も呪いも登場しないけれど、主人公自身は呪縛から逃れられず、自らの人間性の中に巣食う悪魔に支配され続けていたように見えた。

主人公が流れ着いた見世物小屋で出会った“獣人”の仕事をする男は、不潔な檻の中で「俺は違う こんなじゃない」と哀しく呻き続ける。
その台詞の真意は、主人公自身が行き着いた“人生の果て”で、涙すら出ない、乾いた笑いと共に結びつく。
不気味で淫靡な完璧な造形美に彩られた、人間のインサイド、すなわち「怪物性」の奥深い闇に、感嘆した。

映画の冒頭に映る螺旋が描かれた空洞の先、「罪人よ 己の姿を見ろ」のメッセージとともに立てかけられた鏡。あの鏡に映っていたものこそが、“怪物”の正体であり、この映画世界でギレルモ監督が仕掛けた暗示そのものだった。

 

「シェイプ・オブ・ウォーター」<10点>
なんて醜いんだろう。なんて悍ましいんだろう。なんて妖しいんだろう。そして、なんて美しいんだろう。ファーストカットからラストカットに至るまで、すべてのシーンにおいて、あらゆる形容が感嘆と共に押し寄せてくる。終始一貫して、ギレルモ・デル・トロ監…more

 

Information

タイトル ナイトメア・アリー NIGHTMARE ALLEY
製作年 2021年
製作国 アメリカ
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 インターネット(Disney+・字幕)
評価 9点

 

Recommended

https://amzn.to/4khSnB4

コメント

タイトルとURLをコピーしました