評価:
6点Story
最良の友でありジェダイの弟子であったアナキン・スカイウォーカーが、邪悪なシスの暗黒卿ダース・ベイダーに堕ち、ジェダイが最大の敗北を喫した『エピソード3/シスの復讐』での劇的な出来事から10年後、『オビ=ワン・ケノービ』の物語は始まる─。 Filmarksより
オビ=ワン・ケノービ | 予告編 | Disney+(ディズニープラス)『オビ=ワン・ケノービ』全世界が熱望した伝説のキャラクターがついにオリジナルドラマシリーズに──『スター・ウォーズエピソード3/シスの復讐』のその後、オビ=ワン・ケノービとダース・ベイダーの物語を描く全世界を興奮と歓喜で満たし、社会現象を巻…more
Review
先日、ようやく「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」を鑑賞。久しぶりに「スター・ウォーズ」(SW)の世界観に触れて、幾つになっても少年心をくすぐってくるなあと感じた。
Disney+の視聴契約はしているものの、いつの間にか量産されていたSWの膨大なスピンオフ作品の物量に尻込みしてしまい、鑑賞したドラマシリーズは「マンダロリアン」のシーズン1のみだった。
改めて、“エピソードⅣ”をはじめとする映画シリーズの再鑑賞も目論みつつ、手始めにSWの最重要人物の一人である“オビ=ワン・ケノービ”の物語を描いた本シリーズを鑑賞した。
私はSWの映画作品を一通り追って楽しんでいる程度のライトなファンではあるけれど、“オビ=ワン・ケノービ”というキャラクターに与えられた立ち位置は、“アナキン・スカイウォーカー”に纏わる「悲劇」に対する「戦犯」の一人だと、個人的に思っている。
オビ=ワンの“師”としての未熟さが、悲劇の暗黒卿を生んでしまったことは一つの事実であり、彼はその失意と悔恨を、罪と罰を背負い続けて“エピソードⅣ”で初登場したキャラクターなのだと思う。
そんな業を背負ったキャラクター故に、オビ=ワン・ケノービ単独の物語が描き出されることは、ある意味必然であり、全世界のSWファンが待ち望んだ作品だったろうと思える。
アナキン・スカイウォーカーが闇に堕ちた“エピソードⅢ”から10年後の時代を舞台にした本シリーズは、6話からなる構成で、オビ=ワン・ケノービにとってあまりにも重要な数日間の出来事を切り取っている。
ドラマシリーズとしてはスマートな構成になっていることからも想像できるが、本来はスピンオフ映画として企画されていたらしい。(名匠スティーブン・ダルドリーが監督を務めるプランもあったようで、個人的にそれはすごく残念に思う。)
脚本確定も難航した経緯があるようで、順風満帆なプロジェクトではなかったことが伺える。
そんなバックグラウンドも多分に影響したのだろうが、脚本やストーリーテリングの精度においては、完成度が高いとは言い難く、看過できない突っ込みどころも多かった。
まず帝国側の主要キャラとして登場する“サード・シスター”なる悪役の立ち位置が非常に曖昧で、言動の整合性を欠いていた。
彼女の出自自体には、とても因縁と悲しみが溢れていてドラマ性があるのだけれど、その行動に一貫性がなく、心理描写も中途半端だったので、とても勿体ないキャラクターとして場をぼやかしてしまっていたと言わざるを得ない。
別の味方キャラクターとして登場するターラとキャラクター造形を統合して、彼女の過去の経緯を踏まえつつ、オビ=ワンたちと共闘し、身を挺して自らの運命に禊をつける展開などがあればもっとドラマティックだったのではないかと思える。
そしてやはり、“ダース・ベイダー”の描かれ方にも苦言は避けられない。
無論、ダース・ベイダー=アナキン・スカイウォーカーであり、オビ=ワン・ケノービの物語を創造するに当たってその存在を描き出さないわけにはいかない。新三部作でアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンもしっかり出演しており、ファンとしてはもちろん嬉しかった。
ただ、そのキャラクターとしての言動があまりにも安直で、「馬鹿っぽいなあ」と思えてならない。
闇落ちしてから初めて再会する師に対して、心がかき乱されていたことは理解できるけれど、10年の年月が経過して、暗黒卿としてのキャリアもそれなりに積んできたであろうに、あの体たらくぶりではそりゃあ部下たちも閉口してしまう。
そもそも、本作としても最重要の人物なのだから、もっと焦らして焦らして満を持しての登場と、オビ=ワン・ケノービとの邂逅を描き出してほしかった。「エピソードⅣ」における再会&再戦シーンとのバランスを考えると、その存在を匂わせつつも、登場するのは本シリーズのクライマックスまで取っておいても良かったのではないかとも思える。
映画用に進行していた脚本を、ドラマシリーズとして転用・改訂していく過程で、各登場人物たちの言動の不整合感や、冗長な場面が付加されてしまったのかもしれない。
映画作品の尺内で、もっとオビ=ワン・ケノービの心情のみにフォーカスしつつ、幼いレイア姫や変わり果てたかつての愛弟子との一寸の邂逅を描いたほうが、ドラマ性が高まったかもしれない。
と、主に脚本にまつわる不満点が先行してしまう結果にはなったが、それでもSWのスピンオフシリーズ作品として魅力的な作品ではあった。
その魅力を保てた最たる要因は、新三部作から継続して、オビ=ワン・ケノービを演じ続けたユアン・マクレガーの存在に他ならないだろう。
「エピソードⅠ」でオビ=ワン役に抜擢された頃は20代後半で、俳優本人としてもキャラクターとしてもフレッシュで青臭かったけれど、そこからスター俳優としてキャリアを積み続け、50歳を迎えて再び演じたジェダイ・マスター役には、大きな説得力と芳醇な味わいが備わっていたと思う。
そして、ストーリー的には、幼い“レイア姫”との絆を描き出したことが、想定以上のドラマ性を生み出していたと思う。
鑑賞当初、「エピソードⅣ」の記憶がおぼろげだったこともあり、オビ=ワン・ケノービとレイア・オーガナの関係性をこんなに深く描き出して良いのかと懐疑的に感じていた。「エピソードⅣ」で両者が面と向かうシーンが一つも無かったことがその要因だった。
しかし、よくよく考えてみればレイア姫が“R2-D2”に託したメッセージの第一声は「助けて オビ=ワン・ケノービ」であり、その彼女の言葉の意味と背景が、本作を通じて明確に描き出されていたと思う。
言動に難があったダース・ベイダーだったが、それでも最終話におけるかつての“師弟”同士の一騎打ちには胸に迫るものがあったし、オビ=ワンに再び敗北し、悲痛な姿を晒しながら暗黒卿としての矜持を示すしかなかったアナキンの姿には悲哀が極まっていた。
そんなわけで、ライトなSWファンであっても、長々と綴りたくなるような語りがいのあるスピンオフシリーズであったことは間違いないし、引き続き、各三部作や未鑑賞のドラマシリーズも観たくなった。
ちなみに、ジョージ・ルーカスが「エピソードⅣ」の製作当時、オビ=ワン・ケノービ役に三船敏郎のキャスティングを画策したことは有名な話だが、もしそれが実現していた世界線があったとしたら、本シリーズの配役はだれになっていただろうか。
個人的には、「SHOGUN 将軍」での成功も記憶に新しい真田広之が、年齢的にも適役だったのではないかと思えてならない。それはそれで物凄く観たいな。


Information
タイトル | オビ=ワン・ケノービ OBI-WAN KENOBI |
製作年(放映期間) | 2022/05/27 ~ 2022/06/22 |
製作国 | アメリカ |
監督 | |
脚本 | |
撮影 | |
出演 | |
声の出演 | |
鑑賞環境 | インターネット(Disney+・字幕) |
評価 | 6点 |
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