
評価: 7点
Story
“悪い魔女”として悪名を着せられ民衆の敵となったエルファバは、オズの森に身を潜めながら、言葉を奪われた動物たちの自由のために闘い続け、“偉大なるオズの魔法使い”(ジェフ・ゴールドブラム)の噓にまみれた正体を世に暴こうとしていた。一方のグリンダは“善い魔女”としてオズの国にとって希望の象徴となり、名声と人気の恩恵を満喫する日々。しかし、その心にはエルファバとの決別が影を落としていた。 シズ大学に通っていた頃、エルファバとグリンダはぶつかり合いながらも「ふたり一緒なら何だってできる」と、互いに心を通わせた。そして今、正反対の道へと駆り立てられたふたりは、かけがえのないかつての友に、もう一度向き合わなければいけない。自らを、そしてオズという世界そのものを、永遠に変えるために。 Filmarksより
映画『ウィキッド ふたりの魔女』本予告<2025年3月7日(金)より、全国ロードショー!>エルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)、対照的な“ふたりの魔女”の眩しくて切ない感動のエンターテイメントが日本上陸!2025年3月7日(金)より、全国ロードショー!出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョ…more
Review
「オズの魔法使い」に登場する“北の良い魔女”と“西の悪い魔女”が、実は学生時代からのソウルメイトだったというプロットで、世界中が知る物語の“前日譚”を描いたファンタジーの続編であり、完結編。
昨年鑑賞した第一作は、劇場鑑賞をスルーしてしまったことを激しく後悔せざるを得ないほどの映画的エモーションに溢れた、驚くべき傑作だった。
魔法の才に満ちたエルファバは、なぜ黒装束に身を包み、“西の悪い魔女”というレッテルを貼られなければならなかったのか。
一方、実は魔法なんて何も使えなかったガリンダもといグリンダは、どうして白く輝く“北の良い魔女”として国中の人々に讃えられる存在になったのか。
そのそれぞれの出自と真相を綴りつつ、彼女たちが“友”として文字通り「共鳴」した経緯と、世界への失望、自身への覚醒を携えて飛翔する様を描き出した前作には、まさに映画的な“マジック”が生まれていたと思う。
彼女たちの運命の顛末を描くこの続編の公開を迎えて、今年随一と言ってもいい期待感を覚えると同時に、覚悟せざるを得ない要素もあった。
それは勿論、この映画が行き着く先には、「オズの魔法使い」というあまりにも有名な物語の結末が待ち構えているということだ。
前作の冒頭でもしっかりと描き出されていたように、「西の悪い魔女が死んだ!」と国中が狂喜乱舞で浮かれる顛末を避けることはできない。
それを都合よく書き換えてしまうことは、本作が“前日譚”である以上許されないことであり、故に安直なハッピーエンドはあり得ないということが、私たち鑑賞者が持つべき覚悟だったと思う。
結果として、本作の結末はハッピーエンドではなかったと言うべきだろう。
エルファバは、前作のラストで自分自身の苛烈な運命との決別と、正しい世界を追い求めて、飛び去っていくが、その先に待っていたのはさらに厳しい現実と、喪失であった。
家族、愛情、そして友情、一人孤独に戦い続けるほどに、彼女は様々なものを奪われ、失い、世界中から否定され続ける。
前作において、シンシア・エリヴォ演じるエルファバの歌声は、孤独を抱えつつもそれでも広い空に向かって響き渡っていた。しかし、本作ではその歌声がさらに美しく響くほどに、その先には深い闇が広がっているように感じた。
その様は、どう美しく取り繕っても、やはり悲しく、惨たらしい。
必然的に、この続編を通じて彼女の運命を追う私たち鑑賞者においても、前作のように解き放たれたカタルシスを得ることはできなかった。
それは、映画作品そのものに対する愛着にも直結せざるを得ず、どうしても奇跡的な前作に対して負の要素が上回ってしまったことは否定できない。
ただし、本作の在り方はそれで正しかったのだと思う。
すでに世界に流布している歴史的な物語の前日譚を、創作し描き出すことの責任と覚悟を、この映画は全うしたのだと思える。
それは、物語の中に登場する“オズ”という国そのものの虚構と愚かさにも通じる。
もしこの前日譚で、すでに存在する物語を歪曲し、その結末を書き換えてしまうようなことをすれば、それはまさに“オズの魔法使い”として国を支配した男の「嘘」と同じことになってしまうだろう。
本作が描き出したことは、虚構と錯覚によって一方的なレッテルを貼り付けることの、愚かさと虚しさ。そしてそれに抗うことの難しさと、真の勇気だった。
ただそれ故に、安直なカタルシスに帰着することが許されない本作のテーマを、この続編一作に正しく収めることはやはり難しく、映画全体がアンバランスになっていると感じざるを得なかった。
主人公が、カンザスから舞い降りた田舎者の少女によって倒されるという“既定路線”に沿わざる得ない本作のストーリーテリングにおいては、主人公たちをはじめとするすべての登場人物たちの言動に制約が生まれていることは否定できないだろう。
つまるところ、本作の登場人物全員が、「物語」という避けられない結末の中に閉じ込められてしまっているように見えた。制約の中で縛り付けられ、本人たちにとっても原因不明なジレンマと共に、自由に身動きが取れないように見えてしまった。
結果的に、前作のような“マジック”はこの続編には生まれなかった。
しかし、今この世界で描き出すに相応しいそのテーマ性に真摯に挑み、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデという圧倒的な歌唱力を誇る二人の歌姫を主演に配して、見事な映画世界を創造したことは、賞賛に値する。
映画を彩る様々なクリエイティブの品質の高さ、そして主演二人の人間性と関係性──この作品が体現したものは崇高だった。
「永遠の約束(For Good)」というサブタイトルと共に、安易なハッピーエンドを許さない姿勢と勇気、本作が示したものは、虚構と欺瞞に満ち溢れたこの現実世界に対する真っ直ぐな眼差しそのものだったと言えるのかもしれない。

Information
| タイトル | ウィキッド 永遠の約束 Wicked: For Good/Wicked: Part Two |
| 製作年 | 2025年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ジョン・M・チュウ |
| 脚本 | ウィニー・ホルツマン |
| デイナ・フォックス | |
| 撮影 | アリス・ブルックス |
| 出演 | シンシア・エリヴォ |
| アリアナ・グランデ | |
| ジョナサン・ベイリー | |
| イーサン・スレイター | |
| ボーウェン・ヤン | |
| マリッサ・ボーディ | |
| ミシェル・ヨー | |
| ジェフ・ゴールドブラム | |
| ベサニー・ウィーヴァー | |
| コールマン・ドミンゴ | |
| 鑑賞環境 | 映画館(IMAX・字幕) |
| 評価 | 7点 |
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