「るろうに剣心 最終章 The Final」映画レビュー “チャンバラを超越したケレン味は楽しいけれど……”

るろうに剣心final 2021☆Brand new Movies

るろうに剣心final

評価: 7点

Story

かつては“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心だが、新時代の幕開けとともに、斬れない刀=逆刃刀<さかばとう>を持ち穏やかな生活を送っていた。最狂の敵・志々雄真実が企てた日本転覆の計画を阻止するため、かつてない死闘を繰り広げた剣心達は、神谷道場で平和に暮らしていた。しかし、突如何者かによって東京中心部へ相次ぎ攻撃が開始され、剣心とその仲間の命に危険が及ぶ。果たして誰の仕業なのか?何のために?それは、今まで明かされたことの無い剣心の過去に大きく関係し、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていく。 Filmarksより

映画『るろうに剣心 最終章 The Final』本予告 2021年4月23日(金)公開
究極のクライマックス――。「るろうに剣心」のすべてがここに。剣心にとって最も大事なエピソード。「これをやらずに、るろうに剣心は終われない」と覚悟を決めた製作陣が挑んだファン待望の最終章!剣心に復讐するため、東京を総攻撃するシリーズ最恐の敵・…more

 

Review

原作者の和月伸宏が自他共に求めるアメコミファンであるが故に、今作は原作の段階からアメコミ色が強い。
僕自身は、アメリカン・コミックスそのものへの造詣が深いわけではないが、アメコミ映画は大好き。その自分の根本的な趣向が週刊ジャンプ連載当時からの「るろうに剣心」ファンに至らしめているのだろうと、今となっては思う。

そして、この実写映画化シリーズも、原作漫画が持つ趣向をビジュアル的にはきっちりと再現しているからこそ、MCUをはじめとするアメコミ映画に最も近い日本映画になり得ていると思える。
原作ファンとしても、アメコミ映画ファンとしても、それはとても嬉しいことではあるが、だからこそ口惜しい部分も大いに感じるシリーズであり、この最新作においてもその惜しさは拭いきれなかった。

公開を心待ちにしていた、というわけではないけれど、実は密かに期待はしていた。
原作ファンとしては、今作で描かれる“人誅編”も無論実写で観てみたかったし、このエピソードを「二部作」で描くことは、映画の連なりとして効果的に作用すると思えたからだ。

原作のストーリー展開を正確に映し出すとしたら、「前編」となるであろう二部作のうちの一作目は、見紛うことなき「悲劇」で幕を閉じるであろうことが一原作ファンとしては想定できた。
そして、圧倒的「絶望」によって文字通りのどん底に叩き落されたヒーローが、再び立ち上がることができるのか、否か。
それは「後編」として控える次作に向けての極上の前フリであり、それこそアメコミ映画の最高峰「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」から「エンドゲーム」に向けての連なりを彷彿とさせるに違いなかった。

が、しかし、実際に映し出されたこの二部作“前篇”のストーリーテリングは、その想定から大きく外れていた。
そもそも、今作においては一言も「前編」という表記はなく、「The Final」と銘打たれていたわけだから、当たり前といえば当たり前なんだが、今作は原作漫画で言うところの“人誅編”の「前編」という位置づけではなく、あくまでもシリーズの「完結編」として、この一作のみで物語の終幕まで描ききってしまった。

ヒロインの○○シーンを今か今かと身構えながら、クライマックスに臨んでいた者としては、「アレッ?」と肩透かしを食らったことは否めない。
原作の“あの展開”をすっ飛ばしてしまったことは、敵役である雪代縁のキャラクター性や、彼の動機・目的を踏まえても、整合性と説得力に欠けた。
また、ストーリー展開が性急に感じてしまうと同時に、ドラマ的にあまりにも味気ないものになってしまっているとも感じた。
その展開に絡むあまりにも漫画的すぎる原作の或るキャラクター造形やギミックを実写で表現することは困難だったのかもしれないが、ヒロインの「悲劇」に伴うヒーローの「絶望」の様は、このエピソードのみならず、「るろうに剣心」という物語の根幹に関わる部分だけに絶対に描くべきだったと思う。

 

ただその一方で、現在の日本映画きってのエンターテイメントシリーズとしてしっかりと楽しめたことも確かだ。
“チャンバラ”というよりは“ワイヤーアクション”のテイストが強い縦横無尽のアクションシーンは、これまでのシリーズ作同様にケレン味に溢れ、素直に楽しい。
日本の時代劇というよりも、亜細亜全体の異国情緒や文化をミックスしたような世界観も、原作漫画の副題にもある“明治剣客浪漫譚”に合致していると思える。

そして、これも今映画シリーズを大ヒットに至らしめた大きな要素であるが、キャスト陣のキャラクターへのマッチング抜群だったと思う。
今作においては、やはり雪代縁に扮した新田真剣佑がちゃんとハマっていた。父親(千葉真一)譲りの体躯の素晴らしさと美貌は、大いに心をこじらせたシスコン武闘派キャラクターを見事に体現していた。

また、神木隆之介演じる瀬田宗次郎を再登場させて、剣心(佐藤健)と背中合わせて戦わせる映画オリジナルシーンは、同じくジャンプ漫画の映画化作品「バクマン。」の主演コンビでもあり、そういうメタ的要素も含めて胸熱だった。
出演しないのだろうなと勝手に高を括っていた伊勢谷友介演じる四乃森蒼紫もちゃんと登場させてくれたことも、なんだか嬉しかった。

 

というように、なんだかんだ言いつつも娯楽映画として堪能している。
そして、「The Beginning」と銘打たれた次作は、言わずもがな、アニメファンのみならず、時代劇ファンからも評価の高いOVA「追憶編」の実写化という位置づけなのだろう。
そういうことならば、この「完結編」を無理くりにでも一つにまとめて、敢えて先に公開したことも理解はできる。
おそらくは、「The Beginning」の撮れ高が想定よりもずっと良かったものだから、公開順を逆にしたんじゃないかとすら思えてくる。

未見のOVAも鑑賞してみつつ、ひとまず次作を楽しみにしておこう。

 

「るろうに剣心」
エンドロールが終わり暗転、“一抹の期待”を覚えた次の瞬間に“何も起こらず”、「ワーナー・ブラザーズ」のロゴマークが映し出されて、少し落胆した。もし、この映画にアメコミ映画定番の「続編あるぜ!」的なカットが付加されていたなら、僕の満足感と高揚…more
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Information

タイトル るろうに剣心 最終章 The Final
製作年 2021年
製作国 日本
監督
大友啓史
脚本
大友啓史
撮影
石坂拓郎
出演
佐藤健
武井咲
新田真剣佑
青木崇高
蒼井優
伊勢谷友介
土屋太鳳
神木隆之介
有村架純
江口洋介
鑑賞環境 映画館
評価 7点

 

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