「エノーラ・ホームズの事件簿」映画レビュー “今この時代にシャーロックの妹が生まれた意味”

2020☆Brand new Movies

評価: 7点

Story

1884年、イギリス。世界は大きく変わろうとしていた。16歳の誕生日を迎える朝、エノーラ・ホームズ (ミリー・ボビー・ブラウン) が目を覚ますと、彼女の母親 (ヘレナ・ボナム=カーター) が突如行方不明になっていたのだ。謎めいた暗号のような遺留品を残したままどこへ行ってしまったのか、その理由はわからず明白な手がかりは見つからずだった。そして自由奔放な子供時代を過ごしてきたエノーラは、突然兄のシャーロック (ヘンリー・カヴィル) とマイクロフト (サム・クラフリン) に面倒を見られる事になり、2人によって一流の婦人に育てるための花嫁学校に追いやられそうになるのだった。しかし兄たちの意志に反して、エノーラは母親を探すためにロンドンへ飛び出すことに。 Fimarksより

『エノーラ・ホームズの事件簿』予告編 - Netflix
16才のエノーラ・ホームズは、行方不明になった母親を探すうち、兄シャーロックに負けない名探偵っぷりを発揮。さらには、ある若き貴族を取り巻く危険な陰謀をも暴くことに。ミリー・ボビー・ブラウン、サム・クラフリン、ヘンリー・カヴィル、ヘレナ・ボナ…more

 

Review

秋の夜長、赤ワインを傍らに、ある意味において“現代版”の「シャーロック・ホームズ」を鑑賞。

“現代版”と言っても、ベネディクト・カンバーバッチの「SHERLOCK」のように現代のロンドンを舞台にしているわけではなく、コナン・ドイルが描いた19世紀後半のシャーロック・ホームズがそのまま登場する。
異なるのは、シャーロック・ホームズ本人が主人公ではなく、彼の“妹”が主人公であり、彼の“母親”がキーパーソンであるということ。

シャーロック・ホームズに“妹”がいたなんて話は聞いたことがないけれど、彼だって人の子、いくら架空のキャラクターであろうとなんだろうと、当然“母親”は存在する。もしかしたら“妹”もいたのかもしれない。
ただ、もしそういう家族構成だったとしても、原作小説の中で、“母親”や“妹”のキャラクター描写がピックアップされただろうか。
おそらくは、ただ一文節で紹介される程度だったのではなかろうか。
少なくとも、シャーロック本人にも勝るとも劣らない頭脳明晰なキャラクターとしては描かれることはなかっただろう。と、思う。

なぜそう思うのか?
それは、“そういう時代”だったからだ。

今この時代に、シャーロック・ホームズ本人を脇に追いやって、彼の“妹”と“母親”を「女性」の代表として、映画世界の中で雄弁に語らせる意義。それもまた、“そういう時代”だからこそようやく成立し得たテーマだったと思う。
だからこそ、原作同様に19世紀後半のロンドンを描いたこの作品が、“現代版シャーロック・ホームズ”と思えたのだ。

重要なのは、登場人物たちを現代人として描き直すのではなく、あくまでも当時の時代設定のままで、当時の社会の中で生きる人間として描いていることだ。
それは、女性蔑視や性格差に対する問題意識や発言や行動が、何も現代社会に限って巻き起こっているものではないというメッセージに他ならない。
100年前から、いやもっと前から、女性たちは、与えられるべき正当な権利と、認められるべき自由な生き方を主張し続けているのだ。

聡明な母は、「ひどい未来を残すのは耐えられなかった」と、愛する娘が16歳になったタイミングで姿を消す。
それはまさに、過去から現代に至るまで、世界中の女性たちが胸に秘め続ける思いではないか。

 

この意欲的で独創的な映画もまた「Netflix」映画である。
Netflixで独占配信される作品には、社会的、思想的、政治的なメッセージをダイレクトに強くぶつけてくる作品が多い。
映画作品としては、その主張の強さが時にアンバランスに感じる時もあるけれど、それも、この時代が必要とせざるを得ない表現方法であり、手段の一つなのではないかと思う。

 

Information

タイトル エノーラ・ホームズの事件簿 ENOLA HOLMES
製作年 2020年
製作国 イギリス
監督
ハリー・ブラッドビア
脚本
ジャック・ソーン
撮影
ジャイルズ・ナットジェンズ
出演
ミリー・ボビー・ブラウン
サム・クラフリン
ヘンリー・カヴィル
ヘレナ・ボナム・カーター
アディール・アクタル
フィオナ・ショウ
フランシス・デ・ラ・トゥーア
ルイス・パートリッジ
デヴィッド・バンバー
スーザン・ウォーコマ
鑑賞環境 インターネット(Netflix・字幕)
評価 7点

 

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画像引用:https://www.netflix.com/browse

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