「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」映画レビュー “兎にも角にも、煉獄さんForever”

鬼滅の刃2020☆Brand new Movies

鬼滅の刃

評価: 7点

Story

蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちは、次なる任務の地、《無限列車》に到着する。 そこでは、短期間のうちに四十人以上もの人が行方不明になっているという。 禰豆子を連れた炭治郎と善逸、伊之助の一行は、鬼殺隊最強の剣士である《柱》のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎と合流し、闇を往く《無限列車》の中で、鬼と立ち向かうのだった。 Filmarksより

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Review

封切り3日間で46億円超の興収に至ったとか、映画館のタイムスケジュールが埋め尽くされているとか、あいも変わらずこの国の“ブーム”というものは節操がない。
とかなんとか思いつつも、公開されたその週末に自分自身子供二人を連れ立って、3,800円支払って、46億円の一端を担っているんだからざまあない。

ポップカルチャーに傾倒する者の一人として、社会現象まで巻き起こすような“ブーム”にはとりあえず乗ってみる主義なので、コロナ禍の最中、暇に乗じて手は出してみた。
ただし、ファーストインプレッションでは正直ピンと来ず、某配信サービスでアニメ版の第一話を観たきりしばらく放置してしまっていた。
これは今となっても変わらないが、正直なところもっと面白い漫画やアニメは山程あると思うし、週刊少年ジャンプの作品に限っても、「鬼滅の刃」に至る系譜の上には忘れがたき名作がひしめいている。

とはいえ、この作品が巻き起こすムーブメントはやはり大したものであり、それは子供と暮らしていると本当によく分かる。
小学三年生の長女と、幼稚園年長の長男が、揃って“鬼滅”にハマっていく様を目の当たりにして、一つのエンターテイメントとして「これは大したものだ」と率直に感じた。
そして、その子供たちが突き進む“沼”に引き込まれるように、僕自身も再びアニメシリーズを見進め、妻が借りてきた原作にも手を付けた。

そうして、いささかの抵抗もなく、封切りのタイミングでこの劇場版を鑑賞した次第。

まず印象的だったのは、地方の映画館としてはまれに見るほどに混んでいたこと。
前述の通り、節操がない“過密”なタイムスケジュールにも関わらず、その目論見通りにちゃんと席が埋まっていたことには、他の作品をないがしろにされた映画ファンとしての不満を通り越して、素直に感心した。

コロナ禍によって苦慮し続けているであろう映画館にとっては少なからず“救い”になっただろうし、このムーブメントが映画館に再び足を運ばせる起爆剤になるのであれば、それに越したことはないと思える。(劇場の隣の席に座ったオバさんが“ガチ勢”で、子どもたち以上に泣き笑いしていたことが気になってしまったけれど)

 

だらだらと前置きが長くなったが、そろそろ映画作品としての感想を。

結論から言うと、泣いた。そりゃあ、泣く。
週刊少年ジャンプ全盛期に、そこで連載されてきた数多くの漫画作品と共に育った者として、この漫画雑誌のテーマである「友情」「努力」「勝利」をどストレートに反映したこの漫画世界が織り成す物語に熱くならないわけはなく、二人の子を傍らに置いて鑑賞しつつも、涙は溢れた。

アニメシリーズを通じて今作を成功に至らしめたものは、アニメーションとしてのクオリティの高さだったと思う。
原作漫画も魅力的な作品であることは認めるが、作画力は決して「上手」な部類ではないだろう。
アニメ作品では、その作画のクオリティを補完し、ハイスペックなビジュアルに昇華させている。そのことが、老若男女問わず幅広い層を熱狂させた要因となっているのは間違いない。
文字も読めない幼児から、中年世代に至るまで、「全集中 水の呼吸!」なんて嬉々として真似をしてしまうのは、ひとえにこのアニメーションのアニメーターや声優たちの功績だろうと思う。

 

ただその一方で感じた決して小さくないマイナス要因も今作は孕んでいる。

それは、ストーリーテリングにおける“フリ”の弱さと、“説明ゼリフ”の多さだ。
クライマックスに向けたキャラクターたちの対決や葛藤が大きくなればなるほど、本来そこで生じるべき大きなエモーションのための“前フリ”が欠如してしまっていることを感じずにはいられないし、重要な感情表現においてキャラクターたちに心情を語らせすぎるのは、原作漫画自体が持つウィークポイントだと思う。

一人ひとりのキャラクターは味方も敵方も含めてやはり非常に魅力的だと思う。
が、しかし、その魅力的なキャラクターたちの熱い言動に対して、前フリやバックグラウンドの描き方がやや希薄に思え、彼らの決断や行為が極めて唐突に感じてしまうことは否めない。

例えば、この劇場版“無限列車編”では、本来の主人公・竈門炭治郎以上に、柱の剣士・煉獄杏寿郎が絶大な存在感を示すわけだが、彼の人生模様と、新たに共闘する炭治郎ら若き剣士たちとの関係性を深める描写がやはり希薄過ぎたと思う。
もちろん煉獄本人の回想シーンによって彼の過去は断片的に伝えられはするけれど、そこに炭治郎や伊之助らが介在することはなく、実際彼らの関係性が深まるようなくだりも無い。
よくよく考えてみれば、この映画の中で描かれるストーリーは、炭治郎らと煉獄杏寿郎がほぼ初対面の状態から突如として死闘に至る極めて短い時間を描いているわけで、絆が深まる余裕などそもそもない。
そうなると、ラストのあの文字通りに“熱い”顛末も、どうしてもエモーショナルに欠け、鼻白んでしまう。

 

そういう弱点を感じつつも、それでも泣いてしまったことは事実だし、このエンターテイメントに理屈ではない魅力が溢れていることは否定しない。
この無限列車編、そして煉獄の死そのものが、この漫画世界全体の前フリであることを期待しつつ、この先の展開も子どもたちと一緒に楽しみたいと思う。

 

Information

タイトル劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
製作年2020年
製作国日本
監督
外崎春雄
原作
吾峠呼世晴
作画監督松島晃
声の出演
花江夏樹
鬼頭明里
下野紘
松岡禎丞
日野聡
平川大輔
鑑賞環境映画館
評価7点

 

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