「トランス・ワールド」映画レビュー “面倒な撮影手法などなくともタイムパラドックスは描けるわけで”

トランス・ワールド2020☆Brand new Movies

トランス・ワールド

評価: 7点

Story

人里離れた森の中――夫とドライブ中にガス欠になり、ガソリンを買いに行った夫を待つサマンサ。森の中のキャビンに迷い込んだサマンサは、同じように車のトラブルで立ち往生しているトムに遭遇する。最初はトムを警戒していたサマンサだが、彼の親切さに安心し、一緒に夫を待つことに。するとキャビンにもう一人、ジョディと名乗る女が現れる。彼女は恋人と強盗をした後で、どうしてキャビンにたどり着いたのかがわからない。寒さと飢えから、3人は協力し合い、次第に打ち解けていく。しかし、助けを呼びに行こうと森を彷徨っても、キャビンに戻ってきてしまい、事の奇妙さに気付く3人。さらには、3人それぞれが認識している現在地や時代が全く違うことに驚愕する――。
そしてまた、衝撃の事実が明らかになっていく――彼らは一体なぜこの場所にたどり着いたのか? Amazonより

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Review

手塚治虫や藤子・F・不二雄のSF短編にありそうなサスペンスとホラーとエモーショナルがギュッと詰まった“小話感”が小気味いい。
舞台設定から編集作業の詰めの粗さに至るまで、“低予算感”は否めないけれど、それ故の“掘り出し物感”もあり、満足度は高かった。

キャストも少人数で地味だが、やはりクリント・イーストウッドの息子であるスコット・イーストウッドが印象的。
ハンサムではあるが、独特の何だか“嘘くさい”風貌が、今作のキャラクター性に合致している。
善人か?悪人か?と中々判別がつかない雰囲気が、序盤の緊張感を高めていたように思う。

偶然にも、今年指折りの話題作「TENET テネット」に続いて“タイムパラドックス”ものを続けてみてしまった格好。
映画の規模やクオリティのレベルは比べ物にならないけれど、アイデアと表現方法の工夫で、タイムパラドックスを巡るサスペンスとドラマを生み出す映画的な巧みさは、決して勝るとも劣らないものだったと言えよう。

まさしく“親殺しのパラドックス”を逆説的に描いた顛末が導いた未来はどうなったのか?
果たして「彼」の存在はどうなってしまったのか?

“切なさ”も含めて、そういうことをつらつら考えていくのも、この手の映画の醍醐味だろう。

 

Information

タイトルトランス・ワールド ENTER NOWHERE
製作年2011年
製作国アメリカ
監督
ジャック・ヘラー
脚本
ショーン・クリステンセン
ジェイソン・ドラン
撮影
トーマス・M・ハーティング
出演
サラ・パクストン
スコット・イーストウッド
キャサリン・ウォーターストン
ショーン・サイポス
 クリストファー・デナム
鑑賞環境インターネット(Amazon Prime Video・字幕)
評価7点

 

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