「アイリッシュマン」映画レビュー “Netflixの猛威!映画の「軸足」は変わらざるを得ないのか”

アイリッシュマン2020☆Brand new Movies

アイリッシュマッ

評価: 9点

Story

アイルランド系アメリカ人で全米トラック運転手組合”チームスターズ”とマフィアに関わり、”ジ・アイリッシュマン”と呼ばれたフランク・シーランの生涯が振り返られる。現在、老人ホームに入ったフランク・シーランはマフィアにかかわった日々を思い出す。 Wikipediaより

『アイリッシュマン』最終予告編
"ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ出演、マーティン・スコセッシ監督で贈る大作『アイリッシュマン』。20世紀の名立たる悪人たちと関係していた元軍人の暗殺者フランク・シーラン。彼の視点から描かれるのは、今なお未解決とされる労働組合指導者ジミー・ホッファの失踪事件。巨大な組織犯罪と、その背後でうごめく...

 

Review

一言、凄い。
「映画」という“表現”と“歴史”が内包する「過去」と「現在」と「未来」を濃縮したような凄い映画だった。
この映画の“凄さ”は幾層に折り重なっていて、とてもじゃないが一度の鑑賞のみで語り尽くすのは困難に思う。

マーティン・スコセッシ監督が、自身のフィルモグラフィーにおける盟友(+名優)たちを集めて、ある種“懐古的”に製作されたギャング映画かと思っていた。
無論、その想像通りに、老いたデ・ニーロがスコセッシ作品で再びギャング役を演じるだけだったとしても、映画ファンとしての興奮は揺るがず、きっと良作になっていたに違いない。
だがしかし、この映画作品が孕むテーマとクオリティは、そんな安直な想像を容易に飛び越えて、遥かに高尚で、圧倒的に面白い映画の境地を見せてくる。

“マーティン・スコセッシの新作で老いたロバート・デ・ニーロがギャング役を演じている”
そのこと自体に間違いは無い。が、そこに映し出されたものは、決して単なる懐古主義などでは留まるわけもない“新しい映画表現”そのものだった。

CG技術によって俳優の実年齢を大幅に変えて若返らせたり、老け込ませたりする“映像処理”の手法自体はもはや珍しくもなんともないことだけれど、今作のそれは、“映像処理”などという表面的な範疇を遥かに超えて、監督の演出と、俳優の演技に密接にリンクする「表現」として昇華されている。
そこで感じられたものは、ビジュアル的に違和感が有るとか無いとかのレベルではない。
稀代の名優たちが、スコセッシ監督が言うところの「CGによるメイク」を施されることにより、それぞれのキャラクターの人生を圧倒的な演技力で表現しきっていることに他ならない。

きっと、この映画を観た若い俳優たちは、驚きと共に、“恐れ”と“喜び”で、震え上がったに違いない。
なぜなら、避けられぬ老いと共に、一線から引いていたに見えた偉大な名優たちが、映画の新しい表現方法により再び新たな可能性を得たことを目の当たりにしてしまったのだから。
それは俳優としての機会損失の危機であると同時に、映画史の過去と未来が現在進行系で入り交じる、より多様性を孕んだ新しいキャスティング時代の幕開けに他ならないと思える。

そしてこの新しい映画表現が「実現」したフィールドが、「Netflix」という新時代のメディアであることも、当然ながら看過できない。
今の時代、通常の映画興行では“3時間半”に及ぶ長尺で、“ギャング映画”を製作し、公開するなんてことはほぼ不可能だろう。
巨額の製作費的にも、観客側のニーズ的にも、インターネットによる世界同時配信だからこそ成立した映画企画だったことは明らかで、この作品の“勝利”をきっかけとして、世界の映画人たちの“軸足”は益々変遷していくに違いない。

映画ファンの一人として、映画を「映画館」で鑑賞することの幸福は決して揺るがない、と思いたいけれど、本当に面白い映画を観ることができる「場所」が変わってしまうのならば、僕たち観客も“軸足”を変えざるを得ないだろう。

 

Information

タイトルアイリッシュマン The Irishman
製作年2019年
製作国アメリカ
監督マーティン・スコセッシ
脚本スティーヴン・ザイリアン
撮影ロドリゴ・プリエト
出演ロバート・デ・ニーロ
アル・パチーノ
ジョー・ペシ
レイ・ロマノ
アンナ・パキン
ボビー・カナヴェイル
スティーヴン・グレアム
ハーヴェイ・カイテイル
鑑賞環境インターネット(Netflix・字幕)
評価9点

 

画像引用:https://www.netflix.com/title/80175798

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