久しぶりに、古い日本映画の骨太なサスペンスが観たくなり、週末の深夜のレンタルショップで今作のDVDを手にとった。
深夜の鑑賞で、183分という上映時間はさすがに長かった。
物語の題材も想像よりもセンセーショナルなものではなく、どちらかというとありきたりな部類のものだったので、淡々としたモノクロ映像の中で次第にまどろんできた。
しかし、ストーリーの展開以上に、映し出される登場人物たちの言動や、時代の風俗描写に惹き付けられる部分があり、そういう部分がこの映画の「力」なのだろうと思った。
時に緻密に、時に大胆に描き出される映画作りの空気感は、まさにこの時代の日本映画の力強さだと感じる。
ただ細かい展開を見ると、もう少しサスペンスとして面白味を持たせることもできたのではないかと思う。
10年という年月の間に絡む人間模様をもっと密に描くことができれば、それぞれの人間性や葛藤が更に如実に伝えられたのではないかと思った。
いまひとつ、それぞれの人間の感情が響いてこなかったことは、映画の性質上勿体なかった。
ただし繰り返しになるが、この大長編を独特の空気感で描き出すことができたこの時代の日本映画のパワーは物凄い。
現在、これほどの規模の大作映画の製作となれば、安易な商業主義に走ってしまうことは必至であり、今作のような特徴のある作品には成らないと思う。
監督の映画づくりに対する気概、三國連太郎をはじめ出演俳優たちの鬼気迫るほどの熱演、本来映画製作の根幹となるべきそれらの要素がきっちりと存在するこの映画の「存在感」が凄い。
「飢餓海峡」
1965年【日】
鑑賞環境:DVD
評価:7点
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