ダニエル・クレイグが“ジェームズ・ボンド”に扮する新007シリーズの第二作目。
前作「カジノ・ロワイヤル」の完成度がとても高かったので、必然的に続編への期待は高まっていた。
そしてもって、今作「慰めの報酬」も極めて完成度の高いエンターテイメントだった。「賞賛」に値する。
やはり、ダニエル・クレイグが良い。
ショーン・コネリーやロジャー・ムーアが演じた往年の「007シリーズ」に愛着がある世代にとっては、無骨でスマートさがないクレイグのボンド像は、お気に召さないという評価も聞く。
が、敢えて「未完成」のジェームズ・ボンドを描き直し、そこにダニエル・クレイグというワイルドさと危うさを秘めた俳優を配したことは、一つの趣向として圧倒的に正しい。
そして、そこにはこれまでのシリーズにはなかったシリアスさとリアリティがある。
「殺しのライセンス」というものが実際にあったとして、それを与えられる者に絶対的に必要なことは、「自らの感情をひたすらに抑えつける」ということだろう。
ただし、そんなことが端から出来る人間などいるわけがない。たとえいたとしても、そんな人間は“ヒーロー”として決して魅力的でないと思う。
“ライセンス”を与えられ、そこに求められる“絶対性”を極限の状態で徐々に越えていくプロセスこそ、“ジェームズ・ボンド”というキャラクターに対するリアリティだと思う。
その点で、この新シリーズはとても真摯に「007」という題材を捉えていると思うし、映画としての質の高さを誇っている。
「007/慰めの報酬 Quantum of Solace」
2008【英・米】
鑑賞環境:映画館
評価:9点
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