
評価: 8点
Story
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の出来事から4年、大人になったピーター・パーカーは、愛する人たちを守るために彼らの記憶から自らの存在を消し、孤独に生活していた。ニューヨークでスパイダーマンとして、街の人々を守り、犯罪と戦う日々に全力を尽くしている。人々のスパイダーマンへの期待が高まるなか、そのプレッシャーが自分の存在そのものを脅かし、命に関わる驚くべき身体的変異を引き起こす。同時に、街では不可解な犯罪が頻発する事態が発生。“親愛なる隣人”に、かつて直面したことのない大きな脅威が迫っていた──。 Filmarksより
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Review
「Underoos!(坊や!)」
という、トニー・スタークの呼びかけと共にMCUの世界に降り立ったトム・ホランド版スパイダーマンは、これまでの登場作すべてにおいて、“ルーキー”としての位置づけが強いキャラクターだった。
それは決してトムホ版スパイディのキャラクター性を否定したり、揶揄したりするものではなく、フェーズ3からフェーズ4、そして現在のフェーズ6に至るMCUの大河の中で、彼に与えられた使命であり、役割であったと思う。
このキャラクターは、その使命を完璧に果たしてきたからこそ、MCUにとっても手放しがたいキャラクターとなり、過去のシリーズ、いや別宇宙のスパイディたちと同様に、世界中のファンから愛される存在へと文字通り“成長”してみせたのだと感じる。
トムホ版スパイディの単体第4作となる本作は、そんなMCUにおける“ルーキー”だったスパイダーマンが、MCUによって与えられていた役割やしがらみからついに一歩踏み出し、タイトルが示す通り「Brand New Day(まっさらな一日)」を迎える一人のヒーロー、そして一人の青年としての等身大を描き出したエモーショナルな作品に仕上がっていた。
前作「ノー・ウェイ・ホーム」は、ヒーロー映画を愛する者、特に「スパイダーマン」映画を愛してきた者たちにとって、あまりにも奇跡的で、特別な“宝物”のような作品であったことは言うまでもない。
ただそれ故に、当の主人公である“ピーター1”にとっては、様々な側面において、苦く、傷ましいストーリーテリングを強いられた作品であったことも間違いないだろう。
これまでトニー・スタークの庇護のもとでアベンジャーズの一員として戦い、メイおばさんやハッピーら“大人”たちの精神的なサポートを受けながらヒーローとして活躍してきたMCUのピーター・パーカーだったけれど、彼らを失ってしまったことで、彼はスパイダーマンとしても、一人の人間としても真価を問われる。
絶望的な孤独感と、絶体絶命の危機は、別次元から現れた二人のスパイディと、支え続けてくれた恋人と親友によって脱することができたけれど、ピーター・パーカーは彼らを守るため今ある日常との決別を選ぶ。
前作のエンディングで示されたものは、守られてきた“ホーム”の消失であり、新たな物語への旅立ちだった。
本作は、まさにその新しい物語のはじまりであった。
新たに自作したスーツに身を包んだスパイダーマンが、街の悪を叩くために奔走する。
自らの孤独感を覆い隠すように、人との関わりに敢えて距離を置くかのように、彼はひたすらにニューヨークを駆け巡っていた。
それは、トムホ版スパイディでは、初めて地に足をつけて描き出された“親愛なる隣人”としてのヒーロー像だったのではないかと思える。
そして、私たちはこのスパイダーマンの魅力の本質に気付かされる。それは極めてシンプルで、あまりにも根幹的なことだった。
すなわち、トム・ホランドが演じるスパイダーマン、もといピーター・パーカーは、他のどの世界のピーター・パーカーよりも、「いいやつ」であるということだ。
無論、それは彼が登場したMCUの過去作でも描き出されていたキャラクター性であるけれど、本作で初めてピーター・パーカーという一人の人物像が明確にフォーカスされたことにより、より明確に表れたのだと思う。
スパイダーマンになったからピーター・パーカーがヒーローなのではなく、ピーター・パーカーがスパイダーマンになったから、彼はヒーローなのだ。
このロジックこそが、トムホ版スパイディの真の魅力であり、それを描き出せたからこそ本作はシリーズの真骨頂となり得ていると思えた。
スパイダーマンとしての、真の意味での「覚醒」の様を描くストーリーテリングは、ようやく彼に与えられたスパイダーマン映画としての「王道」であり、高揚と感動を同時進行でもたらしてくれる。
バリエーションに富んだアクションシーンの連続は、どの場面にも「個性」があり、一寸たりとも飽くことなくエンターテインメントを推進している。ネタバレのため個々の明言は避けるが、様々な強力キャラクターたちとの対決や共闘も、本作の娯楽性をシリーズ屈指のものにしている。
と同時に、トム・ホランド&ゼンデイヤ夫妻をはじめとする俳優たちの演技が織りなす人間ドラマが、胸に迫る作品にも仕上がっていた。
作品単体としては、非常に“詰め込みすぎ”な要素も確かに感じる。それは、一時期の隆盛から低迷を続けるMCU全体の潮流の中で、本作に課せられた役割の重さにも起因することだろう。
ただ、そういったフランチャイズの中に存在するからこそ生じているしがらみに対しても、本作は果たすべきことを果たし、その上でスパイダーマン映画としての確固たる価値を築いていると思う。
ニューヨークの市井の人々の営みを淡々と捉えた美しいエンディングを見送りながら、まだまだトム・ホランドのスパイダーマンが観たいと心から思えた一作だった。

Information
| タイトル | スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ SPIDER-MAN: BRAND NEW DAY |
| 製作年 | 2026年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | デスティン・ダニエル・クレットン |
| 脚本 | クリス・マッケナ |
| エリック・ソマーズ | |
| 撮影 | ブレット・ポウラク |
| 出演 | トム・ホランド |
| ゼンデイヤ | |
| セイディー・シンク | |
| ジェイコブ・バタロン | |
| ジョン・バーンサル | |
| トラメル・ティルマン | |
| マイケル・マンド | |
| マーク・ラファロ | |
| ライザ・コロン=ザヤス | |
| 声の出演 | ナオミ・ワッツ |
| 鑑賞環境 | 映画館(IMAX・字幕) |
| 評価 | 8点 |
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