評価:
7点Story
冬のシカゴ。大司教が全身を刺されて殺され、青年が逮捕された。事件を担当する野心に満ちた弁護士は、やがて恐るべき“真実”を知るが……全米ベストセラーを映画化したミステリーの秀作。エドワード・ノートンの見事な演技が一躍注目され、映画ファンの注目を集めたことでも有名。クライマックスは誰も予想できない結末が待っている―――。 Filmarksより
Review
1990年代後半のハリウッド映画で、スター俳優が主演するような注目度の高い作品は大概鑑賞しているはずなのだが、1996年公開の本作については、なぜか今まで未鑑賞だった。
結論から言うと、法廷劇を主体としたサスペンス映画として、“本来”は時代を超えても色褪せない良作だったと思う。
ただし、致し方ない一つの要素が、1996年公開当時にあったはずのインパクトを大いに低減させてしまっていることは否めない。
それは、すなわち“エドワード・ノートン”という俳優の存在である。
主演のスター俳優リチャード・ギアの存在を、物語のキーパーソンを演じる“新人俳優”の怪演が、複層的な意味合いで食っている。
当時、押しも押されぬハリウッドスターの一人であったリチャード・ギア演じる主人公が颯爽と活躍する法廷サスペンスを期待していたほど、映画初出演の“新人俳優”が見せたあまりにも衝撃的な演技とストーリー展開に面食らったことは間違いないだろう。
しかし、それから30年近くの年月が経ち、エドワード・ノートンという俳優が名優としての地位を確立してしまった今となっては、当時の衝撃をそのまま味わうことは不可能だった。
初登場シーンの時点で、そのあどけない表情を見つつも、「ああ、こいつは怪しい」と、現在の真っ当な映画ファンであればどうしても感づかずにはいられない。
故に、その表情にまんまと引っかかってしまう売名行為にご執心な主人公の弁護士が、どうにも無能に見えてしまう。
リチャード・ギアの俳優としての特性や、主人公のキャラクター設定も手伝って、この弁護士そのものが薄っぺらい人間に見えてしまい、映画的な推進力の低下につながっていたことも否定できない。
そういった不可避なメタ的要素も含めたマイナス要因はあったものの、サスペンス映画としての緊張感を終始保持した作劇は優れていたと思う。そして、分かっちゃいたけど、エドワード・ノートンの怪演による衝撃も十分堪能できた。
主人公の軽薄な言動や存在感も、ストーリー展開を踏まえると、明らかに意図的なものであり、それを演じたリチャード・ギアは、ある意味適役だったのだろうとも思える。
売名家+プレイボーイの高慢な弁護士を、ハマり役で演じたリチャード・ギアが、プライドと自信を打ち砕かれ、所在なく裁判所の裏口で一人佇むラストカットこそが、本作が孕むもう一つの「衝撃」だったのかもしれない。
Information
タイトル | 真実の行方 PRIMAL FEAR |
製作年 | 1996年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | |
脚本 | |
撮影 | |
出演 | |
鑑賞環境 | |
評価 |
Recommended

コメント