おヒサシネマ!「君の名は。」“独りよがりの極地、揺るがないエモーション”

久々鑑賞☆おヒサシネマ!

評価:  9点

Story

千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。「来世は東京のイケメン男子にしてくださーーーい!!!」そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、戸惑いながらも、念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。「不思議な夢……。」一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだー。彼らが体験した夢の秘密とは? Filmarksより

 

Review

「独りよがり」な映画である。
普通この言い回しには、多分に否定的な意味が含まれているものだが、新海誠というアニメーション監督が生み出す作品においては、それは必ずしも当てはまらない。
「独りよがり」だからこそ、表すことができる「美学」と「美意識」。それがこの監督の作品の唯一無二の魅力だと思う。

他に類を見ないあまりにも美しいアニメーション表現が、やはり素晴らしかった。
ただ、この監督の過去作には、その“美しさ”が際立つあまり、ただただそれに自己陶酔しているだけに見える作品があったことも否めない。

特に前作「言の葉の庭」は、むせび泣くように降り続ける雨に包まれた街並みが美しい映画ではあったけれど、そこに描き出された物語は、ひたすらに“青臭い”ばかりで、まったく感情移入することが出来なかった。
それは、独善主義的に、自らの美意識を追求する新海誠作品ならではの、孕まざるを得ない“あやうさ”だったようにも思う。
新海誠の名を知らしめた名作「秒速5センチメートル」にも、その“あやうさ”はあった。
そして、今作においてもその側面が無くなったわけではない。
主人公たちの言動はやはり青臭く、ストーリーテリングには都合のいい自己満足感が溢れている。

でも、今作においては、その青臭くて、独りよがりな描写そのものが、何にも代え難いエモーションとして、満ち満ちている。

“星降る夜”という数多の表現作品の中で、“美しきもの”として表されてきたものが孕む圧倒的な神々しさと絶対的な脅威。
それは、美しすぎるものが併せ持つ荘厳さと残酷さの象徴だったように思う。
そして、その美しさと残酷さは、そのまま主人公二人の“若さ”に直結する。
若く、未成熟な彼らは、安直で直情的であまりに危うい。でもだからこそ、何よりも美しくて、エネルギーに溢れている。

その美しいエネルギーは、“流星”のそれを遥かに凌駕し、神にも抗う。
それこそが、この映画が最も描き出したかったことなのだと思える。

「過去」は、どうやったって変えられない。
身近な交通事故から“3.11”のような天変地異に至るまで、ありとあらゆる悲劇を目の当たりにしてきている人々は、そのことをよく知っている。
ただし、その「理」を、強引だろうが、無謀だろうが、ご都合主義的だろうが、人物の“感情の力”一つだけで時に覆してしまえることも、「映画」に許されたマジックだ。と、思う。

世界が終わるその間際だろうと、ついに果たせた焦がれた人との邂逅においては、状況を忘れて、その人と話し触れ合うことだけに没頭する。
「そんなことをしている場合か」という非難は、あまりに無意味だ。
若者たちのその無垢な「感情」と「行動」こそが、世界を救う唯一の「方法」だと、この映画は伝えているのだから。

繰り返しになるが、独りよがりで、青臭い映画であることは間違いない。
この種のストーリーを繰り広げるのであれば、辻褄が合わない点もあまりに多過ぎたと思う。
これだけ素晴らしい作品なのだから、ディティール面でもう少し他者の介入があったならば、もっと絶対的な名作になっていたのでは。と、思わなくはない。
けれど、思い直す。
この肯定と否定が渦巻く不完全さこそが、この作品が表現することの価値なのだろう。
若い二人が、町よりも、世界よりも、何よりも先ず「君」のことを思って、闇雲でもなんでも全力で何かに向かって走る。
そのエモーションに勝るものなど、実際無いのかもしれない。

 

 

Information

タイトル 君の名は。 YOUR NAME.
製作年 2016年
製作国 日本
監督
新海誠
脚本
新海誠
撮影
声の出演
神木隆之介
上白石萌音
長澤まさみ
市原悦子
成田凌
悠木碧
島﨑信長
石川界人
谷花音
てらそままさき
鑑賞環境 BS
評価 9点

 

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