「タイトル、拒絶」映画レビュー “女の切なさと悲しさ、すべてを体現する伊藤沙莉”

スバラシネマReview

評価:  9点

Story

雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながら喋くっているオンナたち。 カノウ(伊藤沙莉)は、この店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。オンナたちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がキツイとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。 店で一番人気の嬢・マヒル(恒松祐里)が仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。みんな賢くて可愛らしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれないのに・・・。」 ある時、若くてモデルのような体系のオンナが入店してきた。彼女が入店したことにより、店の人気嬢は一変していった。その不満は他のオンナたちに火をつけ、店の中での人間関係や、それぞれの人生背景がガタガタと崩れていくのだった・・・。 Filmarksより

伊藤沙莉主演!山田佳奈監督 「タイトル、拒絶」 予告編 11/13より全国順次公開!!!
出演:伊藤沙莉恒松祐里 佐津川愛美 / 片岡礼子 / でんでん森田想 円井わん 行平あい佳 野崎智子 大川原歩モトーラ世理奈 池田大 田中俊介 般若監督・脚本 山田佳奈プロデューサー:内田英治 / 藤井宏二 キャスティングプロデューサー:伊…more

 

Review

東京のど真ん中の、猥雑で、ありとあらゆる欲望に塗れた薄汚れた雑居ビルの風俗店の一室で、切なく蠢く女性たちの感情が、乱暴なまでに生々しくべっとりと描きつけられる。
その様は、果たして阿鼻叫喚の地獄絵図のように進展していくけれど、このような人間模様は、きっとこの街のそこかしこで当たり前のように繰り広げられていることに過ぎないのだろう。

格差是正だとか、ジェンダーレスだとか、サステナビリティだとか、美辞麗句を並び立てることがこの社会は大好きだけれど、実際のこの世界は、女性が一人生きていくにはあまりにも息苦しくて、あまりにも醜い。

出張風俗店の息苦しい待機部屋を燃やしたって、憎い男性店長を刺したって、たとえこの街がドカンと爆発したって、明るい未来なんて見えるはずもない。
モラハラやDVに耐え忍んで、ほんの小さな愛にしがみついてみたところで、その次の曲がり角では理不尽で卑劣な暴力の餌食になるかもしれない。

なんて過酷。なんて醜悪。

それでも、それなのにだ、雑居ビルの屋上から見える狭い空の燃えるような夕焼けを見て、思わずお腹がすいてくる。なんて切ないんだろう。なんて悲しいんだろう。

「伊藤沙莉」目当てで鑑賞して、やっぱり伊藤沙莉が素晴らしかった。
あの絶妙なビジュアル、表情の作り方、そして声質、この女優の演技とそのたたずまいは、文字通りに味わい深く、どんなに他愛もないシーンであっても観ていて飽くことがない。

そして伊藤沙莉演じる主人公を翻弄し続ける風俗嬢の面々を演じた女優たちもみな素晴らしかった。
ベテラン嬢を演じた片岡礼子以外は、本作の撮影時点ではそれほど名の通っていない若手女優ばかりだったと思うが、表情や立ち振る舞いの実在感がことごとくリアルで、殆どデリヘル店の一室で展開されるこの映画の小さな空間を見事に彩っていたと思う。(特に劇中バチバチにやり合う恒松祐里と佐津川愛美は、この一年間の朝ドラ出演で知った女優だっただけに、そのギャップが印象的だった)

自分のしょうもない人生にドラマなんて期待しないし、そんなものにタイトルを付けるなんて反吐が出る。
無記名の大学ノートに、日々の“つらみ”をただ刻みつけるかのように、無理やり笑って、無理やり泣いて、ゴミ溜めのような今日を、彼女たちは生きていく。
そんな決して綺麗事ではない女性たちの生き様が、時にどうしもようなく、美しい。

 

Information

タイトル タイトル、拒絶
製作年 2019年
製作国 日本
監督
山田佳奈
脚本
山田佳奈
撮影
伊藤麻樹
出演
伊藤沙莉
恒松祐里
佐津川愛美
片岡礼子
森田想
円井わん
行平あい佳
野崎智子
般若
でんでん
池田大
田中俊介
モトーラ世理奈
鑑賞環境 インターネット(Netflix)
評価 9点

 

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