おヒサシネマ!「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」“無数の名も無き者たちが手繰り寄せた無慈悲な光に心震える”

スバラシネマReview

評価:  10点

Story

スター・ウォーズ最新作 『エピソード4/新たなる希望』の直前を描く、アナザー・ストーリーが誕生。銀河全体を脅かす帝国軍の究極の兵器<デス・スター>。その設計図を奪うための反乱軍の極秘チーム<ロ―グ・ワン>に加わった女戦士ジンは、希望を取り戻すため、仲間と共に97.6%生還不可能なミッションに挑む。 Filmarksより

 

Review

星をも呑み込む絶望的な“光”が、主人公の二人を包み込む──
シーン単体を捉えれば、それは見紛うことなきバッドエンディングであろう。
しかし、彼らが成したことの意味とその帰着を理解している我々にとっては、筆舌に尽くしがたいエモーションを覚えずにはいられない。

“前日譚”であるドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」を観終えて、すぐさま本作を10年ぶりに再鑑賞した。
10年前、本作の後の顛末(Episode Ⅳ)を知っていたからこそ生じたエモーションが、本作に繋がる前のドラマを経て、更に特別な情感と共に広がり、真の完成を得たように思える。

改めて、この「ローグ・ワン」という物語が、「スター・ウォーズ」の正史において異質であり、故に唯一無二の価値を放っていることを確信した。
本作で、ジン・アーソやキャシアン・アンドーら“ローグ・ワン”の面々が成したことは、決して「勝利」ではなかった。彼らは、何かを得られたわけではないし、何かを確信できたわけでもないだろう。

「誰か受け取ったかな?」
「ええ 誰かに届いてる」

主人公の二人がラストシークエンスで交わす言葉は、とても儚く、か細く、不確かなものだった。でも、そう発することができたことこそが、彼らの人生において初めて得た「希望」の一端だったのだと思える。

それは、「キャシアン・アンドー」の2シーズンに渡って描き出された、あまりにも地味で飾り気のない“暗躍”の悲哀と矜持、その終着点でもあった。
「正義」の名のもとに、闇の中で手と心を汚し続けてきた者たち。「希望」という言葉すら存在し得なかった任務と犠牲の連続の果てに、ようやく目にした“光”。
傍から見れば、それはあまりにも無慈悲で絶望的にも見えるけれど、キャシアンにとっては初めて自分の行為の「意味」を知ることができた輝きであったに違いない。

「情報」の送信を終えた後、打ち倒した帝国の長官クレニックに対して、恨みを持つジンはとどめを刺そうとするが、キャシアンはそれを制止する。
初鑑賞時、これはキャシアンのヒロイックな慈悲だと思えたけれど、実際はそれだけではなかった。
彼は自分たちの任務の目的が達せられていることを正確に理解していた。そしてそれ以上の殺生が意味を成さないことも。それは、目的遂行のため殺人を含めた数々の汚れ仕事を全うしてきた情報将校としての矜持であり、ようやくそれから解放されたことへの自らに対する宣言だったのだと思う。

その他にも、“前日譚”を経たからこそ増幅された本作の魅力は尽きない。

前述の悪役、クレニック長官の人物造形もその一つだろう。銀河帝国において絶大な権力を振るう様が「キャシアン・アンドー」でも描き出され、同時に中間管理職としての危機感と悲壮感も如実に表現されていた。
善玉であるローグ・ワンの面々同様に、“任務”において後がなかったのはクレニックも同様だった。故に自身が苦心の末に完成にこぎつけたデス・スターの射程が自らに向いているということを、諦観の眼差しとともに見つめた彼の最期の表情にも、より深いドラマ性が生じていた。

そして、名も無き者たちの戦いを描いた本作において、“名も無き者”とは必ずしも本作で命を捧げたローグ・ワンの面々のみを指すものではないことも、ドラマシリーズを経た上で本作が孕んでいた重要なファクターだった。
キャシアンと同様に、闇深い任務に命を賭したすべての人物たちの思いが、この物語に結実していると感じる。
感情を排して情報戦を指揮したルーセン・レイエルをはじめ、元老院議員として苦闘したモン・モスマ、“駒”として任務を全うしたクレヤやヴェル、ビックス──「希望」とすら呼称できない何かを必死に追い求め、手繰り寄せようと生き抜いたすべての名も無き者たちの魂が本作には息づいている。

そしてその名も無き者たちの継承は、レイア姫が「希望です」とはっきりと発するラストカットに至るまで続いていた。
黒装束の闇と恐怖の化身に追われながらも、兵士たちがただひたすらに一枚のディスクを繋いでいくラストシーン。混乱する宇宙船内の数センチしか開かなかった扉、その開いた数センチこそが、「希望」の道筋になるというSWシリーズ全体を通じた映画的マジックが生み出されていた。

まさに小さな針の穴を通すような吹けば飛ぶような危うい任務の連続が、とてつもなく大きな歴史の転換へと繋がることをあらわす真摯で見事な物語の帰着に、心が震えた──

 

──ただし、ただしだ。
ローグ・ワンが生み出した「希望」が、「Episode Ⅳ」においてルーク・スカイウォーカーが成した反撃の一撃に直結したことは確かだろう。そして、その帰着として銀河帝国の崩壊に繋がったことも疑いの余地はない。
でも、その先も、変わらず反乱軍もとい新共和国と銀河帝国の残党は争い続けていることを、後のシリーズ作を通じて、私たちは知ってしまっている。

果たして、彼らが追い求めた「正義」の正体とは何だったのか。名も無き者たちが賭した命に、本当の「意味」が生まれるのは、もしかするとまだ先なのかもしれない。
それは、SWの世界観に留まらず、現実世界との境界線をも超えた命題であろう。

そういう作品世界を超えた“問い”を生み出したことも、現実世界の混沌を如実に反映した「キャシアン・アンドー」の完結編として相応しい。

 

スバラシネマex「キャシアン・アンドー」(シーズン1)“今この世界で最も重要な「決意」をひたすらに描く渋すぎるSWドラマ”
混迷する世界は今、強権で傲慢な政治の支配力が日に日に強まっている。 世界の権力者たちは、大衆の生活苦や格差を狡猾に利用し、私たちの“足元”を縛り付けることで、選択の余地を狭め、判断する気力を削ぎ、彼らの「正義」へとコントロールしている。
スバラシネマex「キャシアン・アンドー (シーズン2)」“曖昧な「正義」の境界線上の暗躍を描き出した前日譚の前日譚”
2シーズンに渡った“前日譚”の“前日譚”は、主人公キャシアン・アンドーが、もたらされた「情報」の手がかりを得るために再び基地を出発するという、あまりにも地味で、飾り気のないシーンで完結した。そのあまりにも潔い終幕に、思わず呆気なさを感じてしまうと同時に、深い納得感と感慨が生じていることに気づいた。

 

Information

タイトル ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ROGUE ONE A STAR WARS STORY
製作年 2016年
製作国 アメリカ
監督 ギャレス・エドワーズ
脚本 クリス・ワイツ
トニー・ギルロイ
撮影 グレイグ・フレイザー
出演 フェリシティ・ジョーンズ
ディエゴ・ルナ
ベン・メンデルソーン
ドニー・イェン
マッツ・ミケルセン
アラン・テュディック
チアン・ウェン
リズ・アーメッド
フォレスト・ウィテカー
ジミー・スミッツ
ジュネヴィーヴ・オライリー
アリスター・ペトリ
ベン・ダニエルズ
ヴァリーン・ケイン
ジョナサン・アリス
イアン・マッケルヒニー
ファレス・ファレス
シャロン・ダンカン=ブルースター
ダンカン・パウ
鑑賞環境 Web配信(Disney+・字幕
評価 10点

 

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