
評価: 7点
Story
越後から帰ってきた寅さんは、生みの母・菊が訪ねて来たことを知らされた。再会を拒みつつ、さくらに諭されて涙の親子対面。しかしそれも束の間、結婚話で親子喧嘩になってしまった。その後、寅さんは旅先の東海地方で津軽から紡績工場に出稼ぎにきている純真な少女・花子と出会った。数日後、柴又に戻った寅さんは、とらやで働いている花子を見て大喜び。そんなある日、突然花子が寅さんのお嫁さんになりたいと言い出し、とらやは天手古舞い。そこへ花子の身元引受人が花子を引き取りに来た。 Filmarksより
第7作 男はつらいよ 奮闘篇 予告篇寅さんの母・お菊(ミヤコ蝶々)が、久しぶりに柴又を訪れる。そこへ寅さんが帰郷し、さくらと共に、お菊の宿泊先の帝国ホテルに向かうが、子供のように愚行を重ねる寅さんに、お菊は愛想を尽かす。旅に出た寅さんは、沼津で東北なまりの少女、太田花子(榊原…more
Review
2026年の映画初め。4年連続で「男はつらいよ」でのスタートと相成った。
正月期間中のぽっかりと空いた余暇時間に、さあ映画でも観ようかと思い立ったとき、“寅さん”の映画世界の空気感が、妙にしっくりと自分の心持ちにフィットするようになった。
自分自身が歳を重ねていることも多分に影響していると思われるが、年の瀬からの気忙しさや、新年を迎えたことへの一抹の焦燥感のようなものを、一旦抑えて、気持ちをリセットすることを無意識に欲していて、その心境に「男はつらいよ」特有の繰り返される映画的なリズムや郷愁が、合致しているのだろうと思える。
車寅次郎を中心とした人間模様や、繰り広げられるストーリーは、毎度変わり映えしないのに、それでも楽しく観られ、可笑しくも、感動させられるのは、本作が持ち続ける普遍性が、時代も環境も超えて、我々日本人のそういう心に染み付いているからなのだろう。
また、個人的な趣向を踏まえると、昔の日本映画や当時の風俗を記録した映像に映り込む街並みや、建物内の雰囲気を見るのも好きで、全国津々浦々を巡る寅さんの映画世界は、その格好の対象ともなっている。
特に本作においては、数々のロケーション描写も素晴らしかった。
沼津駅のプラットフォームの階段を上るヒロインの後ろ姿、青森の沿岸の物悲しい駅に降り着く妹さくら──情緒的な数々の“画”が、ドラマの郷愁を駆り立てていた。
店先の看板や、店内のメニュープレート、ポスターなど、様々な小道具や美術にも“時代”を感じさせ、それらが醸し出す空気感が、この喜劇の哀愁をより一層膨らませていたと思う。
一つひとつのシーンは、この時代に確実に存在した風景であり、その中で息づく寅さんの存在感を通じて、その当時を生きる人々の存在感も感じることができる。
実はその特別ではない人々の存在感、生きていた証みたいなものを感じることこそが、私がこの映画世界に触れたくなる最大の理由なのかもしれない。
そういった観点も踏まえて、ヒロインのキャラクター造形にも言及したい。
これまで観た過去作のいくつかのヒロイン像には、取ってつけたようなおざなりなキャラクター描写もあったけれど、榊原るみ演じる本作のヒロイン太田花子には、確固たる個性があった。
それは単に彼女が軽度の知的障害を持っているという設定の表層的なものではなく、津軽の貧しい漁村で育ったバックボーンや、集団就職で東京の紡績工場に送られた当時の社会的背景など、このヒロイン個人にとどまらず、当時の様々な人間模様の要素が織り込まれた人物描写がなされていたと思う。
そこには、少し抜けていて可愛いという表面的なヒロイン像を超えた魅力的な人間描写が備わっており、寅次郎が彼女に惹かれた理由もまさにそういう要素に裏打ちされたものだったと思える。
これで「男はつらいよ」シリーズの鑑賞も7作目。たった7作目で、まだまだ先は長いけれど、自分自身の歳の重なりと共に深まるであろう世界観の魅力を引き続き堪能していこうと思う。
Information
| タイトル | 男はつらいよ 奮闘篇 |
| 製作年 | 1971年 |
| 製作国 | 日本 |
| 監督 | 山田洋次 |
| 脚本 | 山田洋次 |
| 撮影 | 高羽哲夫 |
| 出演 | 渥美清 |
| 倍賞千恵子 | |
| 榊原るみ | |
| 光本幸子 | |
| ミヤコ蝶々 | |
| 田中邦衛 | |
| 犬塚弘 | |
| 柳家小さん | |
| 前田吟 | |
| 三崎千恵子 | |
| 太宰久雄 | |
| 佐藤蛾次郎 | |
| 森川信 | |
| 笠智衆 | |
| 鑑賞環境 | インターネット(U-NEXT) |
| 評価 | 7点 |



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