「ブゴニア」“複雑化極まる世界の中で、本当の盲信者は誰なのか?”

2025☆Brand new Movies

評価:  10点

Story

⼈気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル(エマ・ストーン)が、何者かによって誘拐された。犯⼈は、ミシェルが CEO を務める会社の末端社員のテディ(ジェシー・プレモンス)と、彼の従弟のドン(エイダン・デルビス)の 2 ⼈組。陰謀論に⼼酔する 2 ⼈は、ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙⼈だと信じ込み、彼⼥に今すぐ地球から⼿を引くよう要求してくる。彼らの⾺⿅げた要望を⼀蹴するミシェルだが、状況は思わぬ⽅向へと加速していき、荒唐無稽かに思えた誘拐劇は誰も予想しえなかった衝撃の終末へと突き進んでいくーー。 Filmarksより

映画『ブゴニア』本予告 | 2026年2月13日(金)全国公開
本年度アカデミー賞® 作品賞含む4部門ノミネート!監督:ヨルゴス・ランティモス 『哀れなるものたち』×製作:アリ・アスター 『ミッドサマー』× 製作:『パラサイト 半地下の家族』 製作陣人気絶頂のカリスマ経営者ミシェルを誘拐したのは、彼女を…more

 

Review

ヨルゴス・ランティモス+エマ・ストーン──この二人による映画は、いつだってとんでもない。
過去3作品への信頼度の高さから、ほぼ事前情報なしで鑑賞したこの“得体”の知れない映画は、最後の最後までその「正体」をひた隠し、愚かで滑稽なこの世界をシニカルに笑い飛ばした。

個々人の怒りと鬱積、そして絶望に埋め尽くされたこの世界は、それぞれが振り上げた拳の下ろしどころを見失ったまま、行き場のないジレンマに苛まれているように感じる。
ミツバチが減っている原因を、害悪な農薬のみに照準を合わせて、それを生産する製薬会社を糾弾することは、ある意味簡単だ。
けれど実際には、全世界規模の環境破壊やダニやウイルス、そして人間の生活や文化の変化など、様々な要因が複合的に絡まり、結果としてミツバチが減少している。
ミツバチの減少に限らず、ありとあらゆる問題や紛争、それに伴う悲劇は、日に日に複雑化する世界が、さらに複雑化する社会環境の中でがんじがらめになる中で生じているということを、このところ特に痛感する。

そしてその“複雑化”を隠れ蓑にするように、物事の本質を有耶無耶にして、矮小化し、見て見ぬふりをしていることも、この世界の真実であるように思う。
多角的な視野を求められる反面、では何を信じれば良いのか分からず、つい目の前の事実から目を背けてしまう。
それが、今この世界の大多数の人間の公然のスタンスになってしまっているように思う。

本作で怪優ジェシー・プレモンスが演じる“テディ”は、まさにそんな複雑化する社会の中で、自分が信じる“真実”のみを盲信する、アブない、イタすぎる最底辺の男として描き出される。
対峙するエマ・ストーンが見せる“振る舞い”に同調するように、鑑賞者の我々は、この男の哀れさと、愚かさを疑わない。
薄汚れてよれたスーツで精一杯の正装をして、冷静に紳士然と見せつつ、「お前は宇宙人だ、地球から出ていってほしい」とのたまうこの男の言動には、終始一貫して失笑を禁じ得ない──。

が、しかしだ。この男に対する我々観客の冷笑こそが、真の盲信であったことを、この映画は最終ラウンドの強烈なカウンターパンチによって浴びせてくる。
目の前で繰り広げられている物事を一側面で捉え、思考すべきあらゆる要素から目を背けていたのは、スクリーン上の“テディ”ではなく、我々自身であったという衝撃。

なんて痛烈、なんて悪趣味。だが同時に、とんでもなくエキサイティング。この感覚は、私の愛する藤子・F・不二雄や手塚治虫のSF短編作品にも通じる。
そこには、軽妙で露悪的でありながらも、見えていなかった世界観が一気に解放されるカタルシスが溢れていた。

私自身を含めて、大半の人が困惑しっぱなしの映画だったろうが、それ故に最高の作品の一つとなり得ていると確信する。
少なくとも私は、唖然とするような衝撃的な結末を終えた後、エンドロールを眺めながら、さらにはシアターを後にしたエレベーターの中に至るまで、ブラックな笑いが止まらず、何度も吹き出してしまった。

現代社会に巣食う愚かな人間の象徴に思えていた“テディ”の言動のすべてが、実はすべて“正しかった”という映画内の事実に対して、じわじわと生まれる可笑しみを感じると同時に、深い恐怖も禁じ得ない。
それは自分自身を含めた人類という種に対する絶望感だった。

 

「哀れなるものたち」“脳味噌をほじくり返されて、頭痛なんて消え去る”
ひと月ほど前に、映画館内に貼られた特大ポスターを目にした瞬間から「予感」はあった。 何か得体のしれないものが見られそうな予感。何か特別な映画体験が生まれそうな予感。 大写しにされた主演女優の、怒りとも、悲しみとも、憂いとも、感情が掴みきれないその眼差しが、そういう予感を生んでいた。
「憐れみの3章」“絶対的支配による陶酔を抱き締めて、終わりなき奇怪なダンスを”
或る週末、とてもおぞましくて、気味悪い程に支配的で、あまりにも意味不明な映画を観た。 エンドロールを呆然と見送りながら、殆ど何も理解できていないまま、かろうじて一つの事実には気付いた。 上映時間の164分間、私は暗闇の中で、困惑と好奇が入り交じる感情と共にニヤつきを絶やすことが無かったということに。
「女王陛下のお気に入り」<9点>
絢爛豪華なイングランドの王室を舞台にしつつも、べっとりと全身に塗りたくられた“何か”の臭いが漂ってくるようだった。その臭いの正体は、汚物交じりの泥なのか、吐しゃ物なのか、生臭い体液なのか、それとも嫉妬と愛憎に塗れた“怨念”なのか。いずれにし…more

 

 

Information

タイトル ブゴニア BUGONIA
製作年 2025年
製作国 アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ
監督 ヨルゴス・ランティモス
脚本 ウィル・トレイシー
撮影 ロビー・ライアン
出演 エマ・ストーン
ジェシー・プレモンス
エイダン・デルビス
スタヴロス・ハルキアス
アリシア・シルヴァーストーン
鑑賞環境
評価

 

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