「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」“堂々巡りの先、それでも世界は彼に新たな「視界」を求め続ける”

2026☆Brand new Movies

評価:  7点

Story

舞台は、神秘の星パンドラ──地球滅亡の危機に瀕した人類はこの星への侵略を開始。アバターとして潜入した元海兵隊員のジェイクは、パンドラの先住民ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、人類と戦う決意をする。しかし、同じナヴィでありながらパンドラを憎むアッシュ族のヴァランは、人類と手を組み復讐を果たそうとしていた。パンドラの知られざる真実が明らかになる時、かつてない衝撃の“炎の決戦”が始まる! Filmarksより

 

Review

新年早々、膨大な映像的物量へ身を投じた。
まず大前提として、本作が映画作品として面白いか、面白くないかという主観以前に、その映画体験への価値は揺るがないと思う。
「アバター」の最新作が公開されたのであれば、期待感や世間的な評価などは一旦脇に置き、できるだけスクリーンクオリティの高いシアターに赴き(私はIMAXレーザー3Dで鑑賞)、古くからの映画ファンからすると少しギョッとするような鑑賞料金を支払って、身を投じるべき───という、自分自身への強迫観念にも似た思いも携えながら、魅惑の惑星“パンドラ”へ三度降り立った。

まず言及せざるを得ないのは、ストーリーテリングの大筋に対して、過去二作を踏まえた“堂々巡り”の印象を拭えないということ。あいも変わらず、パンドラの先住民族“ナヴィ”たちと、あからさまに馬鹿で横暴な地球人たちとの争いがひたすらに繰り返される。

この“堂々巡り”感は、前作「ウェイ・オブ・ウォーター」でも感じられたウィークポイントだった。ただ、前作においては、第一作『アバター』から13年もの歳月を経ての続編であったことを踏まえ、映画世界の諸々の環境設定を新しい鑑賞者にも理解しやすくするための配慮であると理解できた。
また、海の部族“メトカイナ族”を登場させることで、海中表現を中心とした新しい映像世界の構築と映画体験の提示を、御大ジェームズ・キャメロンは成していたと思う。

だが、本作においては、舞台設定や映像表現においても、前作の二番煎じであることを否めなかった。
「ファイヤー・アンド・アッシュ」というタイトルからは、“炎”を映像的な核とした新部族との邂逅、そして新たな映像世界の構築を期待した。しかし蓋を開けてみると、新登場の敵対部族“アッシュ族”は、火山灰に覆われた荒涼地帯に定住しているという設定にとどまり、映像的展開において目新しさは乏しかった。

前作の海中表現から一転して、火山地帯を舞台にした、これまでに見たことがない悲壮感や絶望感に溢れた映像世界を見たかったところだったし、それはこのアバターチームを持ってすれば十分に実現できたことだったろう。

新キャラであるアッシュ族の族長“ヴァラン”は、狂気を孕んだ“サイコガール”感が印象的な悪役だったので、彼女のキャラクター造形をもっと活かして、炎を崇拝するこの部族の異常性や、過去の歴史を踏まえた彼らの“怒り”をちゃんと描き出してほしかった。そうすれば、シリーズ第三作目としてパンドラの世界観をさらに重層的に深められたのではないかと思える。

他にも、シリーズを通じた悪役であるクオリッチ大佐の言動が、息子であるスパイダーとの関係性や、“雇用先”であるRDA社との距離感に伴い、ブレて一貫性を欠いていたり、主人公の次男坊“ロアク”は前作に引き続き無鉄砲すぎて見ていてしんどく感じたり、とストーリー展開やキャラクター描写において、雑然とした印象が終始拭えなかった。

そこでふと御大のフィルモグラフィーも含めて俯瞰してみると、ジェームズ・キャメロンという映画監督は、魅力的な女性キャラクターの造形が抜群に優れている反面、男性キャラクターの造形にはあまり興味がないのだろうなと感じずにはいられない。
古くは、サラ・コナーから始まり、エレン・リプリー、ヘレン・タスカー、ローズ、そして本シリーズのネイティリに至るまで、強く、それ故に苦闘する映画史に輝く女性キャラクターは枚挙にいとまがない。
本作においても、主人公の娘“キリ”や“トゥク”、前述の“ヴァラン”や、メトカイナ族長の妻“ロナル”らの女性キャラクターは総じて魅力的に描き出されている。
その一方で、主人公“ジェイク・サリー”をはじめ、男性キャラクターは皆どこか類型的な造形になっていて、人間的な魅力の乏しさを感じてしまう。そのことが、ストーリー自体の推進力にも影響を及ぼしていることも否めないだろう。

つまるところジェームズ・キャメロンの作家性が、女性キャラクターに特化したものなのならば、本シリーズのストーリー展開そのものも、もっと“彼女たち”を主軸にしたものにしていって良いのではないかと思う。
シリーズは、この後も「4」から「5」へと2031年まで続くようなので、そういった方向性の転換も含めて、何とか軌道修正していってほしいものだ。

ストーリーに対して敢えて好意的に見れば、“堂々巡り”であったとしても、その愚かにも繰り返される対立や争いへのジレンマや憤りこそが、本シリーズを通じたジェームズ・キャメロンのメッセージなのかもしれない、とも思う。
現実世界の戦争や紛争への視線もそらさず、ナヴィ族も人類も含めた「生物」が孕む“業”を突き詰めようとするテーマ性だとも捉えられなくはない。

ただし、それならば映像表現の追求においては、常に世界の常識を刷新するようなセンセーショナルな「視界」へと、我々を連れて行ってほしい。
無論、彼以外の映画監督に対してそんなことは求めない。でも、ジェームズ・キャメロンがジェームズ・キャメロンである以上、世界はそれを求め続ける。

 

おヒサシネマ!「アバター」“色褪せぬ映画世界とまだ見ぬ可能性”
13年越しの続編「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」を観た翌日、本作を劇場公開以来13年ぶりに再鑑賞。まず感じたことは、一時代前のCG映画でありながら、そのビジュアルクオリティに対して殆ど“色褪せ”を感じなかったことだ。
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」“巨匠が追求し続ける映画表現の未来”
圧倒的な映画世界が、個々人の小さな価値観や人生観なんて一旦意識の範疇から弾き飛ばし、文字通りのその世界観に「支配」されている感覚を覚えた。 そうして映画世界の中を巡り巡って、最終的には、彼方に追いやられていたはずの鑑賞者一人ひとりの精神世界にたどり着く。

 

Information

タイトル アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ AVATAR: FIRE AND ASH
製作年 2025年
製作国 アメリカ
監督 ジェームズ・キャメロン
脚本 ジェームズ・キャメロン
リック・ジャッファ
アマンダ・シルヴァー
撮影 ラッセル・カーペンター
出演 サム・ワーシントン
ゾーイ・サルダナ
シガーニー・ウィーヴァー
スティーヴン・ラング
ウーナ・チャップリン
クリフ・カーティス
ブリテン・ダルトン
トリニティ・ブリス
ジャック・チャンピオン
ベイリー・バス
デヴィッド・シューリス
ケイト・ウィンスレット
鑑賞環境 映画館(IMAX 3D・字幕)
評価 7点

 

Recommended

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました