インサイドの漫画家

この国には「漫画家」という人がもの凄く沢山存在する。

今現在のトップランナーは誰か?ということを考えるとして、

敢えて漫画作品の性質に、陽と陰という区別をつけるならば、

陽のトップランナーは、「ONE PIECE」の尾田栄一郎。

そして、陰のトップランナーは、浅野いにおだと思う。

必ずしも彼の作品がダークサイドにまみれているということではなく、

この国に生きるよりナイーヴな「個人」のインサイドが、漫画作品に如実に反映され、

そのスタンスが確固たる文化となっているという点で、

「ONE PIECE」とは、最も正反対の位置にあるように思える。

今週の「情熱大陸」は、その浅野いにおを取り上げていて、

その中で本人が、「ONE PIECE」のことを引き合いに出したので、ふいにそういうことを思った。

何かの雑誌で顔は見たことがあったはずだったが、

ひょろっとした見るからにナイーヴそうな風体は、イメージ通りで、サッカーの中村俊輔に少し似ていた。

地元の中学の同窓会に出席する様が映し出され、

「世界の終わりと夜明け前」という作品に出てくる主人公の姿が、そのまま浅野いにお本人にダブっていた。

彼の描き出す漫画世界が、彼自身の不安定に渦巻く精神世界そのものの具現化であることを、改めて実感した。

その創作行為に対して、とても羨ましく思うと同時に、

相当しんどかろうな、と思う。

自分がやりたくても、出来なかったことを、素晴らしいクオリティーで見せてくれると、

とても高揚感を覚えると同時に、

自分自身の存在性に対して懐疑的になる。

毎週録画設定しているはずの「情熱大陸」が所定のフォルダに入っていなくて、引いた。

違うフォルダにきちんと録画されていて、上がった。

スルメソーメンをくちゃくちゃと噛みくだし、流し込む。

安い焼酎が染みる。

世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
(2008/10)
浅野 いにお

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