結婚をして、親から離れて暮らすようになり、
大きく変わったことの一つに、
「食」というものに対して、自分の生活の中で積極的に関わるようになったと思う。
余裕がある時や、自分一人しか家に居ない時は、普通に自分で料理をするし、
外で食べたり、何か食べ物を買って帰る時も、以前よりも真剣に何かしらを考えるようになった。
そういう自分の変化も影響し、「食」をテーマにした漫画を以前よりも興味深く読むようになったと思う。
いわゆる“グルメ漫画”というよりも、
日々の生活の中の一つの重要なファクターとして「食事」や「食べ物」を、
魅力的に、効果的に描いている漫画に惹かれる。
以前から買っている作品としては、よしながふみの「きのう何食べた?」が代表的なところ。
ゲイカップルの日常を描きながら、料理番組並みに日々の献立が事細かに描かれる。
他にも、特に「食」が主題ということではないけれど、
羽海野チカの「3月のライオン」や、渡辺ペコや、オノナツメの各作品においても、
何かしらを“食べる”様が、登場人物の重要な“仕草”として描かれているように思う。
前フリが長くなってしまったけど、そんな中でまた新たに買い始めた漫画が、
「深夜食堂/安倍夜郎」である。
もう単行本が8巻まで出ており、見てはいないがテレビドラマも主演小林薫という絶妙な配役ですでに第2シーズンが放映されているので、ファンの人からすれば「今更」というところだろう。
どうも絵柄に信用が置けなかった部分があったので、この1~2年は掲載誌の立ち読みを続けていた。
しかし、
食堂のくせに深夜0時~朝7時までの営業時間と、マスターが作れるものなら何でも出すという小粋な設定は、やっぱり面白い。
そして、その設定だからこそ生まれる人間ドラマは、決して華やかさはないけれど、様々な感情がじんわりと染み入ってくる。
どんなに強がっても、どんなに落ち込んでも、生きていく以上、
人間の営みに「食」が切っても切りはなせないということを、
「深夜」独特の時間の流れの中でさりげなく伝えてくる。
単行本の第一巻を買って読んでみて、やっぱり良い漫画だと思った。
「生きる」ことは「食べること」。
それはこれを食べないといけないとか、何かいいものを食べないといけないとか、
そういうことでは全然なくて、
人生の中でどれだけ「記憶」に残る食事を出来るかが、大切なことだと思う。
深夜食堂 1 (ビッグコミックススペシャル) (2007/12) 安倍 夜郎 |
きのう何食べた?(5) (モーニングKC) (2011/09/23) よしなが ふみ |
コメント