A面とB面の関係性

先日のBBQの日。友人から小説の文庫本を一冊借りた。

唐突に「読んでみて」と貸してくれたその小説は、

「イニシエーション・ラブ」(乾くるみ 著)

聞いたことがない作家だったので、訝しく表紙を見ながら、特別に興味もわかなかった。

おそらく、彼から借りなければ、一生読んでいなかったろう。

そう思うと、とても恐ろしい。

非常に、面白かったからだ。

背表紙の概要に、

「最後から二行目で、それまでと全く違う物語に変貌する」と書いてあった。

ラストのくだりで大どんでん返しを見せる小説は多々読んだが、

まさか最後の二行でそれはないんじゃないかと、さらに訝しく思いながらとりあえず読み進めた。

合コンで出会った男女が、恋に落ち、結ばれていく様を、

良く言えば瑞々しく、悪く言えば“ベタ”な展開で綴っていく。

読んでいて恥ずかしくなるほどの「純愛」とその「顛末」は、嫌いではないけれど、

言い換えれば、もうほんとに「フツーの青春小説」である……98%は。

残りの2%。そう宣言通りのラスト二行で、“すべて”を覆す。

いや、マイッタね。

ベタな展開も、フツーさも、すべてが計算され尽くした「文体」であるということに気付かされた時、

驚きに対する“快感”を一瞬感じる。

が、次の瞬間からは、怒濤の如く押し寄せてくる“ある恐ろしさ”にゾクゾクとする心の震えが止まらなくなった。

「必ず二回読みたくなる」

これも背表紙に書かれていたことだが、まさにその通り。

読み終えてすぐに最初から読み直したくなった。

そして、既にこの小説を読み終わっている「男」と語り尽くしたくなった。

最高に面白い。

98%の純愛に覆われた、男のための「恐怖小説」だ。

と、思う。これは映像化できない。

イニシエーション・ラブ (文春文庫) イニシエーション・ラブ (文春文庫)
(2007/04)
乾 くるみ

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98%純愛小説


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