忌々しい高揚感がおさまり切らない。
そんな、「映画」を観た翌日に、その原作小説の文庫本を衝動買い。
二日で読了した。
あの特異な映画世界が、そのまま文体で表現されているとは端から思っていなかったが、
想像以上に、映画は独自のアレンジを展開していたのだということを知った。
肝となる筋、主立った登場人物の言動は概ねそのままだが、
この「小説」と「映画」は、まったく「別物」と言ってしまってもいい。
暗く深い情念を突き詰めた小説は、見事だったと思う。
事前に基本的なストーリーも、重要なオチも知っている状態でありながら、
一気に読ませた文体の熱量は凄まじいと思える。
ただ、あの「映画」を観た直後では、描き出される展開、そのテンションに、
物足りなさを禁じ得なかった。
物語の衝撃度において、映画の方が仰々しく見せていたというわけではないと思う。
ストーリーのエグさについて言えば、小説の方がよっぽどエグく、救いが無かった。
ただ映画の方が、キャラクター描写の多様さと、物語の核心である“加奈子”の悪魔性が際立っていた。
そのことが、果てしない渇きと絶望を終始突きつけながら、
唯一無二の“エンターテイメント”を構築していたと思える。
詰まるところ、紛れもない問題作の映画化にあたり、
その原作に依存すること無く、より自由で、より爆発的に、光を与えてみせたということだと思う。
それは、とても狂気的で、とても幸福な映画化と言えよう。
もちろん、もし原作小説を先に読んでいたなら、
まったく逆に印象を持ったのかもしれないけれど。
果てしなき渇き (宝島社文庫) (2007/06) 深町 秋生 |
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