
小説の映画化作品というものは、多々あるけれど、この映画ほどその文体そのものが映像の中に浮かび上がってきそうなくらいに、世界観と心情が伝わってくる映画は無かった。
第三者によるナレーションを語り口とし、主人公たちにも「文体」を語らせることが、上記の印象を強くさせた要因だと思う。
素晴らしいのは、ステージが淡々と移り変わっていくようなカメラワークも含めて、その特異な表現方法の中で、どこまでも自然にそこに息づいている二人の俳優と女優の存在感だ。
ひたすらにつぶやくように一人の孤独な男の人生を体現していくイッセー尾形。風になびく黒髪にまで「表現」を感じさせ、二人の異なった女性を演じ分けた宮沢りえ。
この二人が揃わなければ、この作品は映画として完成しなかったと思う。
映画の中でも意識的に使われる「風」のように、静かに吹き抜けるような余韻を残す映画だった。
「トニー滝谷」
2004年【日】
鑑賞環境:DVD
評価:9点


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