「初恋」

2006☆Brand new Movies

 

“宮崎あおい”という女優は、「暗い表情」が巧い。最近こそ、某少女漫画の映画化や朝ドラで、ものすごく明るく快活な表情を見せ、女優としての魅力を更に幅広く伸ばしているが、やはり彼女の真価は、その憂いがちな瞳の奥にあると思う。

そう「暗い表情」と言っても、ただ伏目がちで陰に潜ればいいということではない。
映画の主役として存在する以上、そこには人間としての本当の意味での力強さを感じさせなければならない。そういう微妙で繊細な人間描写を、宮崎あおいは若くしてごく自然に表現できる希有な存在なのだ。

そんな希有な若き女優が、十代最後の出演映画に選んだ作品、それがこの「初恋」だ。

昭和史に残る大事件『3億円事件』の実行犯が、実は女子高生だったという着想を持って描かれるストーリー。一瞬、奇抜なサスペンス風かと思われるが、タイトルが示すとおりこの物語は“少女の初恋”と60年代の“若者たちの葛藤”を描いたビターな青春物語だ。

1960年代という時代に僕は生きていないので、その時代が実際どういう時代で、人々がどういう「感情」を抱き日々を生きていたかは、正直分からない。
若者たちが、何に怒り、何に悲しんで、権力に対峙したのか。その果てに、『3億円事件』を起こした「共犯者」たちが、得たかったものは何だったのか。そして、実際に得たものは何だったのか。映画を観終わっても、その部分が僕には最後まで分からなかった。

でも、時代における人間の怒りや悲しみなんてものはそういうもので、その理由がなんであれ、その時代に生きていない者には、理解できないだろうし、する必要もないのかもしれない。

ただ、何かを求め、生まれて初めて人に恋をし、共に何かを成し遂げたかった。そういう思いの純真さだけは、ひしひしと伝わってくる。

「初恋」
2006年【日】
鑑賞環境:映画館
評価:6点

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