これは、独裁政権支配下、闇に隠れて暗躍するショートボブで奇妙な仮面をつけた謎の男を描いた“ヒーロー映画”である。
キーパーソンであるヒーローはついに最後までその仮面をとることはなかった(ヒューゴ・ウィービングという確かな俳優を配しておきながら)。
だが、それこそが、この映画が伝えるべき要素なのだと思う。
男は己の運命と国を悲劇に陥れた復讐のために、仮面を被った。
しかし、復讐を果たすのは彼自身ではない。仮面の奥に秘めた“復讐”と“革命”の「意思」そのものが揺るぎない「正義」のもとに復讐を果たすのだ。
それがこの映画における、「仮面をとらせなかった」理由だと思う。
正体不明の男の「正体」は重要ではなく、彼の確固たる「意思」と「言動」、そしてそれによる「革命」そのものが、この映画の主人公であり、「V」の正体なのだろう。
ストーリーや環境設定の特異性から、「痛快ヒーローアクション」とは程遠い。
でも、この映画は、力強く、哀しい、新たなヒーローを人々の記憶に刻みつける。
「V フォー・ヴェンデッタ V FOR VENDETTA」
2005年【米・独】
鑑賞環境:映画館
評価:7点
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