スバラシネマex「マンダロリアン(シーズン3)」“「表情」ではなく、「生き方」そのもので描きぬいた異色のヒーロー譚”

スバラシネマReview

 

評価:  8点

Story

「エピソード6/ジェダイの帰還」のその後、ダース・ベイダーが去った後の時代を描いた「スター・ウォーズ」初の実写ドラマシリーズで“本物のスター・ウォーズ”と絶賛された「マンダロリアン」シリーズの最新作。シーズン2の後、『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』に登場した主人公のマンドーことディン・ジャリンは“マンダロリアン”の教義に反した事をアーマラーから批判される。シーズン3ではグローグーを膝に乗せ贖罪のための旅に出る…。 公式サイトより

 

Review

「マンダロリアン」がエンターテインメント作品として独創的だったのは、主人公がその素顔を晒さないことが基本的な“ルール”であり、それを作品世界の中で主人公自身が最優先の“信条”としていることだろう。
普通、主人公であるヒーローは、何らかのコスチュームを纏っていたとしても、葛藤や苦闘を描く重要なシーンにおいては、それを演じる俳優の表情をしっかりと映し出すものだ。そうしなければ、観客が感情移入することが難しく、心から熱狂することがしづらいからだ。

本作をクリエイトしたジョン・ファブローの過去作を例に出すならば、「アイアンマン」で、トニー・スタークがどんなに格好いいアイアンマンスーツを身に着けて大活躍したとしても、演じるロバート・ダウニー・Jrがほとんど生身で登場せず、表情も見せなかったとしたらどうだっただろう。
おそらく、いや間違いなく、「アイアンマン」シリーズはあれほどの人気作品になり得なかっただろうし、MCUの隆盛もあり得なかったに違いない。

ただ本作、特に本シーズンは、そういった固定概念を根本から崩してみせ、マンダロリアンもといディン・ジャリンというキャラクターを主人公として成立させてみせている。
もちろんキャスティングとして、ペドロ・パスカルというスター俳優は配されているけれど、それにも関わらず、過去2シーズン通じてこの主人公がその顔を露わにしたのは数シーンであり、この“シーズン3”に至っては、ついに全話を通じてペドロ・パスカルの顔を拝むことは無かった。

本シーズンで紡がれたのは、“マンダロリアン”という民族そのものの復権と葛藤、そして帰還の物語であり、このシーズン全体のテーマ性こそが、ディン・ジャリンが一度もマスクを外さなかった要因だと思える。
ディン・ジャリンが、改めて“マンダロリアン”である自身の矜持と信条を見つめ直し、旅を通じて絆を深めたグローグーをはっきりと「子」として受け入れ、共に生きていくことを覚悟したからこそ、本シーズンでは彼がマスクを外すシーンを一度も映し出さなかったのだろう。

そして、ドラマシリーズとして3つのシーズン(「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」
を含めれば3.5シーズンか)を重ねたことによる作品世界の成熟、キャラクターの成長と、絆の深化が、顔を晒さない主人公を成立させ、確固たるヒーロー像として「完成」に至らしめたのだと思える。
つまり、最後までマスクを外さない主人公を描きぬいたことが、逆説的にこのキャラクターの人間性を確立させ、彼の心情や見えない表情までを雄弁に物語っているのだ。
そしてそれは、この「マンダロリアン」というドラマシリーズが、顔を隠したヒーロー自身のアイデンティティを、直接的な“表情”ではなく、彼の“生き方”そのもので描き出したことの証明であろう。

主人公であるディン・ジャリンとグローグー、そしてボ=カターン・クライズや、ボバ・フェットら優れた脇役を生み出し、描き重ねながら、民族としての“マンダロリアン”の帰還を描いた3.5シーズンによって、「マンダロリアン」の物語はようやくスタート地点に立ったようにも感じる。
公開を控える劇場版を皮切りにして、マンダロリアンとグローグーの物語はさらに広がっていくことだろう。

 

スバラシネマex「マンダロリアン(シーズン1)」“SW版子連れ狼の冒険が始まる”
日本人の映画ファンならば誰しもが感じことだろうけれど、本作から彷彿とさせられるのは、ずばり「子連れ狼」であろう。
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シーズン1を観た時点で、本作が日本の時代劇「子連れ狼」のオマージュであることは明らかだったけれど、シーズン2ではそこにアメリカの“西部劇”の要素が強く注ぎ込まれた印象を受けた。
スバラシネマex「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」“仮面の奥に隠されていた顔面力に敵も視聴者も引き付けられる”
正直なところ、私はSWファンではありつつも、それほど“敬虔”ではないので、旧三部作で敵対するハットに雇われた賞金稼ぎの一人として登場した“ボバ・フェット”というキャラクターに対しても、愛着はまったくなかった。なぜモブキャラに近い敵キャラがここまで人気で、単体のドラマシリーズまで製作されるのか、理解が及んでいなかった。

 

Information

タイトル マンダロリアン (シーズン3) THE MANDALORIAN
製作年(放映期間) 2023/03/01 ~
製作国 アメリカ
監督 リック・ファミュイワ
レイチェル・モリソン
リー・アイザック・チョン
カール・ウェザース
ピーター・ラムジー
ブライス・ダラス・ハワード
脚本 ジョン・ファヴロー
デイヴ・フィローニ
ノア・クロア
撮影
出演 ペドロ・パスカル
ケイティー・サッコフ
エミリー・スワロー
カール・ウェザース
ブレンダン・ウェイン
ラティーフ・クラウダー
エイミー・セダリス
サイモン・カシアニデス
メルセデス・バーナード
ジャック・ブラック
リゾ
クリストファー・ロイド
ジャンカルロ・エスポジート
声の出演 タイカ・ワイティティ
鑑賞環境 Web配信(Disney+・字幕)
評価 8点

 

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