
評価: 9点
Story
ジャスティン・ケンプは、雨の夜に車を運転中に何かをひいてしまうが、車から出て確認しても周囲には何もなかった。その後、ジャスティンは殺人罪に問われた男の裁判で陪審員をすることになるが、やがて彼は「事件当事者」としての強迫観念に苦みだす。 Filmarksより
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Review
仕事上、企業や組織のブランディングのためのコピーライティングのような職務も担っている。
最近の案件で、「正義」というキーワードに言及したブランドステートメントを作成していたこともあり、本作が描き出した「正義」という人間の固定概念を軸にした事のあらましは、個人的にもとてもタイムリーで興味深く、何よりも映画として圧倒的に面白かった。
一人の陪審員の大波のように揺れ動く心中(しんちゅう)にぴったりと寄り添うように描き出されるストーリーテリングは、映し出される決して派手さのない画づくりに逆行するように、観ている者の感情と倫理観を大きく揺さぶり、収まらないさざ波のように見事な余韻を残している。
御年95歳のクリント・イーストウッドの、異様なまでに色褪せない映画人としての“濃ゆさ”に感嘆せずにはいられなかった。
作品のイントロダクションからは、往年の陪審員裁判映画の傑作「十二人の怒れる男」(1957年)のリメイクなのかとも思ったが、その予感は半分当たっていて、もう半分は全く異なっていた。
舞台設定や人間模様の構造自体は限りなく同作に近しいけれど、本作は“或る新解釈”を加えた新たな法廷映画の傑作に仕上がっていた。
現代社会における「正義」とは何なのか、また一人の人間が抱え全うでき得る「正義」とは。その本質と、表裏一体の人間の脆さや危うさを、陪審員に抜擢された一市民である主人公の心情を通じて描き切るストーリーテリングと映画表現が素晴らしかったと思う。
この世界のほぼすべての“普通”の人間は、一つの家族の中で、互いに支え合いながら生きることで精一杯だろう。私自身、幸いにも得られた小さな家族の幸せを望むだけの甲斐性しか持ち合わせていない。
だからこそ、本作の主人公が突きつけられた葛藤と苦悩には、終始身につまされた。
殺人事件の陪審員の一人として主人公が選んだ顛末には、鑑賞者の誰しもが困惑し、何よりも自分自身に対して悶々と問い続けることだろう。
主人公は一年前のあの日、酒を飲んだのか、飲まなかったのか。殺人事件の被告人は本当にまっすぐ家に帰ったのか、それとも恋人を追って引き返したのか。
実のところ真相は誰にも分からないし、故に「正義」に対する見通しは、強まる土砂降りの中のように視界が乱れ、どんどん曖昧になる。
判決の日、主人公は裁判を欠席し、ようやく生まれた我が子と愛する妻を抱きしめる。
彼が、陪審員として導き出した「評決」は、被告人の罪を断ずるものではなく、自らに重い十字架を課すものだったのかもしれない、と思えた。
何故なのか、まったく理解に苦しむが、日本国内では劇場公開が見送られ、U-NEXTでの独占配信となっていた本作。Wikipedia情報によると、クリント・イーストウッドの監督作品が劇場未公開となったのは、“51年”ぶりらしい。
51年──、国内配給会社への苦言すらもどうでもよくなるくらいに、この時代こそが“イーストウッド”だよなあ、とまた感嘆を抑えきれない。
Information
| タイトル | 陪審員2番 JUROR #2 |
| 製作年 | 2024年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | |
| 脚本 | |
| 撮影 | |
| 出演 | |
| 鑑賞環境 | インターネット(字幕・U-NEXT) |
| 評価 | 9点 |



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