「サブスタンス」“阿鼻叫喚の先の遥か彼方で待ち受けるミャクミャク大暴走”

2025☆Brand new Movies

評価:  10点

Story

元トップ⼈気⼥優エリザベスは、50 歳を超え容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再⽣医療に⼿を出す。すると――。 Filmarksより

映画『サブスタンス』本予告|5月16日(金)全国ロードショー
想像のはるか先で暴走する狂気のエンタテインメント<必ず>観たことのないものをお見せします50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス(デミ・ムーア)は、容姿の衰えから仕事が減少し、ある再生医療“サブスタンス”に手を出す。だが<治療薬>を注射…more

 

Review

経年によってヒビが入った星型のプレートに、落とされたハンバーガーの残骸がべっとりとこびりつく。
嫌悪感の塊のような男性プロデューサーは、下劣な会話を繰り広げながら立ち小便をし、その顔面を画面いっぱいに見せつけてくる。
最悪なASMRと共に食べ散らかされるシュリンプの残骸と、残されたワイングラスの中でもがき息絶える蝿──。
冒頭から、極めて意地悪で悪趣味な映像表現と音響表現に、打ちのめされそうになる。
その精神を侵害するようなオープニングからのシークエンスは、そのままダイレクトに主人公の老女優の精神に直結し、彼女が陥っている感情が、鑑賞者の脳裏に流れ込んでくるようだった。

だが、はっきり言って、そんな冒頭の不快感などは、その後のこの映画の展開を踏まえると、あまりにも些末なことだった。本作が、終始一貫して最後の最後まで描き連ねる“阿鼻叫喚”を前にしては、あらゆる映画のあらゆる不快シーンも「お花畑」と言ってしまって過言ではない。
醜悪と無慈悲の極地。昨年の賞レース関連の情報を見聞きしていた段階から、強烈な映画であるということは聞き及んでいたけれど、想像を遥かに越えて、映画史上稀に見るトンデモナイ作品だった。
映画を彩る様々な側面において、今年一番の「衝撃」を与えられたことは間違いない。

文字通り常軌を逸したグロテスクでおぞましいストーリー展開と映像表現を目の当たりにして、何度も目を覆いたくなるし、主人公と同様に何度も吐き気を催す。だがしかし、一度たりとも鑑賞を途中で止めようという気にはならず、映し出される映画世界から目を離すことができない。
観てはならないものを観ていることを強く自覚しながら、決して観ることをやめられない感覚。それはまさに、この映画の主人公たちが陥った狂騒と重なり、観ている側も未知なる狂気に足を踏み入っていくようだった。

若かりし頃の栄光と称賛に自ら縛り付けられ、老いと共に自分が存在していた世界から拒絶されるという恐怖は、必ずしもハリウッドの大女優にのみ与えられる業苦ではないだろう。
人間が人間である以上、無情な年月と共にその存在価値は良くも悪くも変動し、“永遠”はあり得ない。
そんなあまりにも普遍的なテーマ性を、「綺麗事」という言葉など生ゴミの奥底に捨て去ってしまったかのような振り切った“カルト”と“ホラー”で描きつけた映画世界が、圧倒的で、もう笑うしかなかった。
監督・脚本を務めたコラリー・ファルジャは、気鋭のフランス人女性。この人の才気もまたトンデモナイ。

女優(「俳優」ではなく敢えてこう言いたい)の演技に対して、「体を張った良い演技」なんて使い古された常套句を、遥かに越えて、その彼方先にまで突っ切ったデミ・ムーアに対しては、無論「称賛」しか無い。
「ゴースト/ニューヨークの幻」から約35年、感動的なラストシーンで「ditto(同じく)」と美しい涙を流していたうら若き女優が、こんな「姿」を見せつけるとは、あの頃、誰が想像しただろう(できるわけがない)。

ネタバレになってしまうけれど、本作が描き連ねた地獄絵図の先に待ち受けていた更なる大地獄は、オマージュされた「キャリー」や「シャイニング」と同様に、映画史に残り、語り継がれるべき大バッドエンドだろう。
滅茶苦茶にグロテスクな化物になってしまった主人公の姿は、映画内の観客たちと同様に唖然とするしかなかった。ただ、個人的には、彼女のその“最終形態”に、なぜか既視感と不思議な愛着を感じてしまった。

そうあの姿はまさに、今年開催されたEXPO2025のキャラクター“ミャクミャク”じゃないか!
過剰な細胞分裂によって生まれてしまった“リアル・ミャクミャク”だ!

ちなみにミャクミャクのキャラクターコンセプトは、「多様性」と「生命の循環」。本作のテーマ性ともピタリと重なるその奇跡的な類似性に、一人身が震えた。
そして翌日、週末の限られた深夜時間を割いて、二夜連続で本作を鑑賞してしまった。ああ、これが
“THE SUBSTANCE”の怖さか、とまた身を震わせた。

 

Information

タイトル サブスタンス THE SUBSTANCE
製作年 2024年
製作国 アメリカ・イギリス・フランス
監督
脚本
撮影
出演
声の出演
鑑賞環境 インターネット(字幕・U-NEXT)
評価 10点

 

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