冬季五輪の“花形”である女子フィギュアスケートが終わり、ソチ五輪もフィナーレが近づいてきた。
期待が集中した花形競技で、浅田真央選手をはじめとする日本人選手のメダル獲得が成らなかったことは、
やはり想定外のことで、落胆も大きかった。
それは、はからずも、2006年のトリノ五輪での荒川静香の金メダルから始まった、
日本女子フィギュアの黄金時代の“終焉”を表しているかのようで、
とても寂しく思う。
ただし、その一方で、今大会の女子フィギュアスケートが稀に見る面白さだったことも間違いない。
その最たる要因と、日本勢が引っ張ったこの8年間における一抹の物足りなさが、同じものであったと気付く。
即ちそれは、“欧米勢の強さ”だ。
もっと絞り込んでしまえば、ロシア人選手、アメリカ人選手の脅威の不在だと言っていい。
この8年間、世界大会の表彰台は、韓国のキム・ヨナ選手を含め、アジア勢が席巻していたと思う。
もちろんその中に、欧米の強豪選手が食い込むことはあったろうが、決して「脅威」ではなかった。
日本勢の活躍がとても喜ばしい反面、世界全体のレベルが停滞してしまっているような雰囲気を感じ、
心の底から高揚できなかったような気がする。
ソチ五輪の女子フィギュアが盛り上がったのは、
間違いなく、ロシア、アメリカを筆頭とする欧米勢の復活があったからだ。
そして新しい世代の選手たちが、ネクストレベルへの可能性を示してくれたからだと思う。
「時代」が移り変わる狭間の群雄割拠のせめぎ合いの中で、
ベストパフォーマンスに挑み続け、それを果たした世界のトップ選手すべてに賞賛を捧げたい。
印象的だった各選手のまとめを下記にて↓
6位 浅田真央/日本
悪夢のSPから一夜明けてのFS、実況のアナウンサーの言葉と同じく「これが浅田真央だ」と思った。
昨日の「敗北」からのこの切り替えは奇跡的だったと思う。
彼女が日本史上最高のフィギュアスケート選手であることはやっぱり間違いない。
惜しむらくは致命的な“ムラ”があったということ。
ただそのムラは、“伸びしろ”がまだ残されているということだと僕は思う。
「4年後まで続けてほしい」とはもはや言うまい。
でも、きっと彼女はまた滑りたくなると思う。
5位 ユリア・リプニツカヤ/ロシア
この15歳の技術と表現力、そして更なる潜在能力は本物だった。
個人戦はミスに泣いたけど、彼女が次期女王候補の筆頭であることは揺るがないだろう。
今大会において彼女だけは、団体戦の影響があったと言っていい。
硬派で攻撃的な振る舞いも、個人的には好きだ。
4位 グレイシー・ゴールド/アメリカ
ここまでハイレベルな争いにならなければ、アメリカ人としてサーシャ・コーエン以来の表彰台も可能だったはず。
ただ、このハイレベルの中でメダルに肉薄したことの方が、彼女にとっては大きな自信となっただろう。
18歳の彼女が、この先もロシアの2選手とせめぎ合っていくことが、
女子フィギュアのレベルを引き上げていくことになると思う。
個人的には今一番好きな選手。
3位 カロリーナ・コストナー/イタリア
地元開催のトリノ五輪以降、個人的には揶揄の対象にしてしまっていた選手だった。
が、それだけに8年越しの五輪でのメダル獲得には殊更に高揚し、想定外に喜びがこみ上げた。
ずうっと見てきたからこそ分かることだが、この8年、この選手がもっとも努力したんじゃないかと思う。
五輪で泣き続けた欧州女王が、最後の五輪で念願を果たした様には感動した。
2位 キム・ヨナ/韓国
再び頂点に立つことはなかったけれど、この人がナンバー1であることはやはり間違いなかったと思う。
某人気漫画風に言えば、「この時代の名が“キム・ヨナ”だ!」ということだったのだと思う。
演技直後の様子を見る限り、満身創痍であったことも明らかだし、
この4年間、あらゆるしがらみとバッシングの中で苦しみ続けたのだろうことも明らか。
それでも最後まで女王の貫禄を見せつけ、プライドを示し続けたことは、尊敬に値する。
間違いなくフィギュアスケート史に残る選手だったと思う。
1位 アデリナ・ソトニコワ/ロシア
まさにダークホース。でも実力は本物。
15歳のリプニツカヤが“月光”ならば、17歳の彼女はまさに“太陽”。
好対照な二人がロシアの新しい黄金時代を築いていくのは間違いない。
地元開催の五輪で、この花形競技初の金メダリストになったことは、文句無しの偉業だと思う。
「黄金時代」の終わりはさみしいし、悔しい。
でも、終わりは、常にはじまりでもある。
日本国内においても新しい「女王」が生まれることに期待したい。
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