TK-SP特集4:『この“馬鹿”アクション映画がやっぱり面白い!』

≪TK-SP特集4:『この“馬鹿”アクション映画がやっぱり面白い!』≫

なんとまたもや2年半ぶりの「TK-SP特集」第四弾!
一部のユーザーからの熱烈な要望に応えてお送りする『“馬鹿”アクション映画特集』!!
「“馬鹿”アクション」とは、決してコメディ路線の“おバカ映画”ということではなく、「なーんも考えずに、ただその映画の時間だけを楽しむためだけのアクション映画」と捉えてもらいたい。
当然、観た後には何も残りゃしないけれど、何年かして再び観たら、“やっぱり面白い”と思える映画を厳選10本揃えてみた。

「条件」としては、あまりにも完成度が高くて突っ込みどころがない作品は駄目ということ。
例えば、「ダイ・ハード」や「ザ・ロック」、「フェイス/オフ」などの問答無用の大ヒット作品は、アクション映画としての精度が高すぎるため、今回の特集からは除外した。
基本的には、決して「10点」には至らないけれど、忘れられない映画を選び抜いたつもり。

当然ながら、年末の「スバラシネマAWARDS」の上位には入ってこないけれど、僕はこういう映画を軽視することは出来ない。
なぜなら、自分の“映画ライフ”はこれらの映画から始まっているからだ。
それを裏付けるように、今回選んだ作品は、週末のテレビ放映で観たり、一人で映画館に行き始めた頃に観た映画が殆どで、1990年代の映画が圧倒的に多い。

とにかく、実際世間的には評価の低い映画も多々あるんだろうが、個人的には「面白い」のだから仕方がないアクション映画10本!


「Mr.&Mrs.スミス Mr.&Mrs.Smith」

“馬鹿”アクション的評価:8点
2005年【米】
監督:ダグ・リーマン
キャスト:ブラッド・ピット アンジェリーナ・ジョリー

ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー夫妻が、現実で結ばれる前に「夫婦役」で共演したハードでスタイリッシュなアクション映画。

それぞれ“素性”を隠して結婚した夫婦。実はお互いが、業界トップクラスの超一流の殺し屋だったというマンガチックな設定がまず楽しい。
この設定を素直に楽しんで受け入れられれば、もうあとはひたすらにお洒落で、大迫力で、馬鹿馬鹿しくて面白い映画世界を堪能できる。
何と言っても、主演の二人がセクシー過ぎる。
特にアンジェリーナ・ジョリーの体躯は、それが最も“非現実的”だと思わせる程に、魅惑的でたまらない。

最初から最後までセンスの良いアクションシーンが散りばめられ、ストーリー自体はとてつもなく単純なのにも関わらず、終始飽きがこない。
夫婦がお互いの“素性”に感づき、スウィートホームで「死闘」を繰り広げた果てに、愛を深めてしまうくだりには娯楽性を越えて、哲学性すら感じてしまう。

クライマックスでは、お互いの組織から命を狙われ、絶体絶命の中、決死のガンファイトを見せつける。夫婦の息の合った華麗なガンファイトは、まるでダンスを見ているようで、激しく美しい。

命果ててしまったのかと思わせるクライマックスの後、ラストシーンでは一転して夫婦カウンセリングで締めるあたりも、非常にウィットに富んでいてセンスが良い。

実は、今尚続編を期待している作品の一つでもある。


「絶体×絶命 Desperate Measures」

“馬鹿”アクション的評価:8点
1998年【米】
監督:バーベット・シュローダー
キャスト:マイケル・キートン アンディ・ガルシア マーシャ・ゲイ・ハーデン

白血病の息子を持つ市警刑事と、IQ150の凶悪犯との病院内での攻防を描いたサスペンスアクション。

まず設定として面白いのは、息子の唯一のドナーがマイケル・キートン演じる凶悪犯であるというところ。
ここぞとばかりに脱走を試み、病院内で暴走し始める凶悪犯。警察当局は射殺も辞さない構えで事態収拾に臨むが、アンディ・ガルシア演じる刑事は、息子にとって唯一の希望であるドナーを殺されるわけにはいかない。
刑事としての使命と父親としての使命に板挟みになりながら、単身、凶悪犯と対峙する構図がユニークだ。

この映画の場合、何と言っても素晴らしいのは、そのキャリアの中で珍しく“悪役”を演じるマイケル・キートンのパフォーマンスだろう。
父親である刑事が自分を殺せないことも念頭において、ドナー提供に名乗り出て、あの手この手で脱走を図ろうとする様は、次第に“悪役”というキャラクター性を越えて「痛快」に思えてくる。

そう、実はこの映画の主人公は、息子の生命を守るために奔走する刑事ではなく、頭脳明晰の凶悪犯なのだ。
それを裏付けるように、クライマックスに近づくにつれ、次第に演出も凶悪犯よりになっていく。

何だかんだあって、何とか無事に骨髄移植手術を終えた後のラストシーン、突如目覚めたマイケル・キートンが言い放つ。

「車借りるぜ」

このラストカットの痛快感は、指折りだ。


「ビバリーヒルズ・コップ2 Beverly Hills Cop II」

“馬鹿”アクション的評価:7点
1987年【米】
監督:トニー・スコット
キャスト:エディ・マーフィ ジャッジ・ラインホルド

ご存知エディ・マーフィ主演の人気刑事アクションシリーズの第二弾。
何を置いても、破天荒な刑事を演じるエディ・マーフィのパフォーマンスを見ているだけで楽しいシリーズだった。

今でこそ黒人の人気俳優は沢山いるけれど、エンターテイメント映画における“スター俳優”ということに限れば、エディ・マーフィはそのパイオニアだったのではないかと思う。
と、ひたすらにエディ・マーフィ自体の“娯楽性”を語るのであれば、わざわざこのパート2を選ぶ必要は無い。

“馬鹿”アクション映画において重要なポイントとして、「脇役の活躍」は大きなウェイトを占める。その点においてこのパート2は優れているのだ。
このシリーズの面白さは、破天荒な主人公の言動に対して、二人の同僚刑事が次第に感化していくところ。
特に今作では、ジャッジ・ラインホルド演じる刑事が、エディ・マーフィ演じるアクセル刑事にどんどん影響されていき、最後には主人公も目を丸くする活躍を見せる。

ストーリー展開なんてほとんど忘れてしまったけれど、ジャッジ・ラインホルドの痛快な活躍ぶりだけは忘れられない。
そういう「印象度」がまさに“馬鹿アクション”の肩書きにふさわしい。


「イレイザー Eraser」

“馬鹿”アクション的評価:9点
1996年【米】
監督:チャールズ・ラッセル
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー ヴァネッサ・ウィリアムズ ジェームズ・コバーン

さてここからは、“馬鹿”アクション映画界を代表する“5大スター”の珠玉の作品を紹介していこう。

まずはアクションスターの頂点・アーノルド・シュワルツェネッガー。オーストリア出身のボディービルダーからカリフォルニア州知事にまで駆け上がったこの大スターを欠かすわけにはいかない。

数ある主演映画から選んだのは、重大事件の証人保護のため彼らの“過去”を消し去るという特殊任務を請け負うスーパー情報局員の活躍を描いたこのサスペンスアクションだ。

シュワルツェネッガーのありきたりなスーパースターアクションに捉えられがちの映画で、確かにその通りの部分もあるが、この映画の面白さは実は多岐に渡っている。
屈強な主人公の圧倒的な強さ、最新機能満載の特殊銃器機の数々、端役キャラの意外な活躍、そして「勧善懲悪」を貫き通す大どんでん返し!

「ターミネーター2」にも「トータル・リコール」にも「トゥルーライズ」にも映画としての完成度では及ばない。
が、それでも「イレイザー」こそがシュワちゃんのアクション映画だ!と声を大にして言いたい。


「クリフハンガー Cliffhanger」

“馬鹿”アクション的評価:7点
1993年【米・仏】
監督:レニー・ハーリン
キャスト:シルベスター・スタローン ジョン・リスゴー マイケル・ルーカー

アクション映画スターの頂点シュワルツェネッガーの最大のライバルは、やはりシルベスター・スタローンだと思う。
特に、僕自身が映画を観始めた頃は、彼らの絶頂期で、主演の娯楽大作が競うように量産されていた。
この「クリフハンガー」もその時期に映画館に観に行った映画で、だからこそ愛着も大きい。

ただスタローンの場合、シュワちゃんと違って俳優としての性質自体が“根暗”なので、“馬鹿”アクションとしての評価はやや下がり気味になってしまうのは致し方ないところだろう。

山岳救助隊のスタローンが雪山でテロリストグループと死闘を繰り広げる今作も、監督レニー・ハーリンの豪快なアクションに彩られている反面、全体的に“ストイック”な印象が強く出ている。
しかし、何作もスタローン主演作を観ていると、彼のあの独特の風貌とクソ真面目な雰囲気そのものが、お決まりの“娯楽性”のようにも感じてくる。

吹雪の雪山をシャツ一枚で動き回って凍えたり、同僚の逆恨みを真っ正面から受け続けるというような、高倉健ばりの不器用さが、シルベスター・スタローンという俳優と、彼の主演アクション映画の「売り」だろうと思う。

あと今作では、悪玉のボスを演じるジョン・リスゴーの存在も見過ごせない。
終始冷静に非道に振る舞い、自分が助かるためには愛人さえも躊躇無く犠牲にする様には、“馬鹿”アクション映画における「悪役」の“王道”を感じる。


「ダイ・ハード4.0 Live Free or Die Hard」

“馬鹿”アクション的評価:8点
2007年【米・英】
監督:レン・ワイズマン
キャスト:ブルース・ウィリス ティモシー・オリファント

「ダイ・ハード」という作品は、「アクションヒーローVSテロリスト」という構図をアクション映画の「典型」として確立した作品だ。(実際はこのシリーズに登場する悪党はテロリストと呼ぶには性質が異なるのだけれど)
しかし、故にパート1は、そういった映画的な価値も含めて非常に完成度が高過ぎるため、今回の特集には相応しくない。

パート2やパート3には、逆に相応しい馬鹿馬鹿しさが含まれていて、どちらも“馬鹿”アクション映画としては良作だと思う。が、パート3から12年ぶりに「復活」したパート4の爆発ぶりこそ、ブルース・ウィリスというアクションスターの価値と、このシリーズの面白さを再確認させてくれた“馬鹿”アクション映画の秀作だと思う。

何と言っても、12年の時を経て、再び“世界一運の悪い刑事”ジョン・マクレーンを演じるブルース・ウィリスの存在が圧倒的だ。
彼のアクションスターとしての地位の確立は、アクション映画そのものの可能性を大いに広げたと思う。
即ち、主人公が、屈強な肉体美を持ち合わせていなくても、圧倒的な格闘技術を習得していなくても、女性を虜にする風貌でなくとも(頭が禿げていても!)、「面白いアクション映画は作れる」ということを、ブルース・ウィリスが証明して見せたのだ。

それは、第一作「ダイ・ハード」の公開から20年以上が経った現在においても変わらない。
もはや風貌的には「初老」を感じさせるジョン・マクレーンもといブルース・ウィリスが、20年前と同様に血みどろになりながら、相変わらずの豪腕で悪をやっつけていく。
決してスマートさのないその姿にこそ、この上ない痛快さを感じる。

「ダイ・ハード」の大ヒットから20年余り、55歳になった今も尚、ヒーローアクション映画の主役はもちろん、様々なタイプの映画に主演し続けるブルース・ウィリスという俳優は、実は物凄い俳優なんじゃないかと思う。


「ダブル・チーム Double Team」

“馬鹿”アクション的評価:9点
1997年【米】
監督:ツイ・ハーク
キャスト:ジャン=クロード・ヴァン・ダム デニス・ロッドマン ミッキー・ローク

さてここまでアクション映画界の“5大スター”として、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルベスター・スタローン、ブルース・ウィリスの作品を挙げてきたが、実は、“馬鹿”アクション映画界の真のスターは彼らではない。
彼らは、その代表作がハリウッド映画そのものを代表するほど巨大な作品なので、俳優としてのクオリティーが高過ぎると言える。
そういう観点から、今回の特集にふさわしいスター俳優は、あとの二人だ。

まずはこの人、ジャン=クロード・ヴァン・ダム。マーシャルアーツ、空手の実力者として、屈強な肉体美と甘いマスクを武器に、アクションスターの地位を確立したプロセスは、“アクション映画スターへの道”の王道とも言える。

主演作もそのほとんどすべてが、“馬鹿”アクション映画だと言っても過言ではなく、故にちっとも面白くない映画も山のようにある。
そんな中でも随一の面白さを誇る(と思っている)のが、この「ダブル・チーム」だ。

ヴァン・ダム演じる主人公は、元CIAエージェント。既に引退して妻子と幸せな生活を送っていたが、復活した大物テロリストの暗躍阻止のために現場復帰を懇願され、急襲作戦を任される。
しかし、作戦は大失敗に終わり、主人公はテロリストから大きな恨みを買うと同時に、失敗したエージェントを監禁する秘密の島に強制送還されてしまう。テロリストに捕まってしまった妻子を救うため、秘密の島を脱出し、戦いを挑む……。
いやーまさに“馬鹿”アクションに相応しいストーリーテリングだ。

で、何が「ダブル・チーム」なのかと言うと、デニス・ロッドマン演じる武器商人の力を借りつつ戦いに挑むからで、元NBAプレイヤーのロッドマンと、バスケット用語の“ダブル・チーム”をかけているのだろう。
が、“ダブル・チーム”と言うほど、ロッドマンは活躍しない。オカマのようなコスチュームを着せられ、でかい図体でヴァン・ダムのまわりをチョロチョロするという印象しか無い。

この映画で最も注目すべきは、ヴァン・ダムでもロッドマンでもなく、テロリストのボスを演じるミッキー・ロークに他ならない。
今でこそ「レスラー」でのアカデミー賞ノミネートを経て、俳優として完全復活を遂げているミッキー・ロークだが、この映画の頃は“落ち目”もいいところだったはずだ。
が、僕が彼のファンになったのは、間違いなくこの映画からで、豪快さとセクシーさを兼ね備えた悪党面と、何とも間抜けで悲哀に溢れたラストシーンが忘れられない。


「暴走特急 UNDER SIEGE 2」

“馬鹿”アクション的評価:9点
1995年【米】
監督:ジョフ・マーフィ
キャスト:スティーブン・セガール エリック・ボゴシアン

「スティーブン・セガール」、この俳優こそ、“馬鹿”アクション映画のトップスターだと思う。合気道をはじめとするありとあらゆる武術のリアルな使い手であり、映画におけるそのリアルな格闘アクションは「セガールアクション」と呼称されるほどだ。

彼の主演映画の特徴として真っ先に挙げたいのは、「主人公が圧倒的に強過ぎる」ということ。セガール演じる主人公は、殆どの場合、「無傷」で悪を抹殺していく。故に、観客は何の心配もなく主人公の「勝利」を見届けられる。
「それはアクション映画としてどうなの?」という疑問がごもっともだが、それが「セガールアクション」なのだから仕方が無い。

セガールの代表作と言えば「沈黙シリーズ」が有名。だが、第一作「沈黙の戦艦」の正式な続編は、この「暴走特急」のみで、あとはすべて配給会社が邦題として勝手につけただけで、シリーズとしての関連性は一切無い、ということも有名な話だ。

そして、セガール映画でダントツに面白いのは、「沈黙」と付けられなかった「沈黙シリーズ」の正統な続編、この「暴走特急」だ。
元海軍特殊部隊の対テロ部隊指揮官という経歴を持つ主人公が、なぜか今はコックをしているという設定が、このシリーズの面白い設定で、悪党と対峙する時にも、料理人らしい台詞回しをよくする。
例によって、主人公が偶然乗り合わせていた特急列車が、最新鋭の軍事衛星を操るテロリスト集団に占拠されるというくだりからストーリーは展開する。あとの顛末は……もう想像通りだ。

「特急列車」という限られた空間で繰り広げられる激し過ぎる死闘を、相変わらずの冷静沈着な表情で淡々とこなしていくスティーブン・セガールというコンテンツそのものが、最大の見所と言うしか無い。愛すべき“馬鹿”アクション映画だ。


「エグゼクティブ・デシジョン Executive Decision」

“馬鹿”アクション的評価:10点
1996年【米】
監督:スチュアート・ベアード
キャスト:カート・ラッセル スティーブン・セガール ハル・ベリー デヴィッド・スーシェ

カート・ラッセル&スティーブン・セガールの“二大スターそろい踏み!”を全面に打ち出してプロモーションされた今作。
「何だよまたセガール映画か」と思われるだろうが、そうではない。
二大スターの競演を叫んでおきながら、この映画のセガールは、なんと映画の序盤で航空機から吹き飛んで、文字通り消えてしまう。
テロリストにハイジャックされたジャンボ機に駆けつけた、特殊部隊の頼もしい隊長役のセガールが、何の活躍もせずに死んでしまうというまさかの展開に、誰しも驚くというよりも、きょとんとしてしまう。

そのまま、カート・ラッセルのワンマン映画に転じて終わってしまうようなら、アンフェアなプロモーションで観客を欺いた”クソ映画”と言われても仕方が無いところだが、この映画はそうではなく、セガールが居なくなってからの展開が楽しい。
隊長を失い慌てふためく残された特殊部隊のメンバーの中には、ジョン・レグイザモ、オリヴァー・プラットら地味だけれど芸達者な俳優をきちんと揃えており、彼らが何とか任務を達成しようと裏方で奮闘する様が、まず小気味良い。

また主人公を終始サポートするCA役には、この映画の5年後に「チョコレート」でアカデミー賞を獲得するハル・ベリーがキャスティングされ、利発で勇敢なCAを好演している。
そして、テレビ映画「名探偵ポワロシリーズ」のポワロ役で馴染み深い英国人俳優デビッド・スーシェが、テロリストグループのリーダーに扮し、印象的な悪役ぶりを披露してくれている。

そもそもスティーブン・セガールはゲスト主演に過ぎなかったらしく、序盤の消失も予定通りだったようだ。ただし、観客にとっては、映画序盤のまさかの展開が、図らずも「予測不可能」な感覚を映画全体に植え付ける要素となった。
そういうある意味奇跡的な”面白味”が、この“馬鹿”アクション映画の最大の魅力だろう。


「コン・エアー CON AIR」

“馬鹿”アクション的評価:10点
1997年【米】
監督:サイモン・ウエスト
キャスト:ニコラス・ケイジ ジョン・マルコヴィッチ ジョン・キューザック スティーヴ・ブシェミ

“馬鹿”アクション映画に“ヒーロー”は必要不可欠な要素だ。だからこそ、同時に絶対必要不可欠なものは、“悪役”である。「正義」があるから「悪」がある。「悪」があるから「正義」がある。「勧善懲悪」という大前提の奥底には、両者一対の哲学性が存在する。
詰まるところ、魅力的なヒーローが一方的に活躍したところで、面白い映画にはなり辛い。そこには、同等以上に魅力的な「悪役」が必要なのである。

そういう部分における魅力において、この映画は唯一無二の存在感を放っている。
愛妻を守るために犯した殺人罪で服役中の主人公は、仮釈放が決まり、凶悪犯ばかりが乗り込んだ囚人輸送専用機”コン・エアー”で輸送される。が、凶悪犯らの周到な計画によりハイジャックされてしまう。事態を打破するため、孤軍奮闘する正義漢の強い主人公の様を描いた大作だ。
キャスティング的にも、ニコラス・ケイジをはじめとしてスター性と実力を伴った俳優がずらりと勢揃いしており、一流のアクション映画と言っても過言ではない。

が、何と言っても豪華に取り揃えた“凶悪犯軍団”が、馬鹿馬鹿しいほどに魅力的な要素で、彼らの存在感がこの映画の“馬鹿”面白さを助長している。
ボス役の名優・ジョン・マルコヴィッチを頂点にし、ヴィング・レイムス、ダニー・トレホとアクの強い脇役を取り揃え、伝説の連続殺人鬼役にはスティーヴ・ブシェミが不気味な存在感をこれでもかと見せつける。

わらわらと群がるように襲いかかる悪党たち、それに無精髭と長髪を振り乱して奮闘するニコラス・ケイジ、爆発につぐ爆発……、暑苦しくて、工夫の無い娯楽映画に見えがちだが、随所に散りばめられたエスプリが小気味良く効いている。

今回取り上げたどの作品にも共通して言えることだが、「大味」の中にほのかに漂う絶妙な塩梅のスパイスの存在に気付いた時、その味はクセになる。

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