TKLスバラシネマ+映画特集企画vol.2 『TK的映画史上“サイアク”の悪役20人+』
映画史上“サイアク”の悪役20人+α!!もちろん“最悪”は「悪役」にとっての最高の褒め言葉。映画を悪意で彩る様々な悪役たちを紹介します。
悪役#1:<ジャンキー汚職刑事>ノーマン・スタンフィールド(ゲイリー・オールドマン)「レオン」「レオン 完全版」1994年
「レオン」は知っての通り、殺し屋レオンと孤独な少女マチルダの純愛を激しく切なく描いた大傑作だ。がしかし、二人の最大の障壁、麻薬取締課の“ジャンキー刑事”スタンフィールドを抜きにはこの映画は語れない。
もはや「名優」の肩書きも過言ではないゲイリー・オールドマンによる憎憎しい(×2)存在感と、彼に絡んだラストの顛末が無ければ、切ない哀しみと解放感を含んだ今作の素晴らしいエンディングの余韻は、生まれなかっただろう。
レオン「マチルダからの……贈り物だ……」
スタン「!!!シット……」
うーん、最高。
悪役#2:<ジャパニーズ“最狂ヤクザ”>佐藤浩史(松田優作)「ブラック・レイン」1989年
正規の映画史においても、この映画で故・松田優作が最期に演じた“佐藤”は、確実にその名を刻む悪役なのではないだろうか。これほどまでに「鬼気迫る」という言葉の意味が響いてくる演技は無い。
名匠リドリー・スコットがメガホンをとり、日米の大スター(マイケル・ダグラス×高倉健)が素晴らしい絡み合いを見せるハリウッド映画ではあるが、この映画は完全に松田優作=佐藤に支配されている。
悪役#3:<最強暗殺アンドロイド>T-1000(ロバート・パトリック)「ターミネーター2」1991年
悪役の花形、主人公を狙う「刺客」といえば、カリフォルニア州知事(2006年5月現在)がその身を呈して倒したこの最強アンドロイドを忘れてはならない。
今でこそCG等による視覚効果は見慣れたものだが、今作公開当時のT-1000のインパクトは物凄いものがあった。言葉の通り「見たことがない」そのキャラクター性とロバート・パトリックが演じた“無機質感”が“恐怖”を見事に助長したと思う。
ちなみにT-1000の形態変形能力のモチーフは、日本の漫画「寄生獣」から得たらしいというのは、わりと有名な通説。
悪役#4:<子々孫々のバッド・ガイ>ビフ・タネン(トーマス・F・ウィルソン)「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART1~PART3」1985・1989・1990年
“メチャクチャ憎たらしいのにどうしても憎みきれない悪役”としてビフ・タネン(と、その一族)の功績はとても大きい。
シリーズ通じての“お約束”となった、ビフ一族の肥溜め突っ込みシーンは、この素晴らしいエンターテイメント映画の重要な要素である。
ビフ・タネン役を中心にして、過去・現在・未来に渡ってその悪役面を遺憾なく発揮してくれたトーマス・F・ウィルソンに心から敬意を表してこのセリフを言わせてもらおう。
「おーい、誰かいるかーーー?」
悪役#5:<“7つの大罪”猟奇殺人者>ジョン・ドゥー(ケビン・スペイシー)「セブン」1995年
「異常な猟奇殺人者」というフレーズにおいては「セブン」の主犯ジョン・ドゥーがその筆頭だと思う。
名優ケビン・スペイシーが、俳優としての自らの存在自体を極力隠して挑んだこの猟奇殺人者の“異常性”は、「残酷」という言葉そのものを体現しているようであまりに恐ろしい。
当時、まだケビン・スペイシーという俳優を知らなかった僕は、映画の中の彼の目を見て「この人は本当に狂気に狂っているんじゃないか?」とリアルに思った。
悪役#6:<至高の天才食人鬼>ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)「羊たちの沈黙」「ハンニバル」1990・2001年
“猟奇殺人”という要素を確固たる映画のジャンルとした作品こそ「羊たちの沈黙」であり、“人食い”ハンニバル・レクターその人だろう。
猟奇殺人者でありながら極めて高い知的能力と幅広い知識を併せ持つ博学者であるため、映画においても一般の悪役的な描かれ方は決してしないが、その溢れ出る凶暴で巨大な悪意には、他をよせつけない絶対的なものを感じずにはいられない。人間の臓器をさも美味そうに食べる様を表現してみせた、アンソニー・ホプキンスの迫力は圧巻だ。
悪役#7:<“選ばれし”ダーク・スター>ダース・ベイダー/アナキン・スカイウォーカー「スター・ウォーズ」「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」1977・1980・1983年
優れた悪役にはヒーローをも凌ぐドラマがあるものだ。
その代表格こそダース・ベイダーをおいて他にいない。なぜなら壮大なスペースオペラの金字塔「スター・ウォーズ」シリーズは、詰まるところダース・ベイダー(=アナキン・スカイウォーカー)という“選ばれし者”である故に、哀しく不器用な運命を辿った一人の男を描いた物語だったからだ。
つまりは彼こそが真の主人公であり、悪役でありながら二十数年に及ぶ歴史的大作を支え率いた唯一無二の存在なのだ。その存在こそ、あらゆる映画における「悪役」の価値と意義を高めたと言えるのではないか。
悪役#8:<謎の伝説的殺人鬼>ガーランド・グリーン(スティーブ・ブシェミ)「コン・エアー」1997年
「コン・エアー」は、ハイジャックされた囚人輸送機で起こる、主人公(も囚人)対囚人オールスターズの攻防を描いたアクション映画だけに、アクの強い悪役たちが揃っている。中でも凶悪なのは、囚人たちのボス・サイラス(ジョン・マルコヴィッチ)だが、彼をも押しのけて印象強く残るのが、スティーブ・ブシェミ扮する伝説的殺人鬼ガーランド・グリーンだ。幼い少女も含めて30人以上を惨殺したとされる殺人鬼だけに、他の囚人たちとは別格の拘束状態で現れ、凶悪な囚人たちでさえそのあまりの不気味さに畏怖するほど。劇中でも一人で人形遊びをする少女を見つけ怪しく近寄っていく…。その時の表情の禍々しさといったらスゴイ………がしかし、実は彼の「悪役」としての魅力はそういう“もっとも”な部分ではない。
ガーランド・グリーンの存在こそこの映画のある意味最も面白い部分だったりするので詳細は伏せるが、この役のキャスティングとして、スティーブ・ブシェミほどふさわしい俳優はいないだろう。
悪役#9:<最強コンピューター・バグ>エージェント・スミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)「マトリックス」「マトリックス リローデッド」「マトリックス レボリューションズ」1999・2003・2003年
日を追うごとに、コンピューター社会へと化していく現代。その権化とも言える“新しい悪役”、それが「マトリックス」のエージェント・スミスだろう。無数に増殖する黒ずくめの男、その正体はコンピューターにプログラミングされた“バグ”だというのだから、一昔前では到底まかり通らないセンセーショナルな設定であり発想だと思う。
今作のヒットの大きな要因の一つが、この新しいタイプの悪役の存在であることは言うまでもない。ただ、続編2作ではスミスが暴走し過ぎて、内容的にも映画的にも破綻気味でいささかついていけなくなってしまった……。まあそういう面からも、この映画がエージェント・スミスによって支えられていたことが伺える。
悪役#10:<悪意の純真>アレックス(マルコム・マクダウェル)「時計じかけのオレンジ」1972年
正直なところ、この映画の唯一無二の主人公であるアレックスを果たして「悪役」と位置付けていいものかどうか、迷った。しかし、リンチ・レイプ・殺人とあらゆる暴力行為をひたすらに繰り返す彼を「悪」と呼ばずして何と呼ぶ?
そして、英国俳優マルコム・マクダウェル演じるその瞳は、ある意味において“純真無垢”な悪意に満ち溢れている。つまりは、アレックスという悪意の様を奇怪に描いたこの作品自体が、非常に奥深い「悪」そのものなのかもしれない。
悪役#11:<多重人格の“母(?)”>ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)「サイコ」1960年
映画における「猟奇殺人」というジャンルを確立したのが「羊たちの沈黙」のレクター博士であれば、「多重人格」というジャンルを不動のものにしたのは、アルフレッド・ヒッチコックの代表作「サイコ」のノーマン・ベイツだろう。少々“マザコン”じみてはいるが一見好青年のモーテル経営者の実態とその恐怖を描いた今作、今となってはそのストーリー展開は予定調和的ではある。が、しかし、その予定調和を作り上げた作品こそこの「サイコ」であり、そのキーマンである異常者ノーマン・ベイツと演じたアンソニー・パーキンスの功績はとても大きい。
悪役#12:<冷血“バイオレンス”先生>教師キタノ(ビートたけし)「バトル・ロワイアル」2000年
中学生同士が殺し合うという壮絶なバイオレンス性によって社会問題にもなった今作。実際観てみると、設定以外にはそれほどに目くじらを立てるような映画ではないように思ったが、教師キタノを演じたビートたけしは恐ろしかった。こういう役をやらせた時のビートたけしはほんとにコワイ。くたびれたジャージ姿&いつもの舌足らずな調子で「今日はみんなに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」とさらっと言いのけられるのは彼くらいのものだろう。ただ、どう転んだって問題作なのだから、もっと教師キタノを滅茶苦茶に暴れさせても良かったとは思う。残虐性の迫力では、安藤政信が扮した“殺人マシーン”桐山和雄の方が優れていた気もする。
悪役#13:<”ヒーロー渇望症”の絶対悪>イライジャ・ブライス(サミュエル・L・ジャクソン)「アンブレイカブル」2000年
<注意!ネタバレアリ!!>
「悪役」としての派手さはまるでなく、本編においても9割方は悪役としては存在しないのだけれど、ヘンな髪型と哲学性が印象深いのが、“絶対悪”イライジャ・プライスだ。不遇な状態で生まれ育った自分自身の境遇を呪い、アメコミを愛し、心からスーパーヒーローを渇望する余り、「自らが絶対的な“究極の悪”となれば、宇宙意思はバランスの均衡を保つため、おのずとスーパーヒーローを誕生させる」という屈折した哲学に辿り着き、実現させた男。その悲哀がたまらない。
悪役#14:<孤高のラピュタ王家末裔>ムスカ大佐:ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ「天空の城 ラピュタ」1986年
宮崎映画では得てしてそれほど徹底的な悪役は登場しないのだが、ムスカ大佐は確固たる見事な「悪役」だと思う。ラピュタ王として世界に君臨するための情熱と野心は物凄く、自らの努力とあらゆるものを利用することにより、野望の実現まであと一歩まで迫った様は、ある意味賞賛に値するのではないか。死んでいく人間を眼下にしての「人がごみのようだ!」は、悪役台詞史上に残る名言だ。
悪役がどうやったって避けられない宿命として夢破れ、ラピュタの崩壊と共にまたしても名言「目があぁぁー!!!」を放ち、実はラピュタの瓦礫に紛れて落下していくシーンもしっかり描かれているなど、スバラシイ悪役魂を持ったキャラクターだと思う。
悪役#15:<冷血の女子高生刺客>GOGO夕張(栗山千明)「キル・ビル」2003年
クエンティン・タランティーノ監督が己のオタク魂をぶちまけて作り出した「キル・ビル」は、「悪役」の宝庫なわけだけど、中でも真っ先に名が挙がるのは、ビルでもエルでもオーレンでもなく、やっぱりGOGO夕張だ。
なぜに女子高生!?なぜにGOGO!?なぜに夕張!?とそのインパクトは強大で、演じた栗山千明は初のハリウッド映画出演で、なんともオイシイ役を貰ったなと思う(そして見事にハマリ役☆)。
悪役#16:<熱血“バイオレンス”先生>教師RIKI(竹内力)「バトル・ロワイアルⅡ/鎮魂歌」2003年
大監督深作欣二が撮影序盤に力尽きそのまま永眠、一応の遺作となった今作であるが、映画的には相当面白くはない。だが、ギリギリ観る価値はある。なぜなら教師RIKIこと竹内力の演技…いやパフォーマンスがスゴイからだ。もうバイオレンスなのかコメディなのか分からなくなるほどの凄まじいキレッぷり、口調、風貌、どれをとってもインパクトがスゴイ。そして極めつけは、その死に様(トラーーイ!!)。熱血教師というものの強大な怨念を見ているような壮絶さを、とにかく見てほしい(竹内力登場シーンだけでもいいので)。
悪役#17:<究極のクローン怪人>マモー(声:西村晃)「ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)」1978年
ルパン三世映画からはこの男、怪人マモーを忘れてはならない。今作は元来、大人をターゲットに製作されたらしく、ハードボイルドとエロチシズムに溢れた傑作なのだが、その影響は悪役マモーにもモロに表れている。見るからに怪しく奇妙な風貌、そして声優に悪役の名優故・西村晃を起用することにより、より一層その悪役としての“いやらしさ”が際立っている。青白い炎に包まれて燃え尽きる死に様(実際はクローン)も非常に不気味で、故にふさわしい。
悪役#18:<不死の伝説的悪役>ドラキュラ伯爵(クリストファー・リー)「吸血鬼ドラキュラ」1958年
<不死の伝説的悪役>とはモンスター・ドラキュラ伯爵を指すものではなく、俳優クリストファー・リーその人のことである。1958年36歳で今や伝説と化したドラキュラ伯爵役でスターの座を確立し、四十数余年、齢80を越えた今も尚、「ロード・オブ・ザ・リング」「スター・ウォーズ エピソード3」等で存在感たっぷりの悪役をこなしているのである。まさにモンスター。彼こそ“キング・オブ・悪役俳優”の名にふさわしい。
悪役#19:<ダークサイドの支配者>パルパティーン最高議長/ダース・シディアス(イアン・マクディアミッド)「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」2005年
長き年月に渡って悪役を演じ続けたといえば、「スター・ウォーズ」シリーズでダース・シディアスを演じ続けた英国俳優イアン・マクディアミッドを挙げないわけにはいかない。
ダース・ベイダーが同シリーズの“真の主人公”ならば、ダース・シディアスこそ“真の悪役”であることは言うまでもない。「エピソード3」において長年に渡って隠し続けてきた“正体”を(まあ観客はとっくの昔から知っていたんだケドも)さらけ出し、ついに爆発させたその弾けっぷりは物凄かった。
1983年「ジェダイの帰還」での初出演から22年、やっと訪れた“見せ場”を果たしたイアン・マクディアミッドに賞賛を送りたい。
悪役#20:<復讐の黄色い怪人>イエロー・バスタード/ロアーク・ジュニア(ニック・スタール)「シン・シティ」2005年
「ターミネーター3」はストーリーそのものが醜悪な駄作なんだけど、その風貌から批判と汚名を一手に受ける形となってしまった気の毒な俳優ニック・スタール。彼の“復讐”の一撃となったのが、「シン・シティ」での“イエロー・バスタード”だ。「T3」で受けた汚名に対し汚れを拭おうとするのではなく、「じゃあとことんまで汚れてやるよ!」と言ったかどうかは知らないが、さらに堂々と汚れてみせたその俳優魂はスゴイ。連続幼女暴行殺人犯の挙句、主人公にメタメタにされ、その治療の副作用で醜い黄色の化け物に変貌するというこれ以上ないほどの“汚れ役”。全編モノクロ映像の今作において、真っ黄色の奇妙な怪人は目立ちに目立つ。
今作では、イライジャ・ウッドが演じた不気味な殺人鬼・ケビンのインパクトも強かったが、ニック・スタールの俳優としての“意地”にはとても勝てない。
悪役#00(番外編):<悪役をやるために生まれてきた男>ダニー・トレホ Danny Trejo
これと言って代表的な作品があるわけではないのだけれど、個人的に「悪役」と聞けば先ず頭に浮かぶ風貌の持ち主、それが俳優ダニー・トレホだ。
アメリカのアクション映画等をある程度観ている人ならば、この顔写真に絶対見覚えがあるだろう。
どこからどう見ても悪役、いや「悪人」そのものだ。それもそのはず、LA育ちの彼は、実際に十代の頃から犯罪や麻薬に関わり、長い年月に渡って刑務所を出たり入ったりしていたという、いわゆる“元プロ”。更生して1985年(41歳)よりエキストラから俳優業をスタート。従兄弟関係のロバート・ロドリゲス監督作品に数多く出演している。
まあとにもかくにもアクの強い“ザ・悪人顔”のダニー・トレホ。大体、悪役のボスの手下などで登場することが多く、ほとんどの場合クライマックス前までに確実に死ぬ。登場シーンは多くはないが、その強烈で個性的な風貌でどの作品においても強い印象を残す。
もはや彼が悪役で出てくると、ある種の「安心感」を覚えるほどに、希有な存在感を放つ悪役界の名バイプレーヤーだと思う。
■ダニー・トレホ主な出演作品(99%以上悪役!)
ヒドゥン (1987)
死の標的 (1990)
ブラッド・イン ブラッド・アウト (1993)
デスペラード (1995)
ヒート (1995)
フロム・ダスク・ティル・ドーン (1996)
アナコンダ (1997)
コン・エアー (1997)
リプレイスメント・キラー (1998)
6デイズ/7ナイツ (1998)
フロム・ダスク・ティル・ドーン2 (1999)
フロム・ダスク・ティル・ドーン3 (2000)
レインディア・ゲーム (2000)
アニマル・ファクトリー (2000)
スパイキッズ Spy Kids (2001)
スパイキッズ2 失われた夢の島 (2002)
トリプルX (2002)
スパイキッズ3-D:ゲームオーバー (2003)
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード (2003)
俺たちニュースキャスター (2004)
リチャード3世 (2006)
シンシティ2 (2006)
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