TKLスバラシネマ+映画特集企画 vol.3 『究極の“タイムパラドックス映画”10』
なんと2年半ぶりとなる映画特集企画第三弾!満を持しての企画は、迷いに迷った末、「タイムパラドックス映画特集」!!
って、「タイムパラドックス」ってなんぞやという話。スミマセン、マニアックですがなにか?
要するに、タイムトラベル(時間移動)をし、過去の出来事に影響を与えることによる因果関係の変化と、それに伴うサスペンス性、意外性、ドラマ性……etcをメインテーマにした映画作品を集めてみましたということです。
基本的に、映画はジャンルを問わずに何でも観るので、「好きなジャンルは?」と聞かれると非常に困るのだが、「好きなテーマ?」と聞かれれば、「タイムパラドックス」とかなり自信を持って答えられるとか答えられないとか……。
ちなみに「時間移動」が必須のテーマではあるが、映画のジャンルとしては必ずしもSFとは限らない。
とにかく、個人的観念から選び抜いた厳選タイムパラドックス映画10本を紹介します。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー Back to the Future」
タイムパラドックス映画的評価:10点
1985【米】
監督:ロバート・ゼメキス
キャスト:マイケル・J・フォックス クリストファー・ロイド クリスピン・グローバー リー・トンプソン トーマス・F・ウィルソン
いきなり大本命ご存知“BTTF”。やはりタイムパラドックス映画は原則的にはSF色が強くあるべきだと思うし、理論に裏打ちされた娯楽性がその醍醐味だと思う。そんな基本要素を120%備えている、というかこの映画こそが「タイムパラドックス」そのものだと言える作品だと思う。
落ちこぼれの主人公が、街の発明家が生み出したタイムマシンによって、ハプニング的に両親がハイティーン時代の過去に遡る。そして、同じように落ちこぼれの若き父親の手助けをすることで、結果的に自らの未来を変えていく。
重要なのは、主人公が最初から故意的に過去の出来事に変化をもたらそうとするわけではないということ。
自分が過去に存在してしまったことにより、過去の世界の人間関係に影響を与えてしまい、それが自分自身の存在消滅という危機に見舞われるという展開が、まさに“タイムパラドックス”的だ。
突如として巻き起こった消滅の危機に対する行動が、両親らの運命を変える“きっかけ”となるということで、そういう部分がこの作品にタイムパラドックス映画に不可欠な意外性と、娯楽映画としての爽快感を与えていると思う。
未だ、この娯楽性においてこの映画を越えるタイムパラドックス映画は、無い。

「ターミネーター THE TERMINATOR」
タイムパラドックス映画的評価:10点
1984年【米】
監督:ジェームズ・キャメロン
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー マイケル・ビーン リンダ・ハミルトン
タイムパラドックスを語る上での基本例として「親殺しのパラドックス」というものがある。ある人物の存在を抹消するために、過去へ遡り、その人物の親を殺害するというものである。
「ターミネーター」はアクション性が色濃い映画であるが、ジェームズ・キャメロンが低予算ながら、アーノルド・シュワルツェネッガーという新スターの発掘と、タイムパラドックス的なストーリー展開を巧みに利用した秀逸な「SF映画」だと思う。
遠くない未来に訪れる人間VSコンピューターの終末戦争。攻めあぐむコンピューター軍は、人間側の絶対的な指導者を抹殺するために、強力な暗殺アンドロイドを過去へ送り込み、指導者の母親となる女性を殺害することで指導者の存在自体を消滅させようと画策する。
まさにタイムパラドックス的作戦である。
そしてこの作品がタイムパラドックス映画として更に優れているのは、指導者の母親となる女性を守るために送り込まれた人間側の戦士が、女性と結ばれ、指導者の父親となるという運命的なエッセンスの存在である。
良質なタイムパラドックス映画には、このように過去に対する意識的なアイデアと、それに伴って発生する運命的なドラマ性が入り交じるものなのだ。

「バラフライ・エフェクト The Butterfly Effect」
タイムパラドックス映画的評価:10点
2004年【米】
監督:エリック・ブレス J・マッキー・グルーバー
キャスト:アシュトン・カッチャー メローラ・ウォルターズ エイミー・スマート
タイトルとなっている「バタフライ効果」とは、「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」という表現に代表されるように、過去の些細な出来事が連鎖的に拡大波及し、未来の方向性に大きな影響を及ぼすという理論である。
ふとしたことから過去へ遡る能力を得た主人公は、自らと最愛の女性の人生を変えるため現在と過去を一人奔走する。
過去のある出来事を好転させると、現在の世界に大きな影響を及ぼしてしまうというまさに「バタフライ効果」を繰り返す。
タイムパラドックスとバタフライ効果を巧みに利用したサスペンスフルな展開を経て、主人公が導き出した切な過ぎるラストが素晴らしい。
タイムパラドックス映画には「衝撃」がつきものであり、醍醐味だ。この映画はそういう「衝撃」を超越し、「感動」の領域まで観ているものを連れて行ってくれる。大傑作である。

「ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ」
タイムパラドックス映画的評価:9点
1981年【日】
監督:神田武幸
キャスト(声):大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 肝付兼太 たてかべ和也
藤子・F・不二雄という漫画家は、手塚治虫に並ぶ偉大な漫画家というだけでなく、同時に日本随一のSF作家であるとも思う。それくらい彼の漫画のアイデアには、レベルの高いSF性で溢れている。
したがって、未来からやってきたネコ型ロボットを描く「ドラえもん」には、その親しみやすさの中に、卓越したSF的哲学が共存する。そして、その数ある映画作品の中でも、特にタイムパラドックス度が高い作品がこの「ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ」である。
中編作品なので、その他の映画シリーズに対する「番外編」的な位置づけの今作ではあるが、「ドラえもん」ならではタイムパラドックスを愉快に用い、昔話「桃太郎」の意外な真相を描いた展開は、子供から大人まで誰でも楽しめる故に映画として価値が高いと思う。
当然ながらストーリーの概要は明らかに漫画的である。しかし、そこに大人でも感嘆してしまうほどの説得力のある構成に流石だと思う。
ドラえもん映画にはその他にも、「魔界大冒険」「鉄人兵団」「パラレル西遊記」などタイムパラドックスを利用した完成度の高い作品が多く、タイムパラドックス映画の「宝庫」と言える。

「いま、会いにゆきます」
タイムパラドックス映画的評価:9点
2004年【日】
監督:土井裕泰
キャスト:竹内結子 中村獅童 武井証
流行りの俳優、流行りの音楽に彩られた一時的な流行映画色が強い映画ではある。が、用意された圧倒的な「顛末」に驚く。
ラストに展開されるとてつもない“記憶の充足感”は、タイムパラドックスを盛り込んだ練り込まれたアイデアが存在するからこそ確立している。
人生において、映画において、満ち足りるというのはこういうことで、こういう驚きと感動が同時に注ぎ込まれるような映画を観ると、とても幸福に思う。
そして、「好きよ」というあまりにありふれた常套句。この一言にこれほどまでに、あたたかく深遠な想いを込めた映画を、僕は他に知らない。

「12モンキーズ 12 Monkeys」
タイムパラドックス映画的評価:8点
1995年【米】
監督:テリー・ギリアム
キャスト:ブルース・ウィリス マデリーン・ストー ブラッド・ピット
タイムパラドックス映画というものは、その特性として物語が入り込み過ぎて訳が分からなくなることが往々としてある。
「12モンキーズ」は、細菌により壊滅状態の未来世界から、原因の究明を化せられた主人公が過去へ送り込まれるというストーリーである。
基本的なストーリーとしては、それほど複雑なわけではないのだが、未来と過去を行き来する主人公自体が、現実と妄想の倒錯状態に陥り、物語の真相が巧みに歪んでいく。
さらには、鬼才テリー・ギリアムの独特の世界観により映画世界の異常性は殊更に増し、混迷していく。
そういう一見の分かりにくさが、今ひとつこの映画の評価を下げている感はあるが、実に良く出来た映画であることは間違いない。
初見時の感想として「よく分からなかった」というのも、タイムパラドックス映画の特徴と言え、この映画はその代表格である。

「ゴジラVSキングギドラ」
タイムパラドックス映画的評価:8点
1991年【日】
監督:大森一樹
キャスト:豊原功補 中川安奈 小高恵美 土屋嘉男 佐々木勝彦
ゴジラ映画シリーズのタイムパラドックス映画といえば、この映画を外すわけにはいかない。
突如やってきた謎の未来人の助言により、過去に遡り、水爆実験によってゴジラになったと考えれる恐竜を生息する孤島から移動させることで、「ゴジラ誕生」自体を消滅させようと画策する。が、未来人の本当の目的は、ゴジラの変わりに連れてきた未来の愛玩動物をキングギドラに生まれ変わらせ、コントロールすることだったのだ。
すでに日本に迫っていたゴジラが、過去への干渉により、消滅するのだが、同時にキングギドラが登場するというくだりが、まさにタイムパラドックスで、この映画のハイライトだと思う。
未来人、タイムマシン、アンドロイド、そしてタイムパラドックス的なストーリー展開、ゴジラ映画というよりは、“キングギドラ映画”らしいテイストが、楽しい。

「猿の惑星 Planet Of The Apes」
タイムパラドックス映画的評価:7点
1968年【米】
監督:フランクリン・J・シャフナー
キャスト:チャールトン・ヘストン キム・ハンター ロディ・マクドウォール モーリス・エヴァンス リンダ・ハリソン
SF映画の歴史的名作「猿の惑星」。正確にはタイムパラドックス映画とは言い難いストーリーではある。が、あまりにも有名なあの衝撃的なラストシーンは、時間を超越した概念に端を発するアイデアであり、広い意味ではタイムパラドックス映画と言えなくはない(強引)。
ある意味での「未来世界」を暗に描いているからこそ、猿たちが進化した社会の異質性が殊更に際立つのだと思う。
ちなみに、続編のシリーズではさらにタイムパラドックスをはじめとするSF的なチープさが良い意味でも悪い意味でも濃厚になっており、映画としての完成度を度外視すれば楽しめるシリーズだと思う。

「ラン・ローラ・ラン Lola Rennt」
タイムパラドックス映画的評価:7点
1998【独】
監督:トム・ティクヴァ
キャスト:フランカ・ポテンテ モーリッツ・ブライブトロイ ハイノ・フェルヒ
テクノのリズムに乗ってスピーディーに展開されるこのドイツ映画は、正確に言うと「タイムパラドックス映画」ではない。
ただ、同一人物の同じ時間の出来事を繰り返して描き出すので、主人公が時間を遡って、最良の結末を得ようするタイムパラドックス映画に見えなくはない(超強引)。
そして、重要なのことは、同じ時間を繰り返すことで見えてくるある種の「哲学性」が、この映画にはあるということだ。
それは、優れたタイムパラドックス映画にも不可欠なことで、ただ単純に時間を遡ることで登場人物に有益な結果が導き出されるだけでは、価値がない。
時間と時間を行き来するという、通常では有り得ない事象を通じて初めて見えてくる“新たな価値観”を、登場人物なり、観客なりが見出せることが、とても重要なことで、この映画はそういう部分をしっかりと備えている。

「時をかける少女」
タイムパラドックス映画的評価:7点
1983年【日】
監督:大林宣彦
キャスト:原田知世 高柳良一 尾美としのり 岸部一徳 根岸季衣
タイムパラドックス映画としての整合性を突き詰めるならば、2006年に続編的にリメイクされたアニメ版の方が、完成度は高いと思う。
が、完成度を超える映画としてのパワーというかエネルギッシュさという面で、この映画を選んだ。
正直なところ、ストーリーは極めてメチャクチャなので、アイデアに対しての衝撃はない。しかし、原田知世の「アイドル映画」としての衝撃的なほどの強引さがたまらない。そういう良い意味でのチープさも時には必要なわけで。

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