「戦場でワルツを」

2010☆Brand new Movies

 

戦争を描いた映画や小説の評において、「戦争の狂気」なんて言葉は、もはや常套句で、自分自身も何度も使ってきたように思う。
だが、実際問題、自分を含め多くの人々は、その言葉の意味をどれほど理解出来ているのだろうか。甚だ疑問だ。

「パレスチナ問題」は、ほとんどすべての日本人にとって、“対岸の火事”である。
重要なことは、先ずその自分たちの認識の低さを認めることだと思う。知ったかぶりでは、何も生まれない。

そういう「無知」な状態で観た映画であり、そうである以上、その視点からの映画の感想を述べるべきだと思った。

感じたことは、あの遠い国で繰り広げられ、今尚くすぶり続ける戦争において、人々の心を蝕むものは、もはや「狂気」などではないのではないかということだ。
そこにあるものは、長い歴史の中で、繰り返される憎しみの螺旋、それを断ち切れない人間そのものの「業」だと思う。

だから、敢えて言わせてもらうならば、映画の主人公が抱えていた“心の傷”に対して、「今更何を言ってるんだ」というような不自然さを拭えなかった。
問題は今この瞬間も決して解決していなくて、血を血で洗っている。そんな中で、この映画の表現は、本質的に非常に浅いように感じてならない。

特徴的なアニメーションは、映像表現としては素晴らしかったと思う。
ただし、最終的に「実状」を現実的な映像で見せてしまうのは、メッセージ性は別として、表現方法としてフェアではないと思った。

今作はアカデミー賞において、「おくりびと」と外国語映画賞を争った作品だが、ノミネートの理由は、題材のテーマ性によるところが大きかったのだろうと思う。
テーマのジャンルは全く異なるが、描かれたテーマの深さは、「おくりびと」の方が何倍も優れており、アカデミー賞受賞は当然の結果だったのだろうと再認識した。

「戦場でワルツを WALTZ WITH BASHIR」
2008年【イスラエル・仏・独】
鑑賞環境:DVD
評価:3点

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