“フィッシュストーリー(fish story)”とは、「ほら話」という意味だということを、この映画を観て初めて知った。釣り人の“手柄話”から意味を成しているらしい。
描かれる物語は、確かに荒唐無稽で決してリアリティなんてなくて、そのタイトルがまさにふさわしい。
でも、その“ほら話”を通じて、観る者に訴えてくる“何かしら”は、とても意味があって価値があるものだと感じた。
数十年前の売れないバンドが生み出した一曲が、世界を変える。
その発想は突飛で、稚拙な印象さえ受けるが、この世の中が実際何をきっかけにして動いているかなんて、正直定かではない。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないけれど、とても些細なアクションが、とてつもなく大きなムーブメントに発展することだってあると思う。
世界はとても大きく見えるけれど、実際は、そういう“小さな動き”の一つ一つが繋がっていって、形成されているに過ぎないのではないか。
だから、すべての動きや言葉や感情にはそれぞれに価値があって、意味がないような“fish story”にもちゃんと意味があるんだということを、この映画は雄弁に、そして類い稀な爽快感をもって伝えてくる。
素晴らしい映画だ。
「フィッシュストーリー」
2009年【日】
鑑賞環境:映画館
評価:9点
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