「宝島」“「無知」に対して、耳を傾けるという最低限の振る舞いを”

2025☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

ある夜、一人の英雄が消えた。アメリカ統治下の沖縄で、自由を求め駆け抜けた若者たちの友情と葛藤を描く感動超大作。 英雄はなぜ消えたのか?幼馴染3人が20年後にたどり着いた真実とはー。 沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。 やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出すー。 消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とはー。 Filmarksより

【本予告】 映画『宝島』9月19日(金)公開
ある夜、一人の英雄が消えた。アメリカ統治下の沖縄で、自由を求め駆け抜けた若者たちの友情と葛藤を描く感動超大作。英雄はなぜ消えたのか?幼馴染3人が20年後にたどり着いた真実とはー。-------------------------------…more

 

Review

冒頭から“うちなーぐち(沖縄方言)”全開の台詞回しにより、登場人物たちが何を話しているのかが聴き取りづらい。
そのことが、本作への明確な「非難」になっている評も聞き及ぶし、それを考慮してか、劇場では国内映画でありながら「字幕版」の上映回が用意されていた。
無論、私自身、映画内の台詞をすべて正確に理解しているとは言い難く、ストーリーテリングを正しく把握しきれていない部分もあるのかもしれない。
けれども、この物語、そしてこの映画が、描き出し、今この時代に残そうとしたものへの熱情と意義は、ひたすらに強く感じた。
そして、彼らが発する「言葉」の聴き取りづらさも含めて、私たちは、もっと意識的に、積極的に耳を傾けなければならないということを、まざまざと思い知った。

そう、映画の送り手も受け手も双方が扱いづらい“うちなーぐち”を俳優たちに徹底させて、敢えて“伝わりづらい”映画表現に挑んだことは、本作の根幹を成す演出意図であり、この物語に対する正しく、真摯な姿勢だったのだと痛感する。

“日本人”であればみな知っているはずだけれど、無意識に、あるいは意識的に目を逸らしてきた沖縄の歴史。毎年1000万人近くの観光客が訪れ、日本人の誰しもが沖縄旅行を好み、憧れ続けている事実に相反して、この島が辿った凄惨で過酷な歴史を正しく認識している人はあまりにも少ない。
私自身、沖縄へは何度も旅行で訪れているけれど、その知見はひどく浅い。
岡本喜八監督の「激動の昭和史 沖縄決戦」をはじめとして、沖縄を舞台にした戦争映画はいくつか鑑賞し、都度その歴史的事実に対して胸を痛めてきたけれど、遠い場所、遠い記憶の出来事という所感をどこか拭いきれていないことは否めない。
特に、戦後27年間に及ぶ、アメリカ占領統治の“時代”については、歴史的事実として習っているだけで、それがどういうことなのか、その本質を理解していなかった。

本作の「価値」は、まさにその多くの“無理解”に対して、あの時代、あの場所の空気感や熱量、そしてそこに生きた人々の苦悩と悲しみ、それでも抱き続けた僅かな希望を、意欲的に映像化したことに他ならない。
小説の映画化としての側面、史実と事実の捉え方に対して、当然賛否は生まれるだろうし、冒頭に挙げた方言の取り回しの難しさも含めて、映画的に高度に完成された精緻な作品というわけではないかもしれない。
それでも、劇映画として、統治時代の沖縄を描いた作品は決して多くはない中で、明確な意図と映像的なクオリティをもって映画化してみせたことの価値と意義は揺るがないと思える。

クライマックス、妻夫木聡演じる主人公は、当時の米軍基地の只中で、すなわちアメリカのど真ん中で、「人間はそこまでバカじゃない。こんなことがずっと続くはずがない」と、心からの懇願のように強く言い放つ。
それから50年の年月が経った現在、この国は、そして世界は、何かを変えることができているのか。人間は本当にバカではなかったのか。当の人間の一人として、甚だ疑問である。

怒りと悲しみ、そして長い長い「我慢」の蓄積の上で、それでも唄い、舞い、生命を継いで、あの島の人達は存在し続けている。
改めて思い至る。この映画を観て、「聴き取りづらい」と一方的に否定することは、ただの逃げ口上だと。
島の外に生きる私たちは、分からないのであれば、正しく理解できるまで、彼らの叫びに真剣に耳を傾けなければならない。
それは、同じ「日本人」として、最低限の振る舞いであり、この映画が求めた姿勢なのではないか。

 

「激動の昭和史 沖縄決戦」<10点>
“沖縄軍の戦死者10万”“沖縄県民の死者15万”太平洋戦争末期、「沖縄」という地で失われた命の数がラストのシークエンスで大写しにされる。その膨大な数が表す通り、この映画は最初から最後まで延々と、愚かさと絶望の中で続いた「死」を容赦なく映し出…more

 

Information

タイトル 宝島
製作年 2025年
製作国 日本
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館
評価 8点

 

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