評価:
7点Story
『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』に続く、アガサ・クリスティ原作、ケネス・ブラナー監督・主演で贈る《名探偵ポアロ》シリーズ最新作。ベネチアで隠遁生活を過ごしていたポアロは、霊媒師のトリックを見破るために、子供の亡霊が出るという謎めいた屋敷での降霊会に参加する。しかし、その招待客が、人間には不可能と思われる方法で殺害され、ポアロ自身も命を狙われることに…。はたしてこの殺人事件の真犯人は、人間か、亡霊か──世界一の名探偵ポアロが超常現象の謎に挑む、水上の都市ベネチアを舞台にした迷宮ミステリーが幕を開ける。 Filmarksより
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Review
前作『ナイル殺人事件』では、身の危険を感じていた依頼人を守りきれず、豪華客船内の惨劇を目の当たりにして、挙げ句には親友まで失ってしまった哀れな名探偵。自分自身への疑念と落胆から、水の都ベネチアで隠遁生活を送っていたポアロにハロウィーンパーティーへの招待が舞い込む。
前作のラストで自ら落とした“髭”を再び蓄え直して、復活の名探偵が奇々怪々な難事件に挑む──。
ケネス・ブラナーが監督・主演を務めるシリーズ第3弾だったが、個人的には最も良作だったと思えた。
『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』と続いた過去作と比べると、題材の知名度や舞台の華やかさでは劣るため、決して豪華絢爛とは言えず、地味な映画世界ではあったけれど、ミステリのテーマと映像的な世界観が合致した完成度の高さがあったと思う。
“亡霊”を題材にしたストーリーテリングや、水の都ベネチア特有の“湿度”の高さが、ジメジメとした空気感を生み、不穏さや恐怖感を創出していたとも思う。
失意に沈んでいた主人公ポアロが、その心理状態ゆえに、見えるはずないもの見てしまい、揺るがなかったはずの“灰色の脳細胞”を曇らせてしまうストーリーは、シリーズを通じた連続性やドラマ性も内包しつつ、新たな物語の方向性を示している。
また舞台造形においても、過去作随一のクオリティがあった。
前作においては計画していたロケーションが叶わなかったこともあり、ナイル川を舞台にした映画世界全体に“作り物感”が拭えなかったけれど、本作は古い洋館の空間を細部にわたるまで具現化し、調度品の軋みや、湿気や匂いまでも感じさせる精度を感じた。
キャスティングを見ても明らかなように、製作費そのものは大幅に削減されていると推測できるが、丁寧なクリエイティブにより十分に補っていた。
くどいようだが派手さはないし、舞台設定やストーリーの顛末も含めて陰鬱な作品でもある。でも、伝統的なミステリの一遍として、正道に則った良品であることは間違いない。
シリーズに対するケネス・ブラナーの映画人の円熟味がバランスよく噛み合い、成熟した印象もある。ミステリ好きとしては、引き続きシリーズ作を作り続けてほしい。


Information
タイトル | 名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊 A HAUNTING IN VENICE |
製作年 | 2023年 |
製作国 | アメリカ |
監督 | |
脚本 | |
撮影 | |
出演 | |
鑑賞環境 | インターネット(Amazon Prime・字幕) |
評価 | 8点 |
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