おヒサシネマ!「君の名は。」“独りよがりで、不完全。だからこそ生まれた果てしないエモさ”

スバラシネマReview

評価:  9点

Story

千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。「来世は東京のイケメン男子にしてくださーーーい!!!」そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、戸惑いながらも、念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。「不思議な夢……。」一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだー。彼らが体験した夢の秘密とは? Filmarksより

 

Review

“星降る夜”という数多の表現作品の中で、“美しきもの”として表されてきたものが孕む圧倒的な神々しさと絶対的な脅威。
それは、美しすぎるものが併せ持つ荘厳さと残酷さの象徴だったように思う。
そして、その美しさと残酷さは、そのまま主人公二人の“若さ”に直結する。
若く、未成熟な彼らは、安直で直情的であまりに危うい。でもだからこそ、何よりも美しくて、エネルギーに溢れている。

その美しいエネルギーは、“流星”のそれを遥かに凌駕し、神にも抗う。
それこそが、この映画が最も描き出したかったことなのだと思える。

「過去」は、どうやったって変えられない。
身近な交通事故から“3.11”のような天変地異に至るまで、ありとあらゆる悲劇を目の当たりにしてきている人々は、そのことをよく知っている。
ただし、その「理」を、強引だろうが、無謀だろうが、ご都合主義的だろうが、人物の“感情の力”一つだけで時に覆してしまえることも、「映画」に許されたマジックだ。と、思う。

世界が終わるその間際だろうと、ついに果たせた焦がれた人との邂逅においては、状況を忘れて、その人と話し触れ合うことだけに没頭する。
「そんなことをしている場合か」という非難は、あまりに無意味だ。
若者たちのその無垢な「感情」と「行動」こそが、世界を救う唯一の「方法」だと、この映画は伝えているのだから。

独りよがりで、青臭い映画であることは間違いない。
この種のストーリーを繰り広げるのであれば、辻褄が合わない点もあまりに多過ぎたと思う。
これだけ素晴らしい作品なのだから、ディティール面でもう少し他者の介入があったならば、もっと絶対的な名作になっていたのでは。と、思わなくはない。

けれど、思い直す。
この肯定と否定が渦巻く不完全さこそが、この作品が表現することの価値なのだろう。
若い二人が、町よりも、世界よりも、何よりも先ず「君」のことを思って、闇雲でもなんでも全力で何かに向かって走る。
そのエモーションに勝るものなど、実際無いのかもしれない。
(※2016年9月14日 初鑑賞時レビューからの引用)

 

Information

タイトル 君の名は。 YOUR NAME.
製作年 2016年
製作国 日本
監督
新海誠
脚本
新海誠
撮影
声の出演
神木隆之介
上白石萌音
長澤まさみ
市原悦子
成田凌
悠木碧
島﨑信長
石川界人
谷花音
てらそままさき
鑑賞環境 BS
評価 9点

 

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