「教皇選挙」“窓を開き、光と風を通すべき全世界、全人類へのメッセージ”

2025☆Brand new Movies

評価:  9点

Story

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者にして、バチカン市国の元首であるローマ教皇が死去した。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。世界中から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票が始まった。票が割れるなか、水面下で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々。ローレンスはその渦中、バチカンを震撼させるある秘密を知る――。 Filmarksより

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Review

疑念と確信。人間の歴史、そして信仰の歴史は、常にその狭間で揺れ動き、人間はその“揺らぎ”から抜け出すすべも無く右往左往し続ける。
教皇選挙、すなわち“コンクラーベ”を描き出した本作が表したものは、そういう人間の「本質」だったと思う。

奇しくも、2025年4月に現実世界のローマ教皇フランシスコが亡くなられた。
しきたりに沿って行われるコンクラーベの状況が、国際ニュースで伝えられる中、「これは観なければならない」と思い、公開中だった本作を観るために隣町の映画館に足を伸ばした。

無宗教の日本人にとっては、教皇選挙も、ローマ教皇の存在自体も、遠い世界、縁遠い文化のものであるという感覚は否定できない。
ローマ教皇という存在とその言動が、世界各国の人々の思考や行動に影響をもたらすものであるということは理解してはいたけれど、教皇を頂点とするカトリック教会という組織の全体像と、それがこの世界の仕組みに対してどのように影響し、歴史的背景を孕んでいるのか、よく分かっていなかった。

本作を鑑賞したからといって、そういったカトリック教会自体の歴史的背景や、現実の国際社会における影響力の実態を、理解できるわけではない。
でも、フィクションとはいえ、その組織の本質的な性格を象徴する教皇選挙の“裏側”をつぶさに描き出した本作は、カトリック教会自体が孕んでいる功罪、その価値と過ち、そして「懺悔」を、雄弁に物語っていた。
その映画世界は、「宗教」に縁遠い者にとっても、とても興味深く、ある意味エキサイティングだった。

人種も国籍も異なる百数十人の枢機卿が集まり、様々な価値観、思惑がせめぎあい、入り乱れる様は、愚かしくも見えるが、まさにこの世界の縮図のようにも見える。
ある者は他者を陥れ、ある者は他者を利用し、ある者は野心を抱き、ある者は秘めた真相を貫く。
カトリック教会の枢機卿という、一つの確固たる信仰の頂点に存在する集団でさえ、この様相なのだから、無数の価値観の人間が“巣食う”この世界が混沌とすることは、そりゃあ必然なのだろう。

劇中の台詞にもあった通り、信仰は常に“疑念”と“確信”の間に存在し、苦悩と共に漂うように揺れ動く。
きっとそれは、必ずしも「信仰」という概念に限ったことではないだろう。人間の存在と社会そのものが、疑念と確信の狭間で苦悩し続けていることは、今この瞬間の混迷極まる世界を観ても明らかだ。

“コンクラーベ”は、ラテン語で「鍵がかった」という意味を持つ言葉らしい。
閉鎖された薄暗い“部屋”の中で、世界の方向性を左右しかねない物事を決めるには、もはやこの多様性に溢れる世界は広く複雑になりすぎている。
ときに“鍵”は必要かもしれないけれど、行き詰まり、息が詰まるのならば、“窓”を開けて、風と光を通さなければ、人間は疑念と確信の狭間で、埋もれて、潰れてしまうのではないか。

本作のクライマックスで映し出された幾つかの描写とその帰結は、そんな全世界の人間たちに向けたメッセージを孕んでいた。

 

Information

タイトル 教皇選挙 CONCLAVE
製作年 2025年
製作国 アメリカ/イギリス
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館(字幕)
評価 9点

 

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