「NEXT -ネクスト-」<6点>

2013☆Brand new Movies

 

近年のニコラス・ケイジ主演映画は、しばしば評価が難しい。
大概、大して期待も出来ないB級娯楽映画である場合が多いので、そもそもハードルを上げる必要もなくサクッと観終わる。
期待感は極めて薄いので、「思ったよりは楽しんで最後まで観られたな」という印象でエンドロールを迎える。
しかし、続いて、よくよく振り返ってみると失笑ものの粗がボロボロと見え始める。
そして、なんだかんだ言っても、ニコラス・ケイジのスター性と表現力が無ければ、もっと「酷い」映画に見えるのではないかと思われてくる。

れっきとしたアカデミー賞俳優であるニコラス・ケイジが、特別に良い演技をしているのであれば、映画そのものが多少くだらなくても、主演俳優の演技を観るべき作品として評価できるのであるが、決してそういうわけではなく、ニコラス・ケイジはあくまで“ニコラス・ケイジ然”とした“いつもの”演技をしているに過ぎない点が、非常に評価を難しくさせる。

私生活の乱れでどんなに落ちぶれようとも実力は確かな俳優なので、彼さえ主演していなければ、このなやきもきする必要もなく、程度の低い映画としてこき下ろすことも出来よう。が、もはやそういう映画に節操なく出演し良い意味でも悪い意味でも“らしさ”を出すことが、このスター俳優の“味わい”にすら思えてきた。

と、「ニコラス・ケイジ論」をついついダラダラと語ってしまったが、この映画もまさに、良くも悪くも「ニコラス・ケイジ映画」と呼ぶに相応しい作品だと思う。
まあ概ね楽しんで観られるし、ラストの締め方もフィリップ・K・ディック原作の映画らしく小気味良く感じられたので、鑑賞前の低い期待感に対しては充分に満足出来たと言えるので、それ以上のことを望むべきではないとは思う。

よくよく考えてみれば、「2分先の未来が見える」という特殊能力を持った主人公が、その限定的な設定のわりに最終的には“なんでもあり”の“時の支配者”みたいになってしまっていたり、そもそもの悪玉の目的がまったくおざなりなままストーリーが進んでしまったりと、粗だらけではある。

ただし、前述の通りそんなことは「ニコラス・ケイジ映画」においては想定内のことなので、いちいち目くじらを立てるのは無粋というもの。

こちらもアカデミー賞常連でありながら、作品選びのフットワークが意外に軽いジュリアン・ムーアの無駄な存在感や、ヒロイン役のジェシカ・ビールが意外なキュートさ、そして「刑事コロンボ」のピーター・フォークがワンシーンだけ出演している点など、想定以上に楽しみがいのある映画であったと思う。

このレビューのテキスト内に合計10回も「ニコラス・ケイジ」という固有名詞が繰り返されていることからも明らかなように、良いか悪いかで言えば断然「良いニコラス・ケイジ映画」だということは間違いない。

 

「NEXT -ネクスト- Next」
2007年【米】
鑑賞環境:BS(字幕)
評価:6点

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