「ペンギン・ハイウェイ」映画レビュー “若さ故のエゴイズムと変態性の物足りなさ”

ペンギン・ハイウェイ 2020☆Brand new Movies

ペンギン・ハイウェイ

評価: 6点

Story

小学校四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。毎日努力を劣らず勉強するので、「将来は偉い人間になるだろう」と思っている。そんなアオヤマ君にとって何より興味深いのは歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でミステリアスなお姉さんを巡る研究も、まじめに続けていた。
ある日、アオヤマ君の住む郊外の街に突如ペンギンが現れ、そして消えた。さらにアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。
「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」
一方、アオヤマ君は、クラスメイのハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体の存在を教えられる。やがてアオヤマ君は、その謎の球体“海”とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は異常現象に見舞われる。
果たして、お姉さんとペンギン、“海”の謎は解けるのか―― Amazonより

映画『ペンギン・ハイウェイ』 予告2
新世代の才能と、日本屈指の実力派スタッフ・キャストが集結し、鮮やかに描き出す、心弾む青春ファンタジーアニメーション映画『ペンギン・ハイウェイ』2018年8月17日(金)全国ロードショー<CAST>北 香那  蒼井 優釘宮理恵 潘 めぐみ 福…more

 

Review

想像以上に荒唐無稽で摩訶不思議な物語が、少年の初恋と成長を紡ぐ。
その儚さと、脆さと、幼さ、そしてそれらと同時に内在する果てしなさ。そういう普遍的なジュブナイル性が、瑞々しく綴られた美しいアニメーションだった……とは思う。

謎のペンギンが大量に出現し、利発で好奇心旺盛な小学4年生の主人公を、ファンタジックなアドベンチャーに引き込んでいくというストーリーテリングは、アニメーション表現に相応しい題材だった。
そして、地方都市の小さな町を舞台にしつつも、縦横無尽に無限大の広がりをみせる物語構成は、まさしく森見登美彦の世界観らしいものだったと思う。

アニメーション映画としてのクオリティは高いと思えたし、群雄割拠の日本のアニメ界において、この作品のクリエイター及びスタジオは、また新たな才能として台頭しているなとは思った。

けれど、この摩訶不思議な物語をビジュアルとして紡ぎだし、幅広い観客に“許容”させるには、アニメーション表現としての独創性がやや足りていないように感じた。
それは即ち、クリエイターとしての“エゴイズム”の物足りなさと言い換えてもいい。

森見登美彦の原作は未読だが、他の作品と同様に、良い意味で主観的で、キャラクターのインサイド(精神世界)へとどんどん世界観を広げていくような物語であろうことは、想像に難くない。
ならば、アニメーション表現としても、もっと“独善的”で、ある意味“変態的”な世界観が必要だったのではないかと思うのだ。
アニメ映画として魅力的に捉えられた反面、全編通して引き込まれず、「こんなことあり得ない」と一歩引いた目線でストーリーを追ってしまった要因がそこにあるように思える。

例えば、全盛期の宮崎駿であれば、原作者や原作ファンなど完全無視の独善性で、全く別物の世界観を構築していただろう。
また、同じく森見登美彦原作の「四畳半神話大系」や「夜は短し歩けよ乙女」のアニメーション化に成功してみせた湯浅政明であれば、もっと変態的で、もっともっと果てしない“マイ・ワールド”を展開してみせたと思うのだ。

そういう意味で、この若いアニメ制作スタジオ(スタジオコロリド)の若いクリエイターたちによる初の長編作品は、ただ綺麗にまとまり過ぎているようだ。
クライマックスにおける主人公少年の感情表現等はもっと直情的で無様で良かっただろうし、現実と幻想が入り混じったような街並みはもっと混沌とイカれてほしかった。

“少年”のキャラクター性が憑依してしまったかのように、「大人ぶってしまっている」部分が、アニメ映画として稚拙に見えた最たる原因かもしれない。
ぜひとも、少年同様に研究と成長に邁進してもらいたいものです。

 

「夜は短し歩けよ乙女」<10点>
「“偽電気ブラン”を飲みたい」 22時過ぎ。歌舞伎町の映画館で今作を観終えて、そのまま“偽電気ブラン”を求めて当てもなく彷徨い歩きたくなった。 10年前に森見登美彦の原作小説を読んだ時とまったく同じ「衝動」を駆り立てた時点で、この映画化は大…more

 

Information

タイトル ペンギン・ハイウェイ PENGUIN HIGHWAY
製作年 2018年
製作国 日本
監督
石田祐康
脚本
上田誠
キャラクターデザイン
新井陽次郎
声の出演
北香那
蒼井優
釘宮理恵
潘めぐみ
福井美樹
能登麻美子
久野美咲
西島秀俊
竹中直人
鑑賞環境 インターネット(Amazon Prime Video)
評価 6点

 

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