「好きだ、」

2006☆Brand new Movies

 

どこまでも内気で繊細な二人の男女が、17年の歳月を経て各々の想いを紡ぎだしていく。

下手を打てば、なんともまどろっこしくて、「うだうだやってんじゃねーよ」と言いたくなるかもしれない物語である。が、独特の空気感を持った長回しと、登場人物のキャラクターそのままに映像の中に息づく役者たちの表現力で、ただただすっぽりと包み込まれる。

劇的に何かがどうなるという映画ではない。言葉で説明してしまえば、至極単純なものになるだろう。
でも、映像から伝わってくる“想い”には、奥ゆかしさがある。

どんなときも、「想い」を想いのまま伝えることができれば、それにこしたことはない。でも、人間なかなかそういうわけにもいかない。そして、そういうことを経るからこそ、深まる「想い」もある。

一音一音を確かめるようなギターの音色に乗せて、そういう人間の、ある部分において愚かで、ある部分において幸福な微妙な感情を、冷たく吹き抜ける風のように繊細に描く映画だった。

「好きだ、」
2005年【日】
鑑賞環境:DVD
評価:8点

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