「SAYURI」

2005☆Brand new Movies

 

言いえて妙だけれど、“一国の文化”というものは、他国のそれと交じり合うことで、初めてその「本質」と「価値」が見出されるものなのではないか、と思う。

国の文化は、もちろんその国のものであり、誇りとして守り続けていくべきものだろう。だがしかし、それは必ずしも他国の干渉を受けつけるべきではないということではない。
未知なる異国の捉え方と表現方法によって、自国の人々が“知らなかった”価値が生まれることもあるのだ。
そういうことをこの映画は、燦然と見せつける。

「芸者」という女の生き方。望まぬままにその「運命」へと導かれ、その道程を生き抜いていく一人の女の様があまりに激しく、あまりに美しい。

生きる上において、「幸福」と「不幸」は必ずついてまわることだが、そういうものすら存在を許さない壮絶な生き様が迫ってくる。
ただただひたすらに自分の運命と激動の時代を生きていくその姿に、現代の一般的な価値観など何の意味もなく、ただ受け止めるしか許されない。

辛苦の末にようやく手に入れた待ち望んだ“ぬくもり”。それは一見、ハッピーエンドのようにも見える。
しかし、それでも彼女は「芸者」なのだ。たとえそこに「幸福」があったとしても、それは「芸者」として最低限に許されたそれなのだ。
その人生、運命に、悲哀などという感情を越え、もはや神々しさすら覚える。

必ずしも日本という国と芸者という文化を「リアル」に描こうとせず、その文化がもつ本質的な「美意識」を最大限に優先して描かれた映画世界がスバラシイ。
台詞の中に、英語と日本語が混在する脚本&演出方法にも、全然違和感がなく、演者の表現力を最大限に引き出す効果へと繋がっていると思う。

冒頭にも言ったが、他国の文化との“混じりあい”が、素晴らしい世界観を生み出した要因だ。
この作品は、どうやったって日本人だけでは、描ききることができない「日本映画」だと思う。

「SAYURI Memoirs of a GeishaI」
2005年【米】
鑑賞環境:映画館
評価:9点

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