「十一人の賊軍」“すべての者が背負う罪と業”

2024☆Brand new Movies

評価:  8点

Story

幕末の混沌とした時代を背景に、罪人たちが自由を懸けて戦う姿を描いた迫力の時代劇。物語は、新発田藩が戊辰戦争の渦中で新政府軍と対立する中、命運を握る砦を守るため、捕らえられた11人の罪人たちが決死隊として戦場に送り込まれるところから始まる。

自由を求め、過去と向き合いながら戦う彼らの姿は、壮絶なアクションと深い人間ドラマが交錯し、観る者を圧倒する。時代の不条理に抗い、自らの信念を貫こうとする登場人物たちの葛藤が、スクリーン上で鮮烈に描かれている。予測不能な展開とスリリングな戦いが続く中、彼らが最後に手にするものは何か――

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Review

「とても良いから、とても惜しい」というのが、鑑賞後、一定の満足感と共に生じた本音だ。

幕末という時代を背景に、小藩や中間管理職の悲哀と狂気、そして崩壊寸前の武家社会の愚かさを描いた本作は、久しぶりにエネルギッシュな娯楽時代劇を観たという満足感を与えてくれた。
本作の物語に描かれる群像劇は時代劇の枠を超え、現代社会の多様な人間関係や、あらゆる組織構造、さらには現在進行中の国際的な軋轢の数々とも重なる。
どの選択肢を選んだとしても、誰かにとっては「地獄」となるというジレンマは、どの時代においても普遍的であり、すべての人間が完全に満足する世界は存在しないという現実を改めて突きつけてくる。

物語構造上、十一人の罪人たちは絶体絶命の苦境を乗り越え、「生」を見出そうとする英雄のように描かれている。しかし、これは人間社会における狭小な一側面に過ぎない。
復讐のため冒頭で主人公にあっさり殺される侍や、砦を攻める倒幕軍の兵士たちにも、それぞれ親や子、家族がいるはずだ。名前もなく散っていくキャラクターたちにも、それぞれの正義や思いがあったことは想像に難くない。

その象徴的な存在が、阿部サダヲ演じる家老・溝口だ。
ストーリー上では悪役として描かれているが、彼の言動のすべては「家老」という職務に準じたものだと言える。確かに彼の謀略や非道な行為の数々は狂気的ではあるが、それも城下を取り仕切る“位”にある侍としては当然の行動だったのだろう。城下での戦を避け、町民から慕われる姿はそれを物語っている。
町民らに向けて乾いた笑顔を見せた後に訪れる彼自身の最大の「悲劇」が、この男が背負っていた中間管理職としての苦悩を何よりも雄弁に物語っていたと思う。

また、山田孝之や仲野太賀をはじめとする“賊軍”の面々を演じた俳優陣のパフォーマンスも見事だった。彼らは一面的なヒーローとしてではなく、それぞれが抱える罪や愚かさ、悲しみを通じて、社会とそこに巣食う人間の本質を体現していた。このアプローチが、本作の奥行きを大きく広げ、娯楽性に深みをもたらしていたと思う。

だからこそ「惜しい」と思うのだ。
映画全体に漂うエネルギー、現代にも通じる物語性、俳優たちの見事な演技、そして的確な演出力が光るだけに、一人ひとりのキャラクターに対する描き込みがもっと深ければ、さらに印象的な作品になったはずだ。
特に賊軍のキャラクターたちの背景描写が物足りなかったように感じた。
それぞれがとても人間臭く、魅力的な存在感を放っていたからこそ、彼らがどのようなバックグラウンドを経て、あの牢の中に閉じ込められていたのか。そのドラマ性がもう少し丁寧に描きこまれていたならば、彼ら最後に放つ命の灯火、その熱さと輝きが、さらに深く刻まれたことだろう。

 

Information

タイトル 十一人の賊軍
製作年 2024年
製作国 日本
監督
脚本
撮影
出演
鑑賞環境 映画館
評価 8点

 

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